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しずくがこぼれおちるとき<黒>
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──21:32、積み家・アパート 西階段周辺~記憶だまり
最後に滴の姿を見たのは、いつだったろう。
そうだ。不意に抑えきれず唇を重ねてしまった、
あの時
の……。
「死んじゃったなんて……ウソだ」
月原 想花
はぎり、と歯を食いしばる。固く冷たい床へくずおれてしまわぬように。
この積み家へ踏み込む直前に見た滴の姿が、本物であろうが幽霊の類であろうが、想花のすべきことは変わらない。探し求め、取り戻す。それのみだ。
そのために、心を折ってはならない。進み続けなければ。足を止めてはならない、歩み続けねば。
「ひどいところだな」
滝原 レオン
は複雑な思いを乗せた声色でつぶやいた。
積まれている家々の中でも、ここら一帯は一際に荒れている。どうやら築数十年は経っているだろう、古アパートだ。汚れ切った外壁はそこかしこで剥がれ落ちているし、窓ガラスもいくつか割れている。簡素な鉄製の外階段や廊下は、踏みしめるたび蛙の断末魔めいた軋みをあげた。各戸の扉や壁もひどいもので、落書きだらけの錆びだらけ。郵便受けに幾日分も突っ込まれた新聞が溜まっているところもあった。
「……まだ母さんのところにいた頃。住んでたのも、こんなアパートだったな……」
レオンの脳裏に蘇る記憶は決して、美しくも無ければあたたかくもない。思いだしたくもないが、否応なく浮かび上がってくる。
『うまなきゃよかった』。
そう言われた。何度も。レオンの心へ刻み入れるかのように、痛みとともに。殴打や煙草の痕もいくつも残ったが、一番応えたのは煮えた湯を浴びせられることだった。
母は加虐の限りを尽くした末、レオンを寝子島へ置き去りにしてどこかへ消えた。
「うまなきゃよかった」
「……!?」
フラッシュバックする映像が、目の前の光景へフィルムのように重なり合う。
包丁を握りしめた中年の女の姿は一瞬、レオンを忘れたい過去へ引きずりこみかけたが。
「こっちへ!」
「あ……ああ!」
想花が小さく鋭く呼ぶほうへ、反射的に駆けだす。女も電気を流されたかのような異様な仕草と速度で走り出す。
外階段はアパートの外周を螺旋を描いて巡っており、二人は追いすがる怪異を注視しながらも駆け上る。個室のドアはどれも鍵がかかっており、逃げ込めるような場所は見当たらない。
が、
「あそこだ! あの部屋だけ開いてる!」
階段を二段飛ばしで上がり、蝶番が歪んで開きっぱなしになっているドアへ飛びこむ。
といって助かったわけでもない、むしろ自ら袋小路へ入ってしまっただろうか? 何か武器や迎え撃つための状況などがあればと思ってのことだったが。
「あれ?」
想花が呆けたような声を発した。
女は部屋の中の二人をしばし憎々しげに睨みつけた後、
「あんたなんか」
呪詛のようにひとつつぶやき、どこかへ去った。
「た、助かった……のか?」
「そうみたい。です、とりあえず」
今さらながら気づくが、室内は暗い。二人はスマートフォンの明かりを頼りに、周囲を探る。
ことごとく閉じられた扉が連なる中で、この部屋だけが開いていたことが気になった。あの女がここへ入りたがらず、背を向けた理由も。
「もしかして、ここが当たりか?」
「っ、滴さんについて、何かわかるかも……!」
慌てた拍子に机の上の空コップをひっくり返し、飛び跳ねた想花へくすりと笑いかけ、レオンも取っ手の外れたタンスの開け方を模索する。
どこもかしこも、ひどい散らかりようだ。びっしりと文字の書かれた書類がいくつも出てきたが、いずれもおそらく金銭トラブルにまつわるものだろう。家具も食器類も仕舞い方は乱雑で法則性は見いだせず、そもそも棚に収まることなく散らばっているのも目に付く。掃除などいつからしていないのだろう、床も壁も天井も黒ずんで、窓にはこぶし大の穴が開いて隙間風が入り込む。
「……ここで……」
「ん? 何か見つけたか?」
想花の震える声に振りかえり、レオンはその手元を覗き込む。
スケッチブックの1ページだろうか。破れて丸められていたものを想花が広げると、そこには黒猫をモチーフにした、いわゆるストリートグラフィティのようなデザイン画が描かれていた。
「ここで、滴さんは……暮らしてたんだ」
見間違えようもなかった。それは紛れもなく、滴の描いたものだ。想花には一目で分かった。
瞬間。眼前に青い幻像が現れ、彼女の記憶の再生を始めた。
──新しいパパができるって聞いて、素直に嬉しいと思えなかった私は、親不孝者かなあ。
でもね、いつも怒鳴ってばかりのママが幸せそうに、デレデレの顔で笑ってるのは、ちょっとイイなって思った。
少しは報われたっていいもんねえ。
「……滴さん」
幻像は、おそらくは中学生の頃の滴だった。セーラー服が目新しくまぶしい。
想花は目を細める。滴が母と呼ぶのは、先ほど襲いかかってきたあの女だ。恐ろしい形相で包丁を振り回した女が相好を崩し、みっともないほどに浮ついている。それを眺める滴の心の内が伝わり、母の再婚を好ましく感じているのが分かる。
しかしながら、滴の内面は実に複雑だ。母の幸福を願う気持ちに嘘偽りないのと同時に、疎ましく忌避する感情もまた同居している。
なぜ?
理由はすぐに分かった。
ま、ママはいいとして。
私はあんまり、変わんないかなあ。
『ほらっ滴、なにむすっとしてるの! 新しいパパにご挨拶は? いつもみたいに明るく、礼儀正しくね』
『……コンニチハぁ~』
『ちょっと、何なのその態度!? ご、ご、ごめんなさい。あの、この子ちょっと、緊張してるみたいで。いつもはもっと、いい子なのよ? 本当に』
『ははは、いいんだよ。親の再婚なんて、子どもにとっては一大事だ。それに、もうすぐ高校生になるんだろう? 難しい時期だ。無理もないさ。な、滴ちゃん』
ほ~ら、この目だ。まったく、ツイてない。
ママってほんと、人を見る目がないからさぁ。
『ゆっくりと、少しずつ家族になっていこう。そしていつかは僕のことも、パパって呼んでくれたら嬉しいよ』
『はぁ~い。気が向いたら、そのうちねえ』
『ははは! ああ、それでいいとも』
ほんとのパパはギャンブル中毒で借金こさえて蒸発、二人目のパパはロリコンかあ。
でも、そうだねえ。このねちっこい目に私が耐えてれば、ママは幸せになれる。私のことなんて忘れて、新しいパパとよろしくやって、私の弟か妹でも作ってさ。みんなで仲