グルメな風が、ふわふわほわわ～ん☆｜リアクション

グルメな風が、ふわふわほわわ～ん☆

　さむ～いお正月の真っ只中、炬燵に入って足元を温める６人の姿とこたつテーブルに並べられたお餅料理の各種。
　磯辺焼き、お汁粉、安倍川餅に、こっそり佇む鏡餅。
　この時期でしか見られない楽しい光景が広がっていた。

◆
「あ、修くん、小豆がほっぺに付いてるよ」
「んえっ、どこ、どこ？」

　七夜あおいはお汁粉を食べている八神修のほっぺに、小豆のかけらがくっついていることに気がついた。
　思わず自分のほっぺを触って確認するも、修はどこに小豆がくっついているのかわからない。
　なので、あおいがそっとハンカチで修のほっぺを拭う。

　ほんの少しだけ顔が赤くなる両者。
　まだ友達の段階で恋人というわけではないけれど、それでも２人はお互いを気にかけている。

「はい、これで大丈夫。喉、詰まらせないでね？」
「あ、ああ、うん。ありがとう、ゆっくり食べていくよ」

　修は大好きな人にほっぺを拭われて、ちょっぴり恥ずかしくなった。
　あおいと一緒にいるというだけでも心がワクワクとドキドキに包まれているのに、それっぽいやり取りをしたからか恥ずかしさも心の奥からこみ上げてきて。
　お礼をいうときも少しだけ声が上ずったんじゃないか、と感じてしまうほど。

　でも、そろそろこの感情も慣れなきゃいけない。
　いつまでも去年のままではいられないのだ。

◆
「今年のお餅はよく伸びますね」

　のび～っとお汁粉のお餅を食べている愛猫萌々子。
　つきたてのお餅をお汁粉に入れているため、熱でとろけたお餅が萌々子の口と箸の間でよく伸びてくれた。

　だがそののびのびお餅を狙うは、万条幸次と一緒にいる猫の花遊。
　それが玩具のようにも見えたのだろう、前脚でちょっと遊んでみたいとてしてし、てしてし。

「わ、わっ。花遊、ダメだよぉ」
「んにゃ」
「お餅は危ないから駄目ですよ。花遊さんにはあとでおやつをあげますから、ここは我慢してください」
「にゃ……」

　しょんぼりとした様子の花遊を抱きしめて、幸次はゆるゆると撫でてあげる。
　今日はおもちがいっぱいあるから、花遊がいたずらしないようにと面倒を見てあげていた。

「それにしてもよく伸びるねぇ、そのお餅……」

　幸次の驚きも無理はない。
　萌々子の口に入れられたお餅は何度も何度も、のび～っと伸びる。
　ちゃんと小さく噛んでから飲み込まないと、喉につまらせてしまいそうだ。

「そうなったら、助けてくれるんですよね？」
「もちろんだよぉ」
「にゃー」

　大切な人を守らない人はここにはいないからね、と。
　小さく幸次は呟く。

◆
「いやぁ～、いいねぇこの現場。この雰囲気」
「この場に私達がいると、また違いますよね」

　響タルトとマーガレット・ライカーの２人はそんな４人を眺めて、楽しげにしていた。
　お餅が振る舞われると聞いて駆けつけたのだが、たった今カップルの良いやり取りを眺めることが出来ていて眼福。
　磯辺焼きを小さくちぎって食べつつも、カップルたちのやり取りを静かに眺める。それだけで良いのだ。

　しかしタルトはここで気づいた。
　これだけカップルがいるということは、自分達もそれっぽい雰囲気を作れるのではないか……と。

「マガレちゃん、僕たちもこうしているとそれっぽくならないかな？」
「それっぽく、とは？」
「ほら、こうやってお餅を食べさせ合ったり、秘密の会話をしたり……ねっ？」
「ああ、確かに……！」