ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！｜リアクション

ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！

　ところ変わって灯の消えたメインステージ、寝子ヶ浜海岸では――。

　打ち上げ会場に『彼』が姿を見せると、おお、とどよめきが起こった。
　刮目せよ！　彼こそはサンマさん、ご存じ寝子島観光大使である。
　だが上しか見えぬサンマさん、登場そうそう、足元の段差につまずいて転倒しそうになる。
「おっと……！」
　しかしそれを、御剣刀がカバーしてくれた。
　彼は本日、サンマさんと同行してずっと、転倒を防いでくれたのである。いわばサンマさんの守護神だ。
　守護神こと刀は席につき、どうやったのかちょこなんと、サンマさんも刀の前に陣取った。
「それじゃサンマさん、お疲れ様」
　飲み物のグラスを刀が持ちあげると、サンマさんも応じ、カチンと乾杯したのである。
　……サンマさんがドリンクをどうやって飲むのか、それは秘密である。

　打ち上げの席には樋口弥生と『月曜日の野良猫』もいて、車座になって談笑していた。
　禁断のロックンロール・クイーンたる弥生はもういない。彼女は和服に着替えて髪も結い、すっかり普段の姿に戻っていた。少し前の姿がまるで幻のようだ。そのギャップもまた、弥生の魅力ではあろうが。
　その弥生に、真っ赤な薔薇の花束が捧げられた。
「弥生先生、お疲れさまです。素晴らしかったです……」
　御巫時子だった。弥生のステージにすっかり魅了された時子は、大至急花を買ってきてこの場に持参したのだった。
　切れ長の目をやわらかく緩めて、弥生は花束を受け取った。
「ありがとう。楽しんでくれた？」
「それはもう……！　まだドキドキしています……！」
　それ以上言葉が出てこなくなって、時子はしばし、小刻みに震えていた。
　ステージでギターを奏でる妖艶な弥生、
　そして今、和服でたたずむ清楚な弥生、
　いずれも大好きだ。憧れの女性である。
　だが黙っていては伝わるまい。時子は勇気を出して切り出した。
「ケータイで一緒に写真を撮ってもらっていいでしょうか？」
　もちろん、と答えた弥生の微笑みを、時子はずっと忘れないだろう。

　星ヶ丘寮の自室に戻った檜扇舞華は撮りためた動画を編集し、ネコ動での生放送を開始する。
「まだまだ余韻を楽しみたいみなさん、こんばんわ。
　公式動画やあたしが撮った動画を鑑賞しながら雑談といきましょう」
　くるくると増える視聴カウンター。一番盛り上がったのはカラオケ大会の一コマだったが、一番萌え上がったのは舞華が冷やしちくわを咥えたシーンだ。
「あら……少しサービスしすぎたでしょうか」
　動画の上を流れるコメントを読み上げながら舞華は笑みを浮かべる。
「ふふ、みなさん余程楽しかったのですね。そういうあたしもですけど」

「なぎさ、お疲れさん」
　魚新の新井いたごは自宅に戻るや冷蔵庫からビールを取り出し、ぷしゅっと空けた。
　喉を潤し一息つくと、居間にいるはずの妻、新井なぎさに声をかける。
「今日は売り上げ結構あったよね。ボク的には新しい店がもう一軒たてられるくらい儲かったんじゃないかと思うんだけど……ってそれはないか」
　ははは、と笑って居間を覗く。
「お？　返事がないと思ったら」
　余程疲れたのだろう、なぎさはテーブルに突っ伏し寝息を立てている。
　いたごの目尻が優しく緩む。愛おしげに頭を撫で、それからタオルケットを掛けてやって。
　縁側に腰掛けギターを爪弾く。
「心地いい疲労感と妻の寝顔を肴にビールか。悪くないな……うん、悪くない」
　夏の夜が新井家を包みこんでゆく。ぽろん、ぽろん、いたごの奏でるやさしい音楽を友にして。

　
　～Good feelin' ,Good music, Nekojima～
　ねこねこ放送局特別版・ネコフェススペシャル！

　ネコフェス、どうだった？　楽しめたかしら。
　名残惜しいけどお別れのお時間が来たみたい。
　みんな、お疲れさま。とっても素敵だった。寝子島も寝子島のみんなも最高！　愛してる！
　はい、というわけでね。この放送は、ＤＪモモがお送りしました。――See you, good night!

　桃川圭花の声が軽やかなジングルに掻き消されてゆく。
　ネコミュージックフェスティバル。寝子島が音楽に染まった日。
　それぞれの夏の想い出を胸に、夜は更けてゆく――。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：桂木京介／阿瀬春／笈地行／雨音響希
ファンレターはマスターページから！

　マスターの桂木京介です。
　メインステージの描写を主として担当させていただきました。

　ご参加ありがとうございました。
　音楽フェスティバル、ということで音楽にまつわるアクションばかりかと思いきや、皆様思い思いにこの場所、この時間を楽しんでいただけたようですね。
　集まったアクションはバラエティに富んでいて、おかげで描写はスラスラと進みました。
　今回初めて扱わせていただいたキャラクターも多かったのですが、それぞれの人間模様なども垣間見ることができて貴重な体験だったと思います。

　それではまた、機会があればお目にかかりましょう！

　お待たせいたしました。ネコミュージックフェスティバル、お届けにあがりました。

　ネコフェスのスターステージ場面の代筆を担当させて頂きました、阿瀬春と申します。

　雨音さんの代筆ということで、ものすごく緊張しながら精一杯書かせて頂きましたが、如何でしたでしょうか。力不足な部分も多々あるとは思いますが、……少しでも、ほんの少しでも、お楽しみいただけましたら幸いです。
　読んでくださいまして、ありがとうございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　阿瀬　春

　こんにちは。大変お待たせいたしました。
　主にネコフェス・パレードを担当させて頂きました笈地行です。
　今回は本当に怖れ多いお仕事でした。
　至らないところも多かったと思いますが、背伸びして精一杯やってみました。
　頂いたアクションに満ち溢れていたパッションみたいなものが皆様の心にお返しできていれば幸いです。

　笈地行

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