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眠れない夜に
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ふわり、空に浮かぶように眼が覚めて、夢見の心地よい感覚が心と体を占めている内に、
霧生 深雪
は部屋の隅に置いたギターを手にする。
(変な時間に眼が覚めちまった)
時計を確認するでもなく、カーテン越しに揺れる月の光に思う。
朝焼けの陽よりも紅い眼を細め、眼に掛かる雲の灰色した髪を細い指で掻き上げる。
ギターが、無性に弾きたかった。指に伝わる弦の感覚を感じたかった。
(弟の夢、見てたからかな)
線の細い、どこか女性的な顎を引き、片手に持つギターを見下ろす。
弟は、ギターが好きだった。
俺よりギターが上手だった。
ギターの弦に指を伸ばして、やめる。どれだけ静かな曲を爪弾いても、同居人を起こしてしまうかもしれない。弦に触れないまま、手早く静かにギターをケースに仕舞う。
足音を殺し、星ヶ丘寮の外に出る。
色素の薄い喉を月光に晒して星を仰ぐ。ちらり、微笑む。
星空の下で弾くのも悪くない。
ギターケースを背負い、海岸に続く坂道を軽い足取りで下る。足を止めず、背後の星ヶ丘寮に視線を投げる。同居人が起きるまでには戻ろう、そう思えば、海に向かう足は自然と早くなった。
ノウゼンカズラのオレンジの花が落ちる坂を下りきる。西の海に面する浜辺には、そう言えば初めて降りたかもしれない。沈みかけの月に照らされる浜の砂を踏む。潮風と潮騒を身体に取り込む。
座るのに丁度いい流木を見つけ、腰を掛ける。ギターを取り出して抱え、弦に触れる。波の音に誘われるように、幾つかの音を鳴らしてみる。
風音よりも優しく響くギターの音に、微かに瞳を細める。久しぶりに弾くけれど、指は感触を忘れていない。
思うまま、指をギターに滑らせ音を奏でる。六弦の音は気付くと弟の作った曲になっていて、知らず、弟の作った歌を口ずさむ。弟の作る曲はどれも心の奥底まで響く本物だと、深雪は信じる。
大好きだった。
だからこそ、随分長く弟の歌を唄っていなかったのに、詩は心に残っていた。
(俺にとって)
弟の曲をなぞりながら、思い知る。
(ピアノは空気みたいなもので、ギターは麻薬みたいなものだ)
弾くほどに弟を思い出す。
弾けば弾くほど、弟を思い出す。思い出すほどに会いたくなる。会えなくなって、もう一年以上が経つ。
けれどどれだけ会いたくても、会えないことでどれだけ辛い思いをしても、
(俺は弟に会う資格がない)
会えるわけがない、と己を断罪する。
心中に生まれた静かな悲嘆を映して、男性にしては高めの、月の光にも似た透明な歌声が僅かに掠れる。
波の音とギターの音が、波打つ心を安らげるように重なって耳に響く。
纏わり付く冷たい重さを振り解こうと身体を捩って、
服部 剛
は目が覚めた。息がもつれて荒い。夢を夢と思いたくて、身を起こす。ベッドの縁に腰掛けて、気付いた。身体が震えている。
細かく震える肩を両手で擦る。掌も肩も、冷たい汗に濡れている。
脳裏に残る悪夢の断片を追い払いたくて、両掌で眼を覆う。身体と同じに震える息を出来るだけゆっくりと吐き出す。
「……おかげで目ぇ冴えてもうた」
夢を夢と確かめる。唇から零れた声は、思いがけず忌々しげな響きを帯びている。
掌を膝に落とす。夜色と月色、左右色の違う瞳を瞬かせる。
断片的にしか残っていない夢は、けれど間違いなく『あの事故』の夢だった。
身体を侵す震えと悪夢を払い除ける為、いつものように頭から水を被ろうと立ち上がって、ふと、カーテンの隙間から零れる月光に眼を奪われた。
月光は蒼白い線になって暗い床を走り、部屋の隅を照らしている。
光に照らし出されて、布が掛けられた油絵のキャンバス。
眼も心も、布で隠したキャンバスに釘付けにされる。
