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満月の夜に
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丸めた餡子を柔らかな餅で包み込む。餅取り粉をつけた掌の上で形を整え、皿に並べながら、
浮舟 久雨
は宵闇の蒼した瞳を緩やかに伏せる。
中秋の名月の今日は、同じ寮に住む
畑生 言嗣
と月見をする約束を交わしている。それはいい。
月見の場所には言嗣が案内すると言っていた。それもいい。
寮から借りた食堂の台所で手際よく大福を作り上げ、重箱に詰める。片付けをしながらお湯を沸かし、温かいほうじ茶を淹れて魔法瓶に入れる。重箱と魔法瓶をバスケットに詰める。
一人で着々と仕度を進めて行きながら、
「むう……」
久雨は心ここに在らずの様子で小さく呻く。
言嗣と二人きりで月見に行く。ただそれだけのことなのに、どうしてこうも、
(考え事が止まらない?)
息を吐き出す。
止まらぬ考え事に頭を悩ませながら、それでも自他共に厳しく妥協を許さない完璧主義者な久雨は台所を元通りどころか、借りる前よりも綺麗に片付け磨き上げる。
言嗣に指定された時間より少し前にバスケットを片手、外に出る。
「待ったかね」
「……いや」
時間ぴったりに悠々と寮から出てきていつも通り泰然と笑う言嗣に、久雨は首を横に振る。
「その荷物は何だ」
言嗣が片手に提げて来た荷を目に留めて問うも、
「シートに膝掛け、それと」
「それと?」
「アレを」
「アレ?」
返って来た不穏な言葉と楽しげな笑顔に嫌な予感が過ぎる。問い詰めようとして、
「行こうか」
軽やかにかわされた。先に立って宵の道を歩き始める言嗣の長身痩躯の背を追い、久雨は残暑の熱を残すアスファルトの地を蹴る。
月の光差す道をふたりで辿る。
「まだなのか」
「まだだね」
「何処なのか教えてはくれないのか」
「まあ、我慢したまえ」
「むう……」
芝居がかった口調で焦らされ、不満に眉を寄せつつ、久雨は言嗣と肩を並べる。月明かりと街灯の街並を抜け、緑に挟まれた緩やかな坂道を登ったその先、人気の絶えた眺めの良い丘の上で、案内の言嗣は足を止める。
月明かりの丘の上、如何かとばかり両手を広げて久雨を見る。柔らかな草の上に用意してきたシートを広げて久雨を座らせ、その膝に膝掛けを乗せる。
「冷えるからね」
「あ、ありが、とう……」
戸惑ったように目を伏せる久雨の傍ら、言嗣は躊躇い無く腰を下ろす。並んで座り、久雨がバスケットから取り出し入れてくれたお茶のカップを手に取る。
「……作って来た」
魔法瓶に続いてバスケットから取り出されたのは小さな重箱。久雨の膝に乗せられた重箱の中には、まん丸の大福が整然と並べられている。
「口に合うと良いが」
「ふむ」
久雨お手製の大福を月明かりに見下ろし、言嗣は口元を笑ませる。
「では頂くとするかね」
ただ、と少し考え深げな顔をしてみせる。
頂くと言いながらも手を伸ばしては来ない言嗣をしばらく見つめ、
(またか……)
久雨は言嗣の言動の意味に思い当たって瞳を顰める。嘆息しつつ指先で大福をつまみ、言嗣の口元に甲斐甲斐しく運ぶ。開いた唇の内に柔らかな餅を入れる。唇が閉じるのを確かめて指先を離す。咀嚼する口元を見つめる。
「うむ。美味だね」
「感謝する」
久雨は安堵の笑みを零す。次いで真剣に首を傾げる。
「……私が口元に運ぶ必要はないと思うぞ?」
怪訝そうに久雨に問われて、けれど言嗣は必要はある、と満足げに微笑むばかり。
(君だから格別なのだよ)
月の白銀を黒髪に跳ねさせて微笑む言嗣を真直ぐ過ぎるほど真直ぐに見つめていることに気付き、久雨はどこかぎこちなく瞳を空の月へと逃す。無言のまま、言嗣の代わりに月を見つめる。
(月を、)
月をどれだけ見つめていても平気なのに、隣の男を少しでも見つめてしまえば心が波打つのは何故だろう。
そう思って、確かめたい事があるのを思い出した。
この男との月見の準備に勤しみながら、その事ばかりを考えていたのに、当人を前にしてすっかり忘れてしまっていた。
「言嗣」
傍らで月を眺める男の名を呼ぶ。
「何だね、久雨君」
名を呼べば気安く応じてくれる男に向き合い、久雨はその場に正座する。思いつめた一途な瞳で言嗣を見据える。思い切って告げようと腹を据えて、
「その、突然で悪いが……私を、」
