ひねもすのたり、雲の切れ間に｜リアクション

ひねもすのたり、雲の切れ間に

～やがて死に至る病・発症編～

「おーい刀君、お待たせー」
「ん、いやそんなに待ってないよ」
　休日、シーサイドタウン駅前のロータリーで携帯電話をいじっていた御剣刀は、橘千歳の声に目を上げた。パンツスタイルでさっぱりとした格好の千歳が、刀に向かって手を振った。
「ごめんねー、汗流してたらちょっと遅くなっちゃった」
　刀と千歳が毎朝の日課としている寝子島神社境内で剣道の練習を行ってからの待ち合わせだ。流石にそのままの状態でやってくるわけにはいかなかった。
　とはいえ千歳が遅くなった原因はむしろ服装選びにあったのだが。
「ああ、女子はそういうの気にするもんな。俺は烏の行水だったけど」
　しかしそんなことはまるでおくびにも出さない。
「今更なんだけど、本当に付き合ってもらって良かった？　何か予定とかあったんじゃないの？」
「大丈夫だって。千歳は心配性だな」
　２人が向かおうとしているのは、シーサイドアウトレット内のスポーツ用品店だった。どうやら今日は割引セールを行っているという情報を聞きつけた千歳が、部活で使用する小物や自分の竹刀袋などを買うのに付き合ってくれないかと今朝方刀に尋ねたのだ。彼の方も、特にこれといって予定も無く、部活で使用するものであればということで快諾し、今に至る。
「それじゃあ行くか。アウトレットで良かったよな？」
　そうして二人は歩き始めた。