あまりにも余裕なので、先生からの『反省しなさい』という意図が伝わっていない生徒もいた。
(こりゃ、『やさしい』こった)
この程度の問題でいいのかという皮肉と提出さえすれば単位をくれるのかという皮肉。 桜崎 巴は辞書をほとんど開くことなく、英詩を書き上げていく。もちろん出来も十分すぎるものだ。
『When you lose your credit,What you'd do is a bit.』
出だしの文ひとつ見ればそれは明白だった。
韻を踏むという常套手段を上手く用いているだけでなく、あえて主語を『You』と記すことにより読者が詩の中に入りやすくなっている。
『失った信用を取り戻すには、あなたはこのように反省の態度を示すだけでいい』
主題の『反省』にもかちりと合った詩の出来は、巴自身も満更でもないようだ。
(実際は「反省してやるから単位を寄越せ」なのさ。なかなか洒落た詩じゃないか)
あとの文もその調子であっという間に仕上げてしまい、巴は残る数学のテキストのページをめくった。