アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～｜リアクション

アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～

「よっしゃぁー！　みんなといっしょに頑張るでー！　頑張って運ぶでー！」
　大きなグリフォンの縫いぐるみ・西野町かなえは、張り切って空を行く。
　普段は華奢な彼女の体には、ロボプラモの東中居陽二と、浮舟久雨が騎乗している。
　さらにその久雨のコクピットに、極小サイズのフィギュアとなった畑生言嗣が鎮座している。
　これは言嗣の＜【右向け右】(オールライト)＞による操作で、久雨の身体機能アップを図っての事だが、発動条件が相手からの信頼が絶対条件で――
「……あぁ！　私が久雨君の中に、ナカに！　ナカにいるよ！　これは素晴らしいね！？」
　――何て、憚らずに言っちゃう言嗣くんを、久雨が受け止めていなければならない。
「言嗣、何に感極まったのかは知らんが、妙な声を出すな！」
「うむ、私は冷静そのものだね。しかし、気分はパイロット、と言ったところか。
　プラモと言えど、久雨君の体だ。なるべく傷つけぬようにせねば……」
　微妙に噛み合わない台詞と共に、背筋を正す言嗣。

　隣で聞いている陽二は、どこかいたたまれない気分で、ビームサーベルっぽい剣の２刀流で、周囲のカラスを追い散らす。
「西野町、俺は昇り坂がはじまる前の地点で下ろしてくれ」
「うん、任しとき！」

　第一陣を運び終えたかなえは、続いて扇を手にした尾山人形（日本人形）のエヴァ・ブランシェ、麺棒剣とナルト盾を構えたラーメン店『猫島軒』の看板娘・畑中華菜子、かわいらしい玩具の兵隊フィギュアとなった寝具屋「ふとんのひぐらし」の息子・日暮ねむる、そして……。

「何故か変な姿になってたデス……小型のトーテムポールか何かデスか？
　良く分からないけど、クラスメイトの皆と協力して事件解決デスね！
　正義のサイボーグの力、寝子島の新しいフレンドの為に使うデス！」
　ノリノリのこけしのマリナ・Ｍ・マディソン、そして彼女を抱えた、カラーリングやスタイルが個性的な青年フィギュアの如月庚、総勢５名を運ぶ。
「お、重いけど、頑張ってはこぶ……でー！」

　ひらりひらりと、手首を返しながら＜タービュランス＞でエヴァは、カラスを迎撃する。
「いい？　防御が固い人が先頭で、他三人はその後ろに横並び、そして運搬者が一番後ろよ。
　コレで守りは完璧。名付けてインペリア……」
　エヴァがドヤ顔で言い切る前に、華菜子が割って入る。
「マリナちゃん、いい？
　私たちはラーメンクロスという、中国四千年の由緒正しき陣形で戦うアル。
　私が囮でカラスを惹きつけて、皆でカラスを妨害したりするアル。
　マリナちゃんは目的地に着くまで、後衛で待機アル。
　マリナちゃんのポジションが、一番重要アル。
　マリナちゃんの事は皆で守るから、安心してネ♪」

「「…………」」

「一年四組インペリアルクロスで進撃、だな」
　やれやれだぜ、と庚は前髪を払い、そして自ら額に傷を入れる。
「これでいつでも、ろっこんを発動出来るぜ。クソッタレが、借りは返してやる！」