酒は飲んでも飲まれるな｜リアクション

酒は飲んでも飲まれるな

　同じころ、旧市街の公園。
「あの二人、どっか行ってもうたけど、大丈夫かいな？」
「大丈夫じゃなさそうだけど、いつまでもウチらで相手するのは無理です……」
　牛瀬先生と七緒璃音は疲れ切っていた。横には、桜栄理事長と、それを介抱しようとしている宮祀智瑜がいる。
「理事長先生、お水持ってきましょうか……？」
「無理せんでええで、お前もできあがっとるから」
　そこに近づいて来る二つの人影があった。八十八旗信彦と、ろっこんを発動して姿を変えた大田原いいなだった。
「あれ、チャラ彦じゃない！何してんの？そっちの人は？」
「やあリオンちゃん。えっと、これは親類の人さ。それより、この状況をなんとかしないと」
　璃音の問いを、信彦は笑ってごまかした。
「……牛瀬先生。この状況について伺いたいことが……ん？」
　牛瀬に問いかけようとしたいいなだったが、下を見ると、智瑜が足元にすがりついていた。
「心細いです……そばにいてください」
「えっと……私はちょっとそれどころじゃなくて」
「駄目、ですか……？」
　智瑜は顔を上げた。そのうるうるした瞳に、いいなは智瑜を引き離すことを諦めた。
「ま、いいわ。牛瀬先生、この状況はどういうことです？」
「ワシにもよくわからんが、どうも理事長の酔いが皆に伝染しとるらしいな」
「なるほど、この人が酔いから覚めればいいのね」
「レディの介抱？俺に任せろ！」
　信彦が張り切る。
「まず、レディをこんな硬いベンチに寝かせるなんて、紳士的じゃないね！レディの柔肌を傷つけないよう、柔らかいベッドを用意してしかるべきだと……そうだ！」
　信彦はぽん、と手を打った。
「ホテルに連れて行こ……ぐはっ」
　いいなの鉄拳の前に、信彦のセリフは中断された。本人は全くの善意から言っているのだが、傍目にはいかがわしいセリフにしか聞こえない。
「ちょっとチャラ彦、牛瀬先生も辛そうなのよ、見えてる？」
　璃音の言葉に、信彦が返した言葉は、一言。
「男なら自力でなんとかすべし！」
　男が嫌いなのではなく、レディファーストを徹底しているのだった。
「理事長の介抱、私も手伝うわ。ひとまずこれを」
　いいなはコートのポケットから、白い粒状のものを取り出す。
「何や、薬か？」
「ラムネ菓子よ。酔ってるならまず脳にブドウ糖の補給を……」
　いいなは理事長の口をこじ開け、大量のラムネ菓子を容赦なく流し込んだ。
「コラやめんか！窒息するで！」
　牛瀬の叫びは届かない。
「―――ひとまず、あとは理事長の回復を待つばかり、と。ねえ、ボケ彦」
「……なんだい？」
「一段落したら疲れたわ。ちょっと私の愚痴、聞いてくれる？」
「ああ、いいけど」
「このコート、借り物なんだけど―――着てると胸が、なんというか―――すん、とするの。どうしてかしら、ね？」