まるで、雪の結晶。初冬の凛とした、けれどまだ少しあたたかい空気に誘われて、たまらず天から降りてきた、小さな小さな雪のひとひら。
青ざめてわたしを見上げたあの子は、雨に打たれて、ひとたまりもなく溶けてしまいそうだった。
──10月。
綾辻 綾花が古書店
『OLD LYNX』を知ってから、しばしの時が流れた頃。
「こんにちは、つるぎさん……あれ?」
「おー綾辻ちゃん。いらっしゃ~いッス」
本日古書オークションはお休みらしく、店内のカウンターには前店長の親父さんがついています。
かたわらの現店長、
馳 つるぎはといいますと、いつもぼさぼさの髪をさらりと整え、ほつれまくったドテラを脱いで秋らしい薄手のコートなど羽織り、足もとには淡いピンクのキャリーバッグ。いかにもこれから出張へ、てな装いです。
「どこか、おでかけですか?」
「あ~。ん~、実はねえ」
なんだかすこうし、言葉に困ったように目を泳がせてから、けげんそうな綾花へ、つるぎは言いました。
「例の本の情報が寄せられてね」
「例の……って! 珪先生の探してる、あの本ですか!?」
「ま、ま。落ちつくッスよ~綾辻ちゃん」
思わず身を乗り出した綾花に、どうどうどう、と両手をかざします。
綾花の属する図書委員会の顧問、司書教諭、彼女が想いを寄せる、
早川 珪先生。
ずうっと前から、探している本があるのだといいます。
ある時彼が、
教えてくれました。
『HALO ~氷解無垢~』。
そんなタイトルの、自費出版のような形でほんの少部数だけ発刊された、稀少な一冊。
ネットの片隅に埋もれていた、ちょっぴりぼやけた表紙画像に記載された著者名は、
新見 冬。
「これがかなり有力な情報でね。本土のとある古書街で、見かけたって人がいて。どの店で、とか細かいとこは覚えてないらしくて、しゃーない、いっちょわたしが直接乗り込んで探してみっかーって……」
そこまで言って、はたとつるぎは止まります。
前のめりな綾花を眺めて、ふむん、とひとつ思案して。
「綾辻ちゃん。いっしょに行くッスか?」
「……えっ?」
「まー泊まりになっちゃうし、お金もかかるし、無理にとは言わないけど。どーする?」
綾花の脳裏に、彼の姿が浮かびます。
いつもの穏やかな笑みも。雨の日に見た、ちょっと困ったような苦笑いも。
知りたい。
力になってあげたい。
共有してあげたい。
──雨にも出かけてみるものだね、こんなに綺麗な景色を見られるだなんて……
自分はきっと、彼を変えてあげられる。
そう信じて。想い募って。
「私は……」
墨谷幽です。
プライベートシナリオにて、ご指名いただきましてありがとうございます(お待たせしました!)
こちらは綾辻 綾花さんと早川 珪先生のエピソードを描くお話となっております。
ガイドやマスコメのイメージは参考までに。自由にお楽しみいただけましたら、幸いです~。
このシナリオの概要
早川 珪先生が探しているという、一冊の本。
それがどうやら、見つかりそう?
寄せられた情報をもとに、古書店『OLD LYNX』の店長馳 つるぎは、現地へ向かうところです。
目的地は本土のとある古書街。
つるぎは電車を乗り継ぎ、街につき次第古書店をめぐり、その日は近くの温泉旅館に一泊。
2日間の日程の中で、できる限り多くの書店をまわるつもりです。
綾辻さんは、つるぎの旅程に付き合い、いっしょに本を探すこともできます。
あるいは寝子島に残り吉報を待ったり、地元の古書店を探すこともできます。
首尾よくお目当ての本が見つかったなら、その内容から、
早川先生の過去や秘密に迫ることができるかもしれません。
それを彼へ伝え、彼の心につかえている何かから、解放してあげることもできる……かも。
<古書街について>
神田神保町のような大古書街ではないものの、そこそこに広く、十軒ほどの古書店が集まっています。
ちょっとレトロな街並み。近くのアーケードには昔ながらの喫茶店や洋食屋さんなどがありますが、
シャッターが下りているお店も多く、若干寂れ気味。
郊外の山のふもとにはひなびた温泉旅館やホテル、小さなキャンプ場などがあります。
<行動について>
本探しはもちろん、何かやりたいことなどがあれば、自由にご指定いただいて構いません。
猫のクロワちゃんとふれ合ったり。地元で早川先生と行動することもできます。
NPCについて
★早川 珪
寝子高司書教諭。本の捜索をつるぎに依頼しています。
雨がちょっぴり苦手ですが、少しずつ、変わりつつあるかもしれません。
★馳 つるぎ
古書店『OLD LYNX』の店長。早川先生の学生時代の後輩。
あれこれ手を尽くして、今回の情報にたどりつきました。
その他、もし必要でしたら、上記以外のNPCも登場可能です。
登録済みのキャラクターなら誰でも、または墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、
登録・未登録問わず登場OKです。
以上になります。
それでは、アクションをお待ちしております~!