続けかけた言葉を、一度、ごくりと呑み込んでしまう。言嗣と視線を合わせていられずに俯いてしまう。
「うん?」
言い辛いのかと己に正面から向き合って座り直す言嗣の気配に、勇気を出さねばと掌を拳に変える。
「だっ、」
息を吐き出すと同時、どうにか言葉を押し出す。
「抱きしめて、くれないか……」
月明かりに頬を薄紅に染めて俯く久雨を、言嗣は見下ろす。
(また随分なお願いだね)
くすり、笑みを零す。女の体を包み込むほどに長い髪が月の光を浴びて煌き震えるのが、ひどく儚く美しく見えた。
(無論、断る理由もないが)
「構わない」
いつも通りの冷静な口調を崩さず応じ、何でもないような仕種で腕を広げる。恐る恐る顔を上げ、安堵しつつも身構えて身動ぎせぬ久雨をしばらく見つめる。そちらから来ないのならば、と覆い被さるように久雨の身を両腕の中に閉じ込める。
己が胸に女の柔らかな胸が当たる。艶やかな髪が頬をくすぐる。包み込んだ華奢な肩が強張ったままなのを感じて、言嗣は久雨が恐れていることに思い至る。
(これは特別優しくせねばならんようだ)
それが己の使命とばかり、言嗣は優しく強く、久雨を抱き締め続ける。そうしながら、久雨の身体の柔らかさと温かさに唇にそっと笑みを佩く。
(極上だね)
己が身を閉ざす男の温かな腕に、頬に触れる男の首筋に、久雨は意志の強さを表すようなつり目を囲う睫毛を震わせる。頬どころでなく、身体が熱くなるほどに気恥ずかしくもあったが、それを圧して、胸が温かかった。
胸に流れ込む温かい幸福感の訳が分からなかった。
自分がどんな人間なのかさえも分からなかった。
知りたいのに、理解したのにそれが出来ず、次々と湧き出す考えに身を苛まれて、
「不安なんだ。いつも」
思わず、呟く。
「ふむ、そうかね」
言嗣の思考に沈むような声を間近に聞いて、久雨はつい不安を零してしまったことに気づいた。内心に焦る。変人かと思える程に頭の良いこの男に、これ以上己が心中を察せられまいと、胸と胸の間に両手を押し込む。
「……無理を言ったな」
早口に告げる。ぐいぐいと言嗣の薄く見えて己よりもずっと力強い胸を押す。
「そろそろ離して良いぞ、言嗣」
「しかし我慢はよくない、このまま続けよう」
さらりと言ってのけ、更に強く己を抱きしめにかかる男に、久雨は絶句する。
(いや……では、ない)
決して嫌ではないが、これ以上続けられるのは、
(私が限界で……)
身の内で不意に大きく跳ねた心臓に、久雨は呻く。
「んー……っ、」
男の肩越しに見える月に切ない息をあげる。
「やっ、……は、離し、て……」
(ふむ、漏れ出る声も艶やかで素敵だね)
己の腕の中、力なく緩々ともがく、さながら小動物のように愛らしい女に、言嗣は瞳を細める。
悩める女に対して己がしてやれる事の少なさを言嗣は自覚している。だからこそ、出来る限りをしてやりたかった。
(決してこの状況を長く続けたいというだけではない)
己の思考に己で納得して繰り返し頷く言嗣に、久雨は声と息を絞り出す。
「分かった、から……ときつ、ぐ……」
やっとのことで伝えた言葉は、けれど上手く伝わらなかった。抱き締める力が益々強くなって、久雨はほとんど涙目になる。
静かに輝く月だけが、抱き合う二人を見ている。
やがて男の腕から解放され、久雨はシートにぐったりと疲れた身を横たえる。
「ふむ、嬉しいのは分かるがはしゃぎ過ぎるのも考え物だね?」
「やかましい」
低く言い捨てる。
「……ただ単に慣れないだけだ」
ようやくに落ち着いた身体を起こせば、傍らの言嗣が持参した荷を探っている。
「む、言嗣も準備を?」
「あぁ。少しね」
一体何かと期待する久雨の視界一杯、
「是非とも着てもらいたいものだね……!」
ひらりと広げられたはウサ耳つけたバニー服。
「貴様! おふざけも大概にせんか!」
激昂する久雨に、言嗣はお月見と言ったらウサギだろう?、と至極不思議そうに首を捻って見せる。
(ええい、やはりこうなるのか)
「このっ……貴様と言う奴はーッ!」
月夜に久雨の楽しげな怒鳴り声が響き渡る。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月01日
参加申し込みの期限
2014年12月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月08日 11時00分
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