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- 00月00日生 00歳
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ネコミュージックフェスティバル ｉｎ ＳＵＭＭＥＲ！
伊藤 恵美はゴキゲンだった。
「うふふっ。町長さんったら、すごくお若く見えますね、だって」
「ああ、そうだな。君はとても若く見えるよ」
寝子島町役場、健康福祉課の伊藤 武正は、妻の恵美を伴って寝子ヶ浜のメイン会場でリッカルド町長に挨拶してきたところだった。町を挙げての音楽祭という事で、役場職員なれば本来手伝いをすべきだったか、と武正は気に掛けていた。生真面目なのだ。
しかし今年は妻を優先した。例年あれこれ用事があって行けなかった罪滅ぼしの気持ちもあった。
そんな雑談を一言二言交わしたあとに恵美のことを「自慢の妻です」と紹介すると、町長はくだんのように恵美を褒め、それからこういってくれたのだ。
気にせず夫婦水入らず楽しみたまえ、と。
この一連のやりとりが、たいそう恵美のお気に召したのだった。
ふたりは旧市街を歩いていた。恵美がカラオケ大会に出場するためだ。コスプレイヤーでもある童顔の妻はかなり張り切っているようで、衣装を入れた紙袋を大事そうに抱えている。
「あら？」
恵美が足を止めた。釣られて武正も立ち止まる。
前方で、身体に色とりどりのポスターを貼り付けたサンマさんが、灼熱の路上めがけ傾いでいった……。
◇
「サンマさんサンマさーん！」
野々 ののこが大好きなサンマさんを追いかけていたのはそれより少し前のことだ。そんなののこをさらに神薙 焔が追いかけていた。魚新の屋台で買った冷やしちくわを食べ終えたのち、焔はののこと出会い一緒に見て回ることにしたのだが、ののこときたら全然じっとしていないのだから参ってしまう。
「待ってののこちゃん」
焔から見えるのは人々の頭の上から突き出すサンマさんの尖ったおかしらと、ののこの揺れるアホ毛。
サンマさんの丸い目玉は午後の直射日光をギラギラと反射している。ちょっとコワイ。
（ののこちゃんサンマさんのファンだったわね。アレをかわいいっていうのはよくわからないケド……）
などと思っていると、ののこが「あっ」と声をあげた。
「サンマさん！」
サンマさんの腹には刀の手によって宣伝ポスターが貼られていた。そのポスターを震わせて、サンマさんが揺らいでいる。それはひどく頼りない様子で、どこか生まれたての小鹿を連想させた。かと思うと、サンマさんの身体は陽炎の立ち上る灼熱のアスファルトに向かって真横にゆっくりと傾いていった。
御剣 刀が手にしていた看板を投げ捨て、銀の魚体を咄嗟に支える。
しかし体長２メートルのサンマさんは思った以上に重い上にバランスが悪い。
「立てるか？」
刀の問いかけに返ってくるのは苦しそうな息遣いだけだ。様子がおかしい。なにしろ自分で立ち上がろうという気配が全く感じられない。ふいに、刀に掛かる重みが増した。
ともに倒れるか、と思われた瞬間、よく鍛えられた武正の手がサンマさんの頭部を支えていた。
「大丈夫かい？」
ののこが駆け寄る。焔が駆け寄る。恵美も駆け付ける。
焔はこれまでの様子から咄嗟にこう推理した。
「もしかして、この暑さの中で着ぐるみだから、熱中症になりかかってるのかも？」
「とりあえず日陰に！」
刀と武正がサンマさんを横抱きに抱えて、木陰へ寝かせる。
焔が遠巻きに見守っている群衆に叫んだ。
「命にかかわるわ、氷やアイスクリームはそのへんで売ってないかしら……そうだ、冷やしちくわ！ 魚新に行ってちくわくん呼んで来て！ 早く！」
ののこと恵美が走った。焔も、貰った魚新うちわでサンマさんを煽ぐ。
「口から中に向かって仰ぐといいかもしれない」
刀がアドバイスする。口の中……あるいはそこから、中の人の顔が見えるのだろうか。焔はそう思って密かに覗き見たが、そこはブラックホールのごとき闇だった。
ともかく焔は煽いだ。そして尤もなことを口にした。
「この着ぐるみ、脱げないの？」
しかし。
「……やめてくれ……」
サンマさんは喘ぎ喘ぎいった。
「オレはサンマさんだ……それ以外の何者でもねぇ……寝子島のみんなの、夢を……希望を……壊すわけには、いかねぇんだ……！！」
ちくわくんこと新井 すばるが、たくさんの冷やしちくわを持って駆け付けてくれた。
冷やしちくわはすぐさまサンマさんの口にぎゅうぎゅうに突っ込まれた。
「むぐ……」
それからすばるは【ちくわ☆ビーム】でサンマさんの身体を冷やす。サンマさんは徐々に冷凍サンマに……。
「って、やめーい！ もう大丈夫だ！ ありがとよ、みんな！！」
サンマさん、復活！
「バンザーイ！ バンザーイ！ バンザーイ！」
湧き上がる万歳三唱。見守るみんなの瞳には謎の感動の涙があった。
