プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！｜リアクション

プイプイ☆モルかみ！寝豆（ねず）島へようこそ！

　月原想花は島の異変に気付くと同時に、自分自身もモルモットになっている事に気付いて動揺していた。
「これがぼくの妄想の産物でないのならば、確認しなくては。まず、ぼくはなぜかモルモットになっていた。そしてぼくだけでなく、島中の人たちがモルモットになっていて、おまけにあちらこちらでモルモットバスとかモルモット電車とかが走ってたり、しまいには建物だってモルモットの形になっていた。いや神魂の仕業なのはわかる、分かるけど。生物はまだしも無機物がモルモット化は本気でどうしてそうなったんだ……？」
　窓から見える景色がプイプイうるさいのでツッコミが追い付かない想花は、次第にこの状況に適応するべく努力を注ぐべきだと判断した。
「はぁ……さすがに寝子島に１年も住んでいれば多少なりとも耐性がついて……ないか、あんまり。基本、ヘタレでビビりだけど、それでもパニクらなくなっただけマシかな？」
　自己評価の低い想花にしては自分を客観視して肯定してみせる余裕はまだあるようだ。
　それもそのはず、テオの言葉が彼女の脳裏に浮かび上がり、希望を照らし続けているからだ。
「それはともかく、テオによると『ネコモウボール』を７つ集めたら元の寝子島に戻るらしい。だったらぼくがやるべきことは、その毛玉を集めて寝子高の屋上へ持っていくことだ」
　ひとまず想花は寝子高へ赴いた。ここが最終ゴール地点……７つの『ネコモウボール』が集いし終着点だからだ。
「確認しに来てみたはいいが……これはひどい……」
　グラウンドでは陸上部のモルモットがプイプイ言いながらラットレースしていた。
　他にも中に乗り込んで走る、ハムスターのアレをトレーニング器具として利用していたり、車自体がハムスターになって学校の外周をマラソンしていたりと自由過ぎるカオスが広がっているのだ。
「思っていた以上に事態は悪化しているな……」
　一刻も早く毛玉を見付けなければ、と意気込んだ矢先の事だった。
「こらー！　誰だ、プールにボールを投げ込んだのはー！」
　用務員さんの怒鳴り声が校舎の一角から響く。
　急いで想花が駆け付けると、冬場のプールに水がなみなみと張られている上に、そのど真ん中にサッカーボール大の毛玉がぷかぷかと浮いているではないか。
「あ、キミ！　もしかしてあのボールの持ち主かい？　駄目じゃないか、無断で水を張った上にボール遊びなんかしちゃ！」
「あ、い、いえ……ぼくはあなたの叫びを聞いて、何かあったのかなって駆け付けただけで……」
　いきなり怒鳴られた想花はびくびくしながら反論する。
　すると用務員のモルモットは申し訳なさそうに頭を下げて詫びてくれた。
「それはすまなかった！　けど、だれが冬場にプールへこんなにも水を張ったのやら？　ひどい悪戯だよね。ああ、悪いけど、ちょっとここを見ててくれないかい？　私はあのボールを取るためにタモを持ってくるよ」
　そういうと用務員はすたすたとプールから立ち去ってしまった。
　想花は考えた。
「タモを持ってきてくれればネコモウボールは容易に回収できる。けど、それをぼくが欲しがっても、果たして用務員さんは素直に応じてくれるだろうか？　拾得物だからとかで警察に届けるかもしれないし、不用品だからといって処分されかねない。だとすると……うう、この冬場に冷たい水の中に入るってなんだか嫌だな。それにぼく、あんまり泳げないし」
　悩んだ挙句、想花はプールへ飛び込んで必死にバチャバチャ暴れながらも毛玉をゲット！
　帰りは毛玉の浮力に助けられながらプールサイドまで戻ってこれた。
「ず、ずぶ濡れだ……くしゅん！　寒い……！　どっかで身体を乾かさなきゃだ……」
　用務員が戻ってくる前にプールから立ち去った想花は、一度、自寮である猫鳴館の自室へ戻っていったのだった。

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