プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！｜リアクション

プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！

　神野美野梨もまた、この異変に巻き込まれてモルモット化していた。
　彼女は“アビシニアン”と呼ばれる中毛種で、黒い巻き毛が特徴である。
　そんな神野はこの異変を独自に調査していた。
「神魂の影響とはいえ人語を話す巨大モルモットなんて、興味津々な研究対象ね」
　普段の赤フレームの眼鏡を中指でくいっと上げた後、神野は白衣一枚を着込んで街へ繰り出す。
「人語を理解できるほどに発達したモルモットの脳機能……どんな原理なのかしら？　二足歩行可能になった運動機能ももちろんだけれども、やはりそういったものを全て司る脳機能の解明が一番興味深いわね」
　神野はこの現象にかこつけて、モルモット人間の生態を調査解明しようと考えていた。
「それじゃ、実験に協力してくれる“モルモット”さんを探しに出発よ」
　マッドサイエンティスト神野、ここに爆誕した瞬間であった……！

　三毛谷道哉は“あやかし”……いわゆる猫又と呼ばれる妖怪の類である。
　なので、朝起きたらそこかしこにネズミ、ネズミ、ネズミだらけ！
「おやおやおや。ここは食べ放題の極楽かい？」
　思わず化け猫の性分が溢れ返る。
　これだけいるんだ、１匹くらい取って喰ったって構いやしないだろうと三毛谷は食指を伸ばしてみた。
「そこのお嬢ちゃん、ちょっといいかな？　嗚呼、一目ぼれなんだ、私に食べられてみる気はないかい」
　白衣を着た赤眼鏡の黒毛モルモットの女性へ声をかけた三毛谷。
　ずいと前に出ると、よだれを拭って囁きかける。
「丸っこくて騒がしくも美味しそうなネズミだねぇ……１匹ぐらい味見してもいいかい。ふくよかな腹が理想だが耳を齧るだけでもいいんだ。ぷにぷに丸々で栄養満点なんだろう、なあ」
「な、なにかしら、この三毛のモルモットさん……？　ナンパならお断りよ」
　白衣のモルモットの女性に拒絶された三毛谷は、それ以前に自分へ投げ掛けられた言葉に首を傾げた。
「何を言っているんだい。私は猫又、鼠を食べる猫なんだ。それを私が鼠だというのはおかしくないかい……ってなってるーぅ!!」
　三毛谷は自分の身体が完全に三毛モルモットの姿になっている事を、街灯のカーブミラーに映った自分の姿で思い知った。
「おやおや、これは参った。私も真ん丸ぼでぃかい。多分さらだは美味いし、ぷいぷい言わすのも悪くないが。こいつは猫のあいでぃんてぃてぃに関わるねぇ……おっと、人型にも化けられないときたか……」
　どうやら変化の術も使用できないようで、三毛谷はしばし考え込んでしまう。
「仕方がない。あの猫の言葉通り、少しばかりさらだで腹ごしらえしたら猫毛ぼーるを探してみるか。私はね、真ん丸より“しゅっ”としたぼでぃが好きなんだ。そのほうが美しいだろう？」
　邪魔して悪かった、と白衣のモルモット女性へ手を振って退散しようとした三毛谷の手を、彼女はガシッと掴んだ。
「気が変わったわ。ナンパに付き合ってあげます。うちに寄っていってください。美味しいサラダをご馳走しますから」
「これは驚きだ。お嬢ちゃん、なかなか積極的じゃないかい」
「ええ、あなたに興味が湧いてきましたので……色々と“調べさせて”くださいね」
　ニタリと微笑む黒毛モルモットの女性……その名は神野美野梨！
　腹が減っていた三毛谷をサラダで誘き寄せると、自身の研究室へ連れ込んで実験を開始したのだった。
「ちょっと待っておくれ！　いきなり私を拘束して何をする気なんだい？　って注射!?　なあ、やめ、ああああーッ!!」
　南無三、三毛谷……！　君の尊い犠牲は忘れない……！（※死んでません）

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