「うふふっ。町長さんったら、すごくお若く見えますね、だって」
「ああ、そうだな。君はとても若く見えるよ」
寝子島町役場、健康福祉課の伊藤 武正は、妻の恵美を伴って寝子ヶ浜のメイン会場でリッカルド町長に挨拶してきたところだった。町を挙げての音楽祭という事で、役場職員なれば本来手伝いをすべきだったか、と武正は気に掛けていた。生真面目なのだ。
しかし今年は妻を優先した。例年あれこれ用事があって行けなかった罪滅ぼしの気持ちもあった。
そんな雑談を一言二言交わしたあとに恵美のことを「自慢の妻です」と紹介すると、町長はくだんのように恵美を褒め、それからこういってくれたのだ。
気にせず夫婦水入らず楽しみたまえ、と。
この一連のやりとりが、たいそう恵美のお気に召したのだった。
ふたりは旧市街を歩いていた。恵美がカラオケ大会に出場するためだ。コスプレイヤーでもある童顔の妻はかなり張り切っているようで、衣装を入れた紙袋を大事そうに抱えている。
「あら？」
恵美が足を止めた。釣られて武正も立ち止まる。
前方で、身体に色とりどりのポスターを貼り付けたサンマさんが、灼熱の路上めがけ傾いでいった……。
◇
「サンマさんサンマさーん！」
野々 ののこが大好きなサンマさんを追いかけていたのはそれより少し前のことだ。そんなののこをさらに神薙 焔が追いかけていた。魚新の屋台で買った冷やしちくわを食べ終えたのち、焔はののこと出会い一緒に見て回ることにしたのだが、ののこときたら全然じっとしていないのだから参ってしまう。
「待ってののこちゃん」
焔から見えるのは人々の頭の上から突き出すサンマさんの尖ったおかしらと、ののこの揺れるアホ毛。
サンマさんの丸い目玉は午後の直射日光をギラギラと反射している。ちょっとコワイ。
（ののこちゃんサンマさんのファンだったわね。アレをかわいいっていうのはよくわからないケド……）
などと思っていると、ののこが「あっ」と声をあげた。
「サンマさん！」
サンマさんの腹には刀の手によって宣伝ポスターが貼られていた。そのポスターを震わせて、サンマさんが揺らいでいる。それはひどく頼りない様子で、どこか生まれたての小鹿を連想させた。かと思うと、サンマさんの身体は陽炎の立ち上る灼熱のアスファルトに向かって真横にゆっくりと傾いていった。
御剣 刀が手にしていた看板を投げ捨て、銀の魚体を咄嗟に支える。
しかし体長２メートルのサンマさんは思った以上に重い上にバランスが悪い。
「立てるか？」
刀の問いかけに返ってくるのは苦しそうな息遣いだけだ。様子がおかしい。なにしろ自分で立ち上がろうという気配が全く感じられない。ふいに、刀に掛かる重みが増した。
ともに倒れるか、と思われた瞬間、よく鍛えられた武正の手がサンマさんの頭部を支えていた。
「大丈夫かい？」
ののこが駆け寄る。焔が駆け寄る。恵美も駆け付ける。
焔はこれまでの様子から咄嗟にこう推理した。
「もしかして、この暑さの中で着ぐるみだから、熱中症になりかかってるのかも？」
「とりあえず日陰に！」
刀と武正がサンマさんを横抱きに抱えて、木陰へ寝かせる。
焔が遠巻きに見守っている群衆に叫んだ。
「命にかかわるわ、氷やアイスクリームはそのへんで売ってないかしら……そうだ、冷やしちくわ！ 魚新に行ってちくわくん呼んで来て！ 早く！」
ののこと恵美が走った。焔も、貰った魚新うちわでサンマさんを煽ぐ。
「口から中に向かって仰ぐといいかもしれない」
刀がアドバイスする。口の中……あるいはそこから、中の人の顔が見えるのだろうか。焔はそう思って密かに覗き見たが、そこはブラックホールのごとき闇だった。
ともかく焔は煽いだ。そして尤もなことを口にした。
「この着ぐるみ、脱げないの？」
しかし。
「……やめてくれ……」
サンマさんは喘ぎ喘ぎいった。
「オレはサンマさんだ……それ以外の何者でもねぇ……寝子島のみんなの、夢を……希望を……壊すわけには、いかねぇんだ……！！」
ちくわくんこと新井 すばるが、たくさんの冷やしちくわを持って駆け付けてくれた。
冷やしちくわはすぐさまサンマさんの口にぎゅうぎゅうに突っ込まれた。
「むぐ……」
それからすばるは【ちくわ☆ビーム】でサンマさんの身体を冷やす。サンマさんは徐々に冷凍サンマに……。
「って、やめーい！ もう大丈夫だ！ ありがとよ、みんな！！」
サンマさん、復活！
「バンザーイ！ バンザーイ！ バンザーイ！」
湧き上がる万歳三唱。見守るみんなの瞳には謎の感動の涙があった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2014年06月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年06月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年06月16日 11時00分