息すらも忘れていたことに気付いて、熱を帯びた息を吐き出す。キャンバスから眼を引き剥がす。逃げるように部屋を出て、窓の外を流れる夜風の音を耳にする。潮騒に混じって、遠く、六弦の音。
ふらり、家を出る。
悪夢に追われ、知らず知らず、海に向かう。
咲き始めの朝顔に彩られたアスファルトの道がいつの間にか白い砂浜に変わって、漸く夢から逃れた気がして、足を止める。
空へ、視線を上げる。
空には星。
僅かに視線を落とせば、暗い海に月の光が落ちている。
海に落ちる月明かりが、海の彼方に続く白い道に見えて、
(あの道、歩けそう)
夢にうなされるように、思う。
(……何てな)
自分で自分を茶化しながら、寄せては返す波に向けて足を進める。波に足首までを洗わせる。夜の冷気を集めた水はひどく気持ちが良かった。調子に乗って思わず波に分け入る。ざぶざぶと波を蹴って膝まで海に入って、
「あー?!」
頭からすっ転んだ。大柄な身体ぜんぶがしょっぱい水にずぶ濡れる。
「あー……」
月色の波が跳ねる。
波間に座り込んだまま、おかげで冷えた頭で静かに海を眺める。
白い道がさっきよりも近く見える。濃紺の海に伸びる、白く輝く月の道。あのキャンバスに描いた絵に、よく似ている。
珍しく上手く描けたと思えた絵。
親友の女の子に渡すはずだった、最後の絵。
海に沈めていた手を持ち上げる。空の月を掴もうとするかのように指を月光に翳す。
(掴めんかった)
脳裏を夢が過ぎる。
海に落ちてゆく彼女の手。
雨の中、見ているだけだった冷たい彼女。
渡したかった、海の絵。
(何で)
額際の髪を掴む。波に濡れた眼を隠す。
(何であいつが昏睡なんて目覚めるか分からん状態に)
彼女には何度も救われた。
(やのに……!)
俺はあいつを救えなかった。
己を殴るように、冷たい波を殴る。波に撲たれるまま、深く息を零して、流石にもう帰ろうと重い体を持ち上げて、
「……ん?」
潮騒に混ざって聞こえる音に、濡れた頭をもたげる。波音に溶けて響くギターの音と高く澄んだ歌声に誘われた。波打ち際を、ふらり、音を辿る。
風に乗って聞こえる音楽の源に、流木に腰掛けギターを抱えて歌う悪友の姿を認めて、剛は足を止める。
「よう」
思わず声を掛けるのと、深雪が弦を弾く指を止めて顔を上げるのはほぼ同時。
深雪の白い頬に朱が上る。
「聴いてたなら言えよ! は、恥ずかしいだろ!」
紅の眼を瞠ったまま、羞恥心を怒りに換え、ギターを抱き締めて喚く深雪の隣に腰を掛ける。
「つーかびしょ濡れ……朝から水泳か?」
深雪の差し出したタオルを有り難く受け取る。頭から被って、多分酷い顔をしているだろう顔を隠す。声だけで、笑う。
「なあ、乾くまでもっかい聞かせたって?」
心にどうしようもなく渦巻く思いを隠して笑えば、まだまだ笑える気がした。
「剛さん、夏らしい曲がええな!」
おどけて殊更に明るく言ってみせる。
(この光景をあいつに見せれたら)
眼を見せずに笑う悪友の、夜明け前の月に照らされる横顔をしばらく眺めて後、深雪はギターを抱え直す。リクエストに応えて弾くは、剛の求める通りの夏らしく軽やかで爽やかで、けれど少しセンチメンタルな旋律の曲。
隣でどこか途方に暮れたように海を眺める剛の為だけにギターを鳴らせば、気持ちが少し軽くなった。
夏の詩を唇に乗せながら、海に輝く月の光を眺める剛を見るともなしに見る。誰を思っているのだろうか。
陽に焼けた精悍な頬を伝う水の雫が涙に見えて、深雪はけれど何も問わず、ギターを奏で続ける。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年04月28日
参加申し込みの期限
2014年05月05日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年05月05日 11時00分
参加キャラクター一覧
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