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満月の夜に
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旧市街から九夜山への登山道に近く、深い緑の山を背にレトロな洋館が一邸、月の光を浴びて佇んでいる。それ自体がアンティークのような重厚な門に掲げられて、三日月に黒猫の真鍮の看板には、『ステラ・マリス』の装飾文字。
館を照らす中秋の名月を仰ぎ、
荒井 景貴
は黒い瞳を柔らかく細める。
片手には洋菓子店を営む景貴が閉店後に作った、お月見用お菓子の入った紙袋。
お月見をしようと言えば、
(喜んでくれるだろうか)
館の住人でもある
紅林 柳霞
が店主を勤めるセレクトショップの門を潜る。手入れの行き届いた前庭を過ぎ、扉を開ける。間接照明に優しく照らされた赤い絨毯の広いエントランスを飾る、アンティーク家具やヴィンテージもののドレスや小物、様々の品物を見回しつつ、主の姿を探す。
いつもならばこの時間は大抵店番をしているはずの主の姿は、けれど今は館の一階部分を占める店舗には見当たらない。
(困りました……)
店舗奥の広い階段を見遣る。二階部分が住居となっていることは知っているが、親しくさせてもらっているとは言え、勝手に家に入るわけにはいかない。
「今晩は、柳霞さん?」
声を掛けてみれば、アンティーク家具の影から柳霞と共に住まう、柳霞の従弟の少年が顔を出した。店員でもある少年に柳霞のことを訊ねてみても、分かったのは少年が閉店作業を任されているということだけ。
館のどこかに居る館の主を探す許可を求め、笑顔の了承を得て、景貴は一度ステラ・マリスの外に出る。月の光に満ちて案外明るい前庭を見回し、探し求める女性が此方には居ないことを確かめる。
館を巡る小路を辿り、裏庭に回る。
季節の花に飾られた小路のその先には、整えられた芝生と薔薇の垣根の庭。オールドローズの芳しい香が夜風に流れて揺れる。
月影の庭に、探し人の細い背中。
探し人を見つけた嬉しさに彼女の名を呼ぼうとして、景貴は躊躇う。
夜着一枚に上着を羽織っただけの姿で庭のテーブルセットに腰掛ける想い人の後ろ姿は、満月の光に濡れる長い黒髪をその細い背に流しているせいか、ひどく清楚で、――ひどく艶かしく、見えた。
月光に射抜かれ立ち尽くす景貴に見られているとも知らず、柳霞は夜着の肩を震わせそっと息を吐く。
胸が苦しかった。
あの人に会いたくて会いたくて仕方がなかった。
(秋だから?)
自身を茶化して心に呟いてみるも、
(ううん、いつだって逢いたい……でも、今日は、)
想いは募るばかり。心は苦しくなるばかり。
(側に居たい)
こみ上げる切なさにどうしようもなく痛む胸を押さえ、空に白銀に輝く月を見上げる。
(ずっと一緒にいたい、隣にいたい)
それは我儘なのだろうか。この想いをあの人の前で口にしてしまえば、あの人は重たく感じるのではないだろうか。
(……嫌われてしまう?)
でも。それでも、今よりももっともっと近くに行きたい。あの人の傍で、あの人と共に笑いたい。あの人と共に生きてゆきたい。
胸に熱く苦しく宿る抑え切れない想いが黒い瞳を歪ませ、見上げた月を歪ませる。透明な涙となって溢れる。
「柳霞さん」
零れる涙に俯いて、逢いたいと願った人の声を背中に聞いた。誰に呼ばれるよりも嬉しい声で名を呼ばれ、弾かれたように顔を上げる。頬を伝う涙の冷たさにぎくりとして、慌てて指で涙を拭う。一呼吸のうちに表情を取り繕い、振り返る。
外灯の光を霞ませる鮮やかさで降り注ぐ銀の月の光を浴びて、愛しい人が立っていた。
「景貴さん……?」
その人の名を呟けば、胸に歓喜が満ちる。
「え、なんで……」
それと同時、逢えないものとばかり思っていた人が思いがけず逢いに来てくれた戸惑いに声が揺れる。
月夜の客を迎えて立ち上がる柳霞の傍に歩み寄りながら、景貴は涙の跡の残る柳霞の頬から眼を離せずにいた。
何とか柳霞を見つける事が出来たまでは良かったけれど、
(どうしたんでしょう)
月を見上げる後ろ姿はとても悲しそうだった。それに、思わず名を呼んでしまった後に見せた、涙を拭うような仕種。実際にその柔らかそうな頬に残る、拭い切れなかった涙の跡。
胸に渦巻く心配をどう切り出せばいいのか、景貴には分からない。うまく言葉に出来ない自分をもどかしく思いつつ、景貴は自分の上着を柳霞の華奢な肩に着せ掛ける。
「夜分遅くにすみません」
