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寝子島高校
桜の季節が終わる頃
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【彼のきもち。】
桜道をとおり抜けてしばらく歩くと、潮騒がふたりの耳へ届きます。
手をつないで寝子ヶ浜海岸へ下り、さく、さくり。さくさくと白砂を踏みしめながら、ゆっくり、急がず。一歩ずつ。
「珪さん」
「うん?」
「今朝、早起きしてお弁当を作っていたら、ふと思い出したんです」
「うん」
「珪さんにはじめて、
学校以外の場所でお弁当食べてもらった
ときのこと。あのピクニックの……覚えてますか? 珪さん」
「覚えてる。綾辻さんのサンドイッチの美味しさと、青い空の下で波の音を聞きながら……ああ、そうか」
ざざん、さささと寄せては返す波間をやわらかい瞳で見やり、珪は思い出へひたるように目を細めました。
「ちょうどこのあたりだったね」
「はい。あそこの流木の近くで、レジャーシートを広げて。みんなで持ち寄ったお弁当を分け合って」
「うん。楽しかったな……」
珪先生の目がさらに細められます。
「……美味しいって言ってもらえて、すっごく嬉しかったんですよ」
「白猫柄のついたサンドイッチ。やさしくて、ほっとするような味だったな」
そう……珪先生、です。今の彼はまぎれもなく、先生の目をしておりました。
先日の
卒業式
を経て、彼は綾花の先生ではなくなりました。恩師、ではあるでしょう。けれどもう綾花は高校生ではなく、彼と先生・生徒の間柄ではありません。
ゆりかごの中、見守られるばかりの子猫ではもういられません。お気に入りのねこじゃらしはひとまず置いて、大人の世界へ向かって跳ねる時です。
「…………」
もの言わず珪は、白波をじっと見つめます。
彼にとっても、節目でしょう。ともに時を過ごした生徒たちがその手を離れ、巣立ってゆく……思うところもあることでしょう。寂寥にさいなまれるか、あるいは逆に喜びと充足をかみしめるのかもしれません。そのはざまに惑ったり、ふわふわと浮足立ったりするのかも……綾花と同じように。
(……私)
ふと、綾花は歩みを止めました。
「綾辻さん? どうかしたかい」
ちらりと、ちくりと。気づいてしまったので。彼にとってもきっと今は、ゆらぎの時であろうことを。
(私……いいのかな。珪さんだってきっと、いろんな思いがあるはずなのに。珪さんはやさしいから、表には出さないだけなのかも。本当はつらかったり、悩んでたり……するのかも……)
彼と桜道をあるいて少しずつ定まってきた勇気がしおしおと、しぼんでしまうのを感じました。
珪さんの感情だってゆれているはずのこんな時に、伝えるの?
私の……気持ちを?
「私、は……」
「ねえ、綾辻さん」
「えっ」
ふと伏せていた顔を上げると、彼はやっぱり、微笑んでいます。
「少しおなかが減ってしまったな。お弁当、いただけるかい?」
あの時とおなじように、流木のそばにシートを敷きました。白地にたくさんの黒猫がおどる楽しい柄ですけれど、綾花の胸はどこか晴れません。海はこんなにも青くて、空はこんなにも澄んでいるのに。
そんなちょっぴりしょげてしまった綾花の気持ちを、彼はその聡明さで、察したのかもしれません。ランチの準備をする綾花へ、しずかに、しっとりと言いました。
「僕はね、綾辻さん。君に感謝してるんだ。すごくね」
「かんしゃ。ですか?」
意味をつかみそこねてぱちくり、綾花は目を瞬きました。
彼はこくり、うなずいて、
「僕って、ぼんやりして見えるのかな。あまりそうは思われないようだけど、教師っていうのもなかなか大変でね。スケジュールはいつもキツキツのギリギリで、手が空くってことがない。事務仕事と生徒たちとのやりとりで、これでもけっこう疲弊してるんだよ。僕もね」
「そ、そうなんですか? 珪さんはいつも完璧な先生だとばかり」
「はは、そう見えるかい? 嬉しいけど、そうでもないんだよ。僕も疲れるし、弱気にもなるよ。まあ寝子高の生徒たちはみんないい子ばかりだから、そこに救われてもいるけれどね」
それでもやっぱり、教師というのは激務でしょう。生徒に見せる顔はほんの一側面で、みんなのつつがなく充実した学校生活を演出するため、教師たちがどれほど自分を犠牲にし、献身していることか。珪は特に弱みなんてめったに見せず、いつだって目にするのはやさしく頼れるお兄さんの姿ばかりでしたから、彼の言葉は綾花にとってもちょっぴり、意外です。
珪先生は……彼はどこまでも澄んだ瞳で綾花を見つめて、どこか照れくさそうにはにかみながら、
「そんな中で、綾辻さんにはずいぶんと助けてもらったよね」
「私が、ですか? 珪さんの助けに……なっていたんでしょうか?」
「もちろんだよ。図書室の利用者がいっぱいでてんてこまいな時は、てきぱきと仕事をこなしてくれたね。新刊の分類や配置に、特集コーナーの設置なんかにはいつも苦労していたけど、綾辻さんが手伝ってくれるようになってからはすごく楽になった。いっしょに準備をするのは、楽しい時間だった。それに……ははは、寝子島はどうやら不思議なことがあれこれと起こるみたいだけど、そんな時に慌てずどうにかなったのも、綾辻さんのおかげかな」
そう。そうでした。
たとえば
放課後のなにげないひと時
。たとえば学校生活をいろどる
イベントのさなかに
。たとえば、
あんな不思議な現象
であっても……綾花のそばには彼がいて、彼のそばには綾花の姿がありました。
何度彼と、ともに過ごしたでしょう。どれほどの時を、体験を共有してきたことでしょう。思い、重ねてきたのでしょう。
「……
あの本を見つけてくれた
のも、君だった」
彼の弱いところ。そういえば、目にしたことがありました。
雨濡れた姿。道ならぬ恋に迷い、翻弄され、傷ついた過去の記憶を吐露し……力なくくずおれた彼を支えた、あの日。
「だからね」
と、彼は綾花の頭へそっと手を乗せ、静かに真っすぐに見つめて、言いました。
「僕は、感謝しているんだよ。綾辻さん」
そうして気づきました。どこか萎縮してしまった綾花を、きっと元気づけてくれようとしていること。
「私は……珪さんのために、なっていますか」
「もちろんさ。ありがとう、綾辻さん」
あるいは……綾花の胸の内にこもってしまった思いを、ふたたび奮い立たせようとしてくれた?
彼の目はもう、先生のそれではありません。
(いいんですか? 珪さん。いいんですね? 私……)
すう、はあと深呼吸をひとつ。
「お弁当、食べましょっか」
「うん。実はずっと楽しみにしていたんだよ。綾辻さんは料理上手だからね」
彼につられて、綾花ももう一度、笑うことができました。
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担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSSS(600)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年10月12日
参加申し込みの期限
2024年10月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年10月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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