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寝子島高校
満月の夜に
【満月の夜に】In other words
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月の静寂が蒼白い影を落とす高校の教室にひとり、忍び込む。
己が足音さえも過剰に響く床に、
獅子島 市子
は闇よりも深い黒の色した瞳を眼鏡の奥で小さく歪めた。肩から胸元に落ちる、緩く編んだ三つ編みの黒髪を指先で弾いて背中に追いやる。
暗い教室は、嘗て自称らっかみが降りた場所。並ぶ机のひとつに腰を下ろす。指先を月光に濡らして窓を開け、月影を浴びる。
光を灯すようにスマホを起動させる。四角く狭い光の枠の中、映っているのは洒落た格好の市子自身と――
「ばーか」
優しく罵る。画面に映る、会いたくても会う訳にはいかない愛しい少女の笑顔をなぞる。
「こんなの着て歩けるかっつーの」
苦笑いに近く瞳を細めて、直後にくしゃり、頬が歪む。
(オマエと一緒ならともかく)
頬を歪ませる感情を放り出すように、スマホを操作する。
『らっかみさんはお月見中』
戯れに、からかうように、そんなメールを画像の彼女に送って、
――突如、忍び込んだ扉が閉ざされた。続けて施錠の冷たい音が夜の教室中に響き渡る。
スマホを片手、然程驚いた様子も見せず静かに瞬く市子の傍ら、いつしか傍らにぼうやりと人型の影が立つ。
月影に宿る神魂に誘われたか、未練で以って己で己を縛る存在が現れる。その存在はおそらくは、
「よう、同類」
明るく笑って見せる己と同じ。
脇に置いた鞄からランプを取り出す。マッチを擦り、着火する。
念じてろっこんを発動させれば、傍らに揺れる影の未練を払い清める力の宿る炎を一度は掲げ、けれどすぐに手近な机の上に捨て置く。
独りは、今は辛かった。
浄化する気になれない。
人の形した影が窓辺に座す。月を見上げる蒼白い横顔に倣い、観月を再開する。
月に想うは、ひどく遠く思えるあの夏の歌の祭典で歌った曲と、ラジオで聞いた彼女のトーク。
――探してみて。君ならきっと見つけられる
君にとっての素敵なこと。あの時、そう言っていた彼女の声を思い出す。
(また聞きてーよね)
懐かしく思うまま心に呟いて、
「……アホかあたし」
自嘲に顔を引き攣らせる。
(自分で終わらしたんじゃんこないだ)
大好きな声を聞くことは、もう許されない。
胸に渦巻く想いに居た堪れず、ランプを手にする。月光に姿晒した人影に炎を向け、その身を影としてまで抱く未練を焼く事への赦しを請う歌を口ずさむ。
(本当は)
月を仰ぐ横顔が、裏切られた顔をして振り返る。悲しげな表情のまま、その身の未練を焼き尽くされ、月光に溶けて消えてゆく。
(赦されたくない)
驚愕に見開いた目が、悲しげな唇が、己が想いを伝えた直後に見せた彼女の顔と重なった。
思わず唇に伝えたい言葉を乗せ掛けて、止める。両手で口を閉ざす。瞼を閉ざす。口と瞼を塞いで、机の上に手足を丸めて、
カチリ、閉ざされていた鍵の開く音を聞いた。
瞳を開いて、扉の嵌め殺し窓に映る、今度は間違いなく生きた人間の姿を見た。今、一番に――
「何しに来た」
強張った低い声を叩き付けられ、扉の外、
桃川 圭花
は眼鏡の奥の黒い瞳を僅かに歪める。手にした携帯電話を握り締める。電話の画面には、普通の友達だったころに撮った写真が明るく映っている。
家で何かが起こるのをただ待っていた。
(ほんとの気持ちをもう一度訊きたい)
そう思いながら、肝心なことを何も言い出せなかった自分に溜息を吐いていた。
好き、と言われたのに。
キスもされたのに。
それで、こんなの本気にすんな、と。そう言われた。
そうして、今も、
「あんなメに遭ってまだ懲りねーのか」
扉越し、噛みつきそうな怖い顔をして、彼女はあの時のキスをそんな風に言い捨てる。
「クソガキが少し相手してやったら調子こきやがるから、世の中教えてやったんよ」
勉強んなったろ、と嘲笑されても、
「分かったら帰れや、せーせーすっし」
そっぽ向かれ、消えろとばかり手を振られても。
圭花は閉ざされた扉に手を掛ける。
彼女の姿を見て、すぐに分かったことがある。もう一度この人の本当の気持ちを訊きたいと思いながら、本当は。本当は、あの日のキスだけでちゃんと分かっていた。本当に知りたかったのは、
(私が知りたかったのは、私の気持ち)
「……バカ開けんな! 来んな!」
市子の声が泣き出しそうに歪む。
圭花は淡く微笑む。
(あなたのことを知るたびにもっと知りたくて、たくさんのあいまいな言葉が心地よくて煩わしかった、あの気持ちの名前)
