大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～｜リアクション

大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～

●レーザービーム

「魚真河岸剣法をくらえ！　うおー！」

　押し寄せる半魚人の群れをかいくぐり、新井すばるはそう叫びながら、木刀で叩きのめす。
　こうやって、もう何体の半魚人を倒しただろうか？
　さすがに正義のハートを持ったヒーローとは言え、無限の体力を持っている訳ではない。
　雑魚を引き受けたのはいいが、こう数が多くてはまさに埒が明かない。
　いつ終わるともないハードなモグラ叩きに体力はもはや限界寸前だ。

「でかいのは……？　まだ落ちてないか……」

「渾身直拳！　ストレイト・スマッシャー！　よそ見してると危ないぜ！」

　注意のそれたすばるに死角から襲いかかって来た半魚人を風雲児轟が渾身の右ストレートでぶっ飛ばす。

「如月たちはどうしたんだ？」

　自分達が雑魚を引きつけている間に巨大サンマを叩いてくれる手筈だったのだが、あまりの数の多さに地上から巨大サンマに攻撃を仕掛けられるものは居なかった。

　しかし――

　空中に謎の赤い線が浮かんでいた。その線の片方は巨大サンマに伸び、もう片方の端は……

「あっしの役目は巨大サンマにトドメを刺す事！」

　赤い光線は山田与太郎が股間に装着したレーザーポインターの光だった。
　本来であれば突撃部隊が巨大サンマのバランスを崩して倒れさせてからとどめに攻撃する計画だったのだが、この苦戦状況でこれ以上待機を続けるのも危険と見なしての行動だった。

「俺の主砲のこそが寝子島の最終兵器！　今こそ示せ、あっしの性技……もとい、正義！
　あっしは一発のビームを撃つしかできない不器用ですから………」

　カッコいいのか悪いのか良く分からないセリフを口にしながら与太郎は、ろっこん『ライジング・サン』発射のカウントダウンを始める。

「照準用レーザー、進路クリア！エクスタシー0.2秒後に充電完了！
　ライジング・サン……全力発射！　フィニッシュゥゥゥ！！」

　股間から目も眩まんばかりの輝きと共に、強力なビームが巨大サンマの顔面に向かって放たれた。

（あああ、巨大サンマの口に主砲ビームを撃つなんて、なんてプレイですか！　何かに目覚めそうです！）

　発射の衝撃で与太郎の服は破れ、尻からは猛烈な廃熱ガスが吐き出され、辺りの瓦礫を巻き上げる。

　だがその瞬間、時を同じくして、もう一つの爆音が巻き起こっていた。

「穿て！」

　離れたところから戦闘を観察していた草薙龍八のろっこん『破空法』。前に突き出された龍八の掌から、岩をも砕く圧縮空気の弾丸が打ち出されていた。
　龍八は発射の強烈な反動に吹き飛ばされそうになりながらも膝をつき、踏ん張って辛うじて態勢を維持していた。
　
　そしてその弾丸が放たれた方角は――

　今まさに巨大サンマの顔面に向かってビームを放とうとしていた与太郎の息ｋ……砲身だった。

　発射の瞬間の砲身を狙い打たれ、ビームは目標をそれて、何も無い虚空へと一条の筋を描き、そして――消えた。

　与太郎は爆心地で真っ白に燃え尽き、全裸で倒れていた。
　息はあるが、ろっこん使用の反動もあり、精魂尽き果てて立ち上がる事も出来ない。
　
　龍八はその様子を確認し、一旦空を見上げて何かを探した様子だったが、すぐに向き直ると姿を消した。

「撤退するぞ。乗れ」

　八神修のワゴン車と鈍蔵鋼成のトラックが駆け付け、防衛部隊を回収して九夜山へと撤退を開始する。

　移動中の車内で高梨煉が弁当を配り、それまで丸一日何にも食べていなかった一同の腹を満たす。

「ふしゅるるる～……わぁ～　楽じぞうな有様でありまずねェエ～！
　あのさんまさんは食べてもお腹が膨れなかったのでありがたいでありまずゥウ～！」

　この状況下にあっても笑いを忘れない茨姓歩の価値観は独特だが、その笑みは一同の疲れ切った心を癒すのに充分だった。