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満月の夜に
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夜に舞う鳥の声を追って、
東城 六
は宵の雲の灰色した瞳を空に向ける。
夜空に輝く丸く満ちた月の眩しさに瞳を細め、海を渡って島にやってくる秋の風に白い髪を乱す。
(中秋の名月、か)
月見がてらの散歩に海岸への道を辿りながら、堤防越しに見える夜の海を眺める。遥かな水平線よりも更に遠く高く浮かぶ月を仰ぎ、思っていたよりも尚綺麗な月に淡く淡く、笑む。
波打ち際まで行ってみようと堤防の上に至る階段を登りきったところで、
(なんだか賑やかだな)
海岸で繰り広げられるお月見大宴会の賑わいを耳にした。大勢の人の声を辿って、砂浜に大きく広げられたブルーシートと、その上で宴会する人々の姿を確かめる。
(皆考えていることは同じか)
楽しげな人々の邪魔をしないよう、海岸を歩こう。
人と関わることに消極的な少年は楽しげな人々の輪を避け、静寂の方向を目指して歩く。
お月見の会場には近づかず堤防に沿って歩き、人々の声が遠くなってから砂浜に下りる。
月を、見上げる。
この島に来て過ぎた約二ヶ月の時間を思う。
この島に引っ越して来る以前に通っていた高校では、勉強に着いて行くのに必死で絵を描く時間があまり取れなかった。
けれどこの島の高校で芸術科を専攻してからは、充分に時間が出来た。
(それに、)
うつむきがちな視線を持ち上げる。目前に広がる宵の海岸を見遣る。
この海岸も、九夜山の麓の向日葵畑も、展望台からの眺めも。この島はどの風景も美しい。絵にしたい風景がたくさんある。
(それに……)
友達も、出来た。
感情を映すことの少ない瞳に柔らかな笑みが滲んで、戸惑うように沈む。
十六の少年にしては華奢な手で、風に惑う髪を払う。
友達が出来たまではいいけれど、遊ぶにも何をするにも誘ってもらうばかりいる。友達であるなら、こちらからも誘うべきなのだろうと思う。
例えば、一緒にどこかに行こうとか。何かをしようとか。
(でも、)
特に行きたいと思える場所がない。したいと思えることがない。そもそも、一緒にいるのは迷惑にならないだろうか。
(……そういうところを皆はどうしているんだろう)
息を零す。首を横に振る。
きっと皆は上手くやっているのだろう。
(僕が下手なのだろう)
そうであるなら、結局どうしたらいいのか、……否。
(まあいいか)
月を仰ぐ。迷う感情を瞬きひとつで切り捨てる。
友達であれなんであれ、離れてしまえば結局はどんな関係も終わって行く。今まで、優しくしてくれた人は皆、己の前から去った。
(あの人も――)
本土に居る大事な人を思った途端、陽を知らないかのように色素の薄い頬が悲しく歪んだ。
優しくしてくれたあの人からの連絡が途絶えてしまった。きっともう、二度とあの人からの声は自分のもとには届かない。どんなに声が聞きたくとも、諦めるしかない。
早く諦めろと自分に言い聞かせながら、それでも、思う。
(もしかするとあの人も今日の月をどこかで見ているのかもしれない)
けれど。それはお互いに知らないこと。
あの人からの連絡が途絶えたのは己の所為。
それはもうどうしようもないこと。仕方のないこと。
そう思う。そう、思おうとする。
それなのに、いつもならば人との関係はすぐに諦めがつくのに、
(どうしていつまでも未練がましく考えてしまうのか)
考えれば考えるほど歩くことすら辛くなってきて、六は砂を踏む足を止める。痩せた身を風に殴られ、よろける。苦しい息を吐いてしゃがみこむ。そのまま、立ち上がれなくなる。座り込む。
深く吐き出した息の分だけ、潮の香を胸に満たす。
(今はとても恵まれている)
それは確かだ。
毎日食べることが出来る。寝る場所がある。それ以上に何を望む?
(これ以上何も望むことなんてない)
望んではいけない。
望んでも、きっとまた失うだけ。だけど。
(だけど、今日この月を一緒に見ることが出来たなら……)
月を、仰ぐ。真白の月を仰ぐことすら望んではならない気がして俯く。白砂を掴む。握り締める先から零れ落ちて風にさらわれて行く。行ってしまう――
歌が、聞こえた。
月の光に似て透き通る、淀むことを知らぬかのような純粋な歌声。
月の光に、歌う声に誘われ、月夜の砂浜に視線を巡らせる。砂の上に立ち上がる。
風が打ち寄せる。歌声が体ぜんぶを包みこむ。
一歩を踏み出したその視線の先、長い黒髪を風に躍らせ、月に届けと声を響かせ歌う少女の背中を見つけた。高く低く、月光に似て優しく揺らぐ声にほんの少し近づこうと足を踏み出して、
――にゃあん
歌う少女の足元、月光と戯れていた白猫があどけない鳴き声をあげた。
歌声が途切れる。怯えたように震える肩に黒髪を滑らせ、少女が振り返る。
「え、」
歌声と同じに澄んだ声が幼い口元から零れて落ちる。
「歌聞いてました、か」
零れ落ちた己の声の思いがけぬ大きさに驚いて、
宇井 真珠
は唇を両手で押さえる。人気のない砂浜に一人ぽつんと取り残された迷子のように立つ、線の細い少年を見遣る。
静かに頷く白い髪の少年の、感情を映さず、それでいてこちらを見透かそうとするかのように真直ぐに見つめて来る灰色の瞳に気圧され、真珠は足元にじゃれつく愛猫を抱き上げる。
「ど、どうも」
歌声を聞かれた動揺に挙動不審になりつつ、真珠は少年に向け頭を下げる。波に紛れそうな小さな声で挨拶すれば、少年の側からも同じ言葉が返ってきた。
「
宇井 真珠
といいます」
こっちは飼い猫のバッカル、と白猫を胸の前、無敵の盾のように掲げて見せる。
「
東城 六
だ」
表情は乏しいながらも、それでもきちんと応えがあることに安心して、真珠は微笑む。バッカルを抱きしめ、何か話さなくてはと必死に話題を探す。
「響きが気に入ってバッカルコーンと名付けたのですが、後になってクリオネの器官って知って……」
とにかく話さなくては。話して話して、自分がここで歌っていたことから気を逸らさなくては。
(だって、恥ずかしい)
歌うのは好きだった。散歩の途中、見上げた月のあんまりの綺麗さに思わず歌いだしてしまうくらいに。でも、まさか誰かに聞かれてしまうとは思ってもいなかった。
「……あうう」
耳まで真っ赤にして、抱きしめた猫の頭に額を押し付ける。聞き取り辛い小さな声でバッカルの名前の由来を話したところで話題が尽きて、ふと思い出す。そう言えば向こうでお月見団子とお茶を貰ってきた。
「お月見団子、どうですか。あげます」
砂浜に置いていた団子のパックとペットボトルのお茶を拾い上げ、これで忘れて下さいとばかりに差し出せば、言葉少なな少年は心底不思議そうに灰色の眼を瞬かせた。
ほんの少し、よく見なければ分からないくらいに微かに、笑む。
「……もう、歌わないのか?」
「とッ、とんでもないです!」
頭から火が出るほどに顔を赤らめ、首を激しく横に振る真珠を無感動な瞳でしばらく眺めて後、六は空から光降らせる月へと視線を移す。
月を、仰ぐ。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月01日
参加申し込みの期限
2014年12月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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