プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！｜リアクション

プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！

　こうして、寝子高屋上に７つの巨大な猫毛玉が集結した。
　ずぶ濡れになった想花はあの後、四つ脚走法で素早く走り回れることに気付くと、島中を駆け巡って毛玉の捜索に尽力していた。
「……まさか、星ヶ丘ホースクラブの馬と競争して勝たないと毛玉がもらえないだなんて」
　毛玉はクエスト報酬になっている最難関コースも存在したらしいが、無事に想花は４馬身差で最終直線をぶっちぎり勝利した。
　他にも三毛谷の３つの毛玉、マリエッタの１つの毛玉、そしてまゆらの持参した毛玉で計７つ。
「あたしはただ、和菓子屋さんに行くとニンジン羊羹を美味しく食べた後、モルモット電車に乗ってあちこち散歩してただけなんだけど……」
　まゆらは途中でテオに出くわし、毛玉の事を聞かれてようやく捜索に当たったらしい。
　とはいえ、見付からずに帰ろうとして乗り込んだ電車の座席に、まん丸くデカい猫の毛玉が鎮座しているのを見て変な声が出てしまった訳だが。
「やっぱモルモットだからか、猫の毛を他の皆は避けて他っぽい？　誰も触ろうとしなかったんだよね」
　かくして、どうにか７つ集まった毛玉を前に、テオは厳かに自分のケツの穴を向けて叫んだ。
「よくやった。あとは俺が元の世界に戻すだけだ。はんにゃまむんにょらぴくちぽるー！」
　謎の呪文を唱えたテオの身体が、猫毛玉を取り込んで巨大化してゆく！！

「いくぜ……この世界を『切り取る』！」

　巨大テオが世界に猫パンチをした瞬間、モルモットだらけの世界は理（ことわり）の外へと切り離されたのだった。

　◆　◆　◆

　――後日。
　寝子高屋上は今日も青空が広がっている。
　そこに佇む５人と猫一匹は、元の世界へ帰ってこれたことに安堵した。
「よかったぁ……これで声優の夢を叶えられる！」
　まゆらは日常のありがたさを再度噛みしめる。
「データは保管済みね。次の異変でも調査できるといいのだけど」
「ははは……熱心だねぇ」
　神野の言葉に、苦笑いする三毛谷。そのまま彼は猫に化けてすたこらと退散していった。
「もう少し癒されたかったかも、なんてね？」
　モッフモフの感触が忘れられないマリエッタは、たまらずテオを抱き締めようとして猫パンチを浴びせられていた。
　そして今回、一番頑張っていた想花は、ただただぐったりしていた。
「疲れた……でも、なんか少しだけ、ビビりは解消された、かな」
　思っていた以上に自分の行動力を思い知った想花に、僅かに自信が芽吹いていた……。

＜了＞

このページにイラストを設定する