ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！｜リアクション

ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！

●プロローグ

　ヘッドホンを付けたスタッフが慌ただしく原稿を書く。
　別のスタッフが書き殴られた紙をかき集め、風に飛ばないよう重しをして机に置く。
　ざわざわと落ち着かないのは期待感。
　寝子島が音楽に染まる日。
　メインステージの会場、寝子ヶ浜海浜公園に設えられた報道ブース。
　オンエア直前のn.k.FM特設スタジオの中、桃川圭花は緊張した面持ちで息を吸う。
（表方が揃いも揃ってリポートに出ちゃったからって……
　いつもは裏方の私がスタジオからの放送を担当だなんて大丈夫なのかしら……）
　今更そんなことを悩んだって仕方ないってことはよく分かってる。放送はもう始まる。不安を振り払うように首を振る。大丈夫、と圭花は自分に言い聞かせる。目立つのはすごく好きだし。喋ることだってたくさんある。私の友達も知り合いもみんな本当にすごいんだから。

　圭花ちゃん行くよ、と声がかかる。帽子のスタッフが指を折る。カウントダウン。

　３.２.１……

　……

　――えーとね。
　お気に入りのＤＪを期待してた人にはゴメンね。
　残念だけど、みんな遊びに出かけちゃってる。
　それでね。
　留守番してる私から、部屋でラジオを聞いてる君へ。

　街に出て。

　知ってる、決まりごとだらけのあれこれが、君を窮屈にさせてるんでしょ。

　でも今日はそんなの忘れていい。

　メロディを探しに行きましょう。
　新しいお気に入りを探しに。
　楽しいことを探しに。

　――さあ、出かける準備できた？

　……もしまだの子がいたら、準備できるまで付き合うわ。
　これから行くとこ、オススメも一個か二個か教えてあげる。
　これからの放送、チェックしてみて。

　軽やかなジングル。この隙に呼吸を整える。大丈夫。声は震えてない。いける！

　て、わ・け・で♪
　ネコフェス特集のスペシャルプログラム、スタジオからは私……そうね、ＤＪモモ。
　が、お送りするわ。
　ヨロシク！

　～Good feelin' ,Good music, Nekojima～
　ねこねこ放送局特別版・ネコフェススペシャル！

　今日はシーサイドアウトレットそばのスタジオ2Fを飛び出して、
　ネコフェスの魅力を余すことなく伝えるつもり。
　リスナーさんからのお便りも随時募集中よ。宛先は……。