グルメな風が、ふわふわほわわ～ん☆｜リアクション

グルメな風が、ふわふわほわわ～ん☆

　夏！　八月！　青い海！
　夏の日差しは燦々と降り注ぎ、煌めく水面は一面の青い宝石のよう。

「みみみみーーーん」

　寝子ヶ浜海岸は海水浴客でごった返していた。
　こんな暑い夏の午後は、冷たいものが欲しくなるというものだ。
　かき氷やソフトクリームの旗は涼やかで、ゆらゆら揺れて人々を手招いている。
　誘われて、ほら――。

「とってもとっても甘くて美味しいねぇ～」

　抹茶とバニラのミックスソフトをぺろりと舐めて、曖浜瑠樹はうっとり目を細める。
　波打ち際でパシャパシャ、浮き輪遊びを楽しんだ後のソフトクリームは最高だ。
「太陽の下で食べるソフトクリームってどうしてこんなにおいしいんだろう～」
「キミのも美味しそうなのねー。お隣、座ってもいいかなぁ？」
　にっこり微笑むのは、かき氷を手にやってきた狗民きとりだ。
　瑠樹はにこにこ、きとりに答える。
「そっちのかき氷も美味しそうだねぇ」
「でしょでしょ！　爽やかレモン味だよー！」
　きとりは機嫌よく、ぱくぱくぱくっと一気に三口、口に入れて。
「はわわ～～！　キーーーーーンと来た～～！」
　と、本体さんと呼んでいる頭の上の垂れ耳わんこを両手で抑える。
「わあ、可愛いねえ。お名前は？」
「本体さんのこと？　いぬみん星のいぬみんだよー」
「いぬみんさん、こんにちわぁ」
　瑠樹がいぬみんをなでなでする。
　すると瑠樹のろっこん『ゆるゆる和みと恩恵の輪』が発動して、ほわほわ幸せな気分が伝播していく。

　早川珪と綾辻綾花は、日陰になった屋根の下で涼んでいた。
　綾花はマンゴーを添えたブルーハワイのかき氷を、珪はアイスコーヒーを注文していた。
　綾花はぺろりと舌を出して聞く。

「珪先生、どうですか？　私の舌、青くなってます？」

「うん、青くなってる」

「やっぱり。こうなるって分かってても、食べちゃうんですよね、ブルーハワイ」
「わかるな。舌がいろんな色になっちゃうのも夏の風物詩で楽しいっていうか」
「そうなんです」
　ふふ、くすくす、と珪と綾花は顔を見合わせて笑いあう。
　気分転換に、と綾花は端に乗っていたマンゴーを掬って氷と一緒にぱくり。
「ん。冷たいマンゴーが口の中で蕩けて美味しいです」
「美味しそうだね」
「珪先生も食べます？」
　綾花は無意識にマンゴーを掬ったスプーンを珪の口元に差し出す。
　珪先生はそれをぱくりと食べて。
「……あ。つい」
「私もつい……。あーん、してしまいましたね」
　ええと、と、綾花はどうしていいかわからなって俯く。
　珪先生はさりげなく微笑む。
「冷たくて、美味しいね」
「良かったです……」
　ほっぺたが熱いのはきっと、日に焼けたせいだ。

（『メロンソーダ』……星幽塔にはない飲み物だな）
　ティオレ・ユリウェイスは、ストローでグリーンの甘い液体を啜って、ふむ……とひとりごちる。
　腹部の薔薇の入れ墨がセクシーなティオレは、星幽塔で盗賊、ときどき、踊り子をしている。
　星幽塔民のティオレにとって、メロンソーダは見たことがない不思議な飲み物だった。
「甘くて緑でシュワシュワするジュースの上に冷たいバニラアイスが乗っているとは……この組み合わせを見つけた者は天才か！」
　衝撃を受けているティオレさんである。

　一方こちら、メリィ・ランページとリリエル・エーテライトも星幽塔からのお客さんだ。

「うみのいえー！　かきごおりー！　行くよリリエル！」
「はい！　冷たいの、食べちゃいましょうメリィちゃん！」

　楽しいことはめいっぱい満喫がモットーの二人は、海遊びを大いに楽しんだあと、海の家に到着。
　リリエルはイチゴ乗せイチゴ味のかき氷、メリィはメロン味のかき氷に舌鼓を打つ。
「美味しいですねーメリィちゃん」
「うんっ！」
　メリィはばくばくばくっとかき氷を一気に掻き込む。
「あっ、メリィちゃん、そんなにいっぺんに食べたら……」
　リリエルが止めたがもう遅い。
「～～～～～～～～っ」
　頭を抱えてテーブルに突っ伏し、悶絶するメリィ。
「……頭痛くなりますよーって、間に合わなかったですね」
「早く言ってー」
「よしよし。すぐよくなりますからね」
　リリエルがメリィの頭をなでなですると、メリィは本当にすぐに復活して、がばっと起きた。
「よしっ、治った！　もう一杯！」
「メリィちゃんたら……次は気を付けてくださいよ？」
「分かってるって！　おばちゃーん、リリエルとおんなじイチゴ味ひとつー！」

　あいよ、とおばちゃんの声がして、がりがり氷を削る音が続く。
　真夏の海の家は、まだまだ繁盛しそうだ。