プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！｜リアクション

プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！

　なんかいつの間にか島中がモルモット化してしまったその日――。

　声優の卵の落合まゆらは、特徴的な高温の鳴き声の多重奏で目が覚めた。
「うるさいなぁ……今、何時だと思ってるの？　ふあぁ……！」
　欠伸混じりに背伸びをして、部屋のカーテンを開け放った。
　するとそこには……島中モルモットであふれていた。それも人間サイズの。
「でっか！　なにあれ、モルモット？　着ぐるみ……じゃないわね。どういう事？」
　訝しがるまゆらは、自身の手に違和感を覚えた。
　それは人間の手とは似つかぬ形状をしていた。
「なんであたしまでモルモットになってるわけ!?」
　すぐに姿見鏡の前へ駆け寄れば、まゆらは“シェルティ”と呼ばれる長毛種のモルモットになっていた。髪色は人間の時の頃と同じ栗毛をベースに、所々に白毛が混じっている愛らしい姿だ。
「わぁ、あたしってばモッフモフでカワイイ～！　って、じゃなくて！　どう考えても、これって神魂の仕業だよね……伊達にあたしも寝子島、もとい寝豆島の民をやってる訳じゃないから直感で理解できちゃうけど、う～ん、引っ越し前にすごいのに巻き込まれちゃったなあ」
　もうすぐ、まゆらは自身の夢の実現のために島を離れて東京へ引っ越す予定だ。
　しかし、このままモルモット化が続けば夢の実現どころではない。
「てか、やばいじゃん！　このままあたしはずっとモルモットのまま!?　いや、だってあたし、駆け出しとはいえ大手の声優事務所への所属が決まってんのよ？　これから大事な時期なのに！」
　頭を抱えるまゆら、だったが、すぐに彼女は溜息と共に諦めてみせた。
「……いやまあ、今までの傾向からいえば、せいぜい１日でこの現象が収まるのは判ってるけどね……はぁ」
　とはいえ、座してこの状況を静観するのも癪である。
　ちょうどその時、ぼんやりと『毛玉を集めろ』という思考がまゆらの脳裏に浮かび上がる。
　テオの思考がなんやかんやで彼女に流れ込んできたのだ。
「毛玉、ねぇ……まぁ、一応覚えておくわ」
　とりあえず、街の様子がどうなっているのかを確認せねば。
「……外出するにも、服はどうするのよこれ？　外の人、ほぼ体毛で隠れているとはいえ全裸で歩いていたけど……？」
　さすがに新人声優の卵がモルモット化でも全裸で闊歩するなんて事務所NGに決まっている。
　まゆらは早速、モフモフの身体にノースリーブの白シャツとキャミソールワンピースを合わせ、長い毛をツインテールにまとめ、スニーカーを履いて家を飛び出していった。

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