そうしてようやく言葉に出来たのは、単なる挨拶。それから、
「柳霞さんとお月見がしたくて会いに来ました」
本来の目的だけを告げる言葉。
涙の訳を尋ねる気のきいた言葉も掛けられぬ自分に、
「そっか、お月見……うん、嬉しい!」
けれど柳霞は心の底から嬉しそうに笑ってくれる。一緒に見ようと椅子を勧めてくれる。
柳霞の笑顔に勇気を得て、景貴は持参した紙袋を掲げて見せる。
「うさぎのお菓子を作って来たんですが、どうですか?」
「わぁ、見せて見せて!」
はしゃぐ柳霞の様子に内心安堵しつつ、景貴は紙袋から透明フィルムに包みリボンで飾った手作りお菓子を取り出して手渡す。
「わぁ……」
少女のようにあどけない笑顔を浮かべ、柳霞はうさぎのかたちしたマシュマロのお菓子を月明かりにかざす。
「すごく可愛いお菓子」
食べるのもったいない、と呟いて、マシュマロをそっとテーブルに置く。景貴が肩に掛けてくれた景貴の上着を胸元に両手でかき寄せる。ふわり、お菓子と同じ甘い匂いをその上着に嗅いで、柳霞はくすぐったげな笑みを零す。
「お茶、淹れてくるね」
手伝おうとする景貴を椅子に押し止め、自分の温もりの混ざった上着を、今度は景貴の肩に広げて掛ける。
屋敷に一度入る。温かな紅茶を淹れ、頂いたうさぎのマシュマロを皿に飾る。白いうさぎとピンクのうさぎ。並んだうさぎの食紅でつけた赤い目の愛らしさに、景貴の掌から生まれたお菓子の可愛らしさに、柳霞は思わず笑みを零す。
そうして庭に戻り際、明るい室内から見た窓硝子に映る自分の頬の涙の跡に気付いた。普段の月なら暗くて気付かれなかったかもしれないけれど、今日の満月の下ではもしかしたら泣いていたことに気付かれてしまったかもしれない。心配をかけてしまったかもしれない。
そう気を揉みながら月明かりの庭に出て、――椅子に姿勢よく腰掛け、穏かな表情で月を見上げる景貴の横顔に、見惚れた。
「柳霞さん」
振り返る景貴の丁寧な笑みに、柳霞はとても幸せな気持ちになる。
「綺麗な月だよね」
テーブルの上にお皿とティーセットを載せた銀の盆を置き、景貴のために淹れた紅茶をポットからカップに注ぐ。
「綺麗すぎて、一人で見ていたら寂しくなっちゃった」
涙の理由をそんな風に言い訳してみる。何も問わず優しく笑んでくれる景貴に感謝しながら、傍らの椅子に腰を下ろす。
「だから……会えて嬉しい」
ぽつり、呟く。呟きが景貴の耳に届かぬうちに、白いマシュマロをぱくり、口に入れる。
「ん、美味しい……」
淡雪のように溶けるマシュマロの中には、甘い香を抱いたミルクチョコ。
「こちらにはいちごチョコを入れてみたんです」
ピンクのうさぎを示して言いながら、景貴はちらりと首を傾げる。
(こういうお菓子は好きでしょうか……?)
問うよりも先、柳霞の頬を彩る鮮やかな笑みに視線を奪われる。いつも笑顔で美味しいと言ってくれる彼女が、今日も嬉しそうに食べてくれる彼女が、愛おしくてならなかった。
「……幸せだなぁ」
口いっぱいに広がる甘さに、柳霞は頬を押さえて息を吐く。
甘さと暖かさは、似ている気がする。じんわりと広がって、心がぽかぽかするのは、
(きっと甘さのせいだけじゃないよね)
傍らに居てくれる景貴を見つめる。笑みと共に見つめ返してくれる景貴の優しい瞳に、胸がきゅっと熱く締め付けられる。
(今は景貴さんは私だけのもの)
月の下、そんな風に考えてしまえば、想いが口から漏れそうになって、柳霞は月を仰ぐ。
(月は人の心を惑わせるというけれど、)
この想いはしっかりとしたもの。
もう一度、景貴を見つめる。愛しているの言葉の代わり、
「月が綺麗だね」
そう、言ってみる。
柳霞の告白に、景貴は胸をつかれたように瞳を見開く。思わず応じる言葉を上らせそうになって、
(先に想いを伝えるのは自分から)
心に決めた想いを違えず、唇を引き結ぶ。真直ぐに柳霞を見つめ返す。
「その言葉は、いつか僕の方からあなたへ伝えます」
誓うように告げた言葉に、柳霞の瞳が淡く解ける。甘さが広がるように、顔いっぱいの幸せな笑みになる。
「うん、待ってる」
景貴にだけ向ける笑顔で、柳霞は大きく頷く。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月01日
参加申し込みの期限
2014年12月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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