プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！｜リアクション

プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！

　マリエッタ・ラシュリエは変わり果てた街の中で、数少ない『人間』のままの姿を保っていた。
「あらあら、島がモルモットだらけになっちゃったね。それで島の名前が「寝豆島」に改名しちゃったのか……。寝子島大橋を私が運転する車で渡っていたけれど、途中で車はモルモット自動車に代わってびっくりしたわ」
　どうやら愛車がモルモットカーになったことでマリエッタ自身への影響を免れたようだ。
　島の中までモルモットカーをプイプイと走らせると、ありとあらゆるものがプイプイ鳴いて大騒ぎ！
「まあ、なんだか賑やかね。で、モルモットだらけのこの島で、なぜか私は人間のままなのよね。他にも人のままっていう人もいるけど、圧倒的少数派みたいだし。とはいえ、人間サイズの巨大なモルモットとは言え、やはりプイプイ言ってちょこまか動いたりしているのはやっぱりかわいいね」
　マリエッタはこの状況を悲観せず、むしろ楽しんでいた。むしろ、周りがモフモフな動物に変わって癒されている。
「ああ、そういえば、多分これは神魂の仕業だと思うし、実際、テオがそんなことを言って『ネコモウボール』を７つ集めろって言ってきたけど……まあ、どうにかなるでしょ。今までもそうだったし」
　まさかの事態の丸投げを決め込んだマリエッタは、その後も寝子電ならぬ寝豆電のモルモット電車に乗り込んで島中を観光し始めた。
「車体もモフモフなのね。あと座席もフニフニしてて温かいわ。脈も感じるのは、この電車が生きている証拠なのかしら？」
　どういう原理で動いているのだろうと、子供みたいなワクワクが胸多くから湧き上がってくる。
　知っているのに、知らないことばかりが目の前に広がっている。
　マリエッタにとって、この日は異変に少しだけ感謝するほどに癒されまくっていくのだった。
「あらまあ、シーサイドタウンのいつも行っていたカフェ、なぜかサラダバーショップになってるわ。せっかくだから、サラダバーを体験してみるわね」
　郷に従えばナントヤラ、人間のマリエッタがサラダバーを訪れると、店員のモルモットが物珍しそうにテラス席へ案内してくれた。
「おすすめはニンジンスティックなのね。注文したらすぐに出てきたわ。あらかじめカットしてあるのを盛り付けるだけだものね」
　それをそのままかじると、なんだか自分もモルモットになった感じがする。プイプイと試しに鳴いてみるけれど、周囲のモルモットのように高音できれいに鳴けなくて。
　マリエッタはおかしな日常にひとり、くすくすと笑いが込み上げてくるのだった。
　その後、マリエッタはモルモットカーで海岸線をドライブ。
　途中で降車して、シーサイドタウンの船着き場で遊ぶモルモットの子供達を眺めて、ついつい微笑んでしまう。
「可愛いなぁ。……あれ？　ヨットの船首の先に何かが刺さってる……？」
　みれば、サッカーボール大の三毛の毛玉が、停泊していたヨットの船首にこれ見よがしに突き刺さっていた。

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