あの日出せなかった答えを伝えるため、彼女と自分とを隔てる鍵の掛かっていない扉を開ける。
机に腰掛けた格好のまま、逃げ出そうとして逃げ場を見出せず、ただ顔を覆い隠すだけの彼女の前に立つ。
「来ないで」
弱く、市子は呟く。捕まれば泣く。抱きついて離れられなくなる。だから、
「来ないで」
(違う)
言いながら、心では否定する。
(会いたくってメールしたの)
メールすれば、圭花が来ると分かっていた。
瞳を隠す両手を、圭花の手が掴む。捕まえられてしまう。往生際悪く視線逸らして、己がランプに灯した未練祓う炎が視線に入った。
(なのにあたし)
己の未練も焼けず、ありもしない扉に鍵をかけた。
(きみのキモチも、あたしの願いも、)
全部誤魔化そうとして、――
「ほんと、可愛い人」
名を呼ばれた。どんな拒絶の言葉も態度も全て笑って受け止められた。包み込むように抱きしめられた。抱きしめられて、しまった。
「圭花……圭花」
震える声で繰り返し名を呼ばれ、縋るように抱きしめ返され、圭花は笑みを深くする。伝えたいことはそんなになかった。耳元に唇を寄せて囁く。
「踊らない? あの日の続きで、キスからだって別にいいけど」
蒼白い月と同じに冷たい額に額を押し付ける。おどけながら、市子の手を取る。胸に引き寄せ、あの日と同じにステップを踏む。あの日とは違う曲を小さくハミングする。優しく甘く、歌う。
――私を月に連れて行って
「けいか」
圭花に導かれるまま、圭花の名を唇に乗せ月影に舞って、舞って、
(好き)
けれど肝心の言葉は声にせず、市子は月の光纏う圭花を見つめる。
(大好き)
圭花のハミングに合わせ、圭花の首に腰に腕を回す。放さないでと、誰にも渡したくないと、呪うように祈るように思う。あの日の続きのまま、唇を重ね、微笑み交わして手を繋ぐ。くるり、月光に髪翻してターンして、
市子を舞わせる圭花の手が止まる。
圭花に背を向ける格好で踊る足を止められ、振り向こうとした肩を両腕で抱きしめられた。肩に圭花の熱い額が押し付けられる。圭花の唇に紡がれていた歌が途切れる。
「……見られてたら泣けないじゃない」
負けず嫌いな彼女の言葉に、市子は小さく頷く。机の上、ふたり、背中合わせに腰を下ろす。互いに互いを繋ぎ止めて、互いの手をきつく握り合わせる。
市子の瞳から逃れて、圭花は月を仰ぐ。月の光に紛れて、堪え切れない涙を零す。
今はこんなに近くに居る彼女は、けれど近くこの島を離れて行ってしまう。
(気持ちを伝えちゃえば、)
未練などなくなると思っていた。心の温度が下がり、ただ普通に笑って送り出せる、そう期待していた。それなのに。
温かな涙が、零しても零しても止まらなかった。
「好き。好き。好き――」
涙が頬を伝う数だけ、ひとつずつ想いを吐き出す。月影に落ちて砕けて散る想いは、きちんとひとつずつ、痛かった。
圭花の涙が床に落ちて砕ける清かな音を聞きながら、市子は圭花の手を握り締める。
(未練が遺ったって)
想いを遂げられなくたっていい、と確信に近く思う。
(きっとそこにあたしが……きみが居るから)
でも、せめて今は、
(きみのモノで居させて)
背中に触れる、圭花の背中の温もりに縋る。脆いくせに強い彼女の優しさに甘えて縋る。
「ごめんなさい」
「ありがと」
市子と圭花の声が重なる。
圭花が笑みを零す。涙の最後に残った想いを優しい言葉に代えて繰り返す。
「市子さん、ほんとに、ありがとう」
片手を離し、市子の正面に立つ。真直ぐに向かい合って笑みを向ければ、
「ありがとう、愛してる」
月の光に似て淡く静かに、市子は笑ってくれた。
市子の笑みに、圭花は決める。
(私は、この人を放してあげよう)
繋いでいた手を離す。指先に残る温もりを抱きしめ、ふたりで舞った曲の最後の一節を口ずさむ。
「……I love you!」
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせ致しました。
満月の夜の一幕、お届けにあがりました。
たくさんのご参加、ありがとうございました。とても緊張しながら、でもとても楽しく、みなさまの月下のひとときを書かせて頂きました。
月の光を少しでも感じて頂けましたら、また、お楽しみ頂けましたら幸いです。
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月01日
参加申し込みの期限
2014年12月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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