大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～｜リアクション

大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～

●混沌

「はわわわわっ、エライこっちゃぁですよーぅ」

　不破ふわりは金属バットを片手に混沌とした砂浜を右往左往していた。

「サンマさぁ～ん！　何処ですかぁ～！」

　彼女は半魚人の大群に突撃して行ったはずの『本物』のサンマさんを探していた。
　視界に入るのは、サンマさんにそっくりな半魚人。視界を転じても目に入るのはサンマさんそっくりな半魚人。

　大量も大漁。大漁旗を揚げてお祝いしたい程の浜辺を覆い尽くすサンマさんフィーバー。
　数えだしたら熟睡間違いなしのサンマさん、サンマさん、サンマさん……

「ではデカイのはお徳用サンマさんですかねぇ？」

　たぶん違うと思います。

　それはともかく、この偽サンマさんラッシュの中から本物のサンマさんを見つけ出すのは、相当に困難であると思われたが、ふわりは諦めずに探し続ける。
　雲霞のごとく襲いかかって来る偽サンマさん――半魚人は金属バットとろっこん『特大ガム風船』の爆発で押し返す。

　ふと気が付くと、そこで転んで仲間に踏まれてるのは例によってサンマさんそっくりな半魚人――ではないように思われた。なんというかヌメヌメしていないし、敵対的なオーラをまとっていないのがその根拠だった。割と大雑把な基準ではあるが、まぁそれでいいのだ。きっと。多分。
　
「えーとぉ、本物の偽者である本物じゃない偽サンマさんではなくてぇ、偽者の偽者であるぅ、偽者じゃない本物のサンマさんですねぇ♪」

「お、おう……言ってる意味はわからないが、お嬢ちゃん。とにかく早く起こしてくれだぜ……」

　ひっくり返って砂浜に突き刺さるように倒れていたサンマさん（オリジナル）は、ようやくふわりの手を借りて起きあがる。

「さぁ、海のモズクになる前に安全な場所に逃げるですよーぅ！」

「お嬢ちゃん、それを言うなら『海の藻屑』だぜ……」

　などと緊張感の無い会話をしながら、二人はスタコラサッサと逃走を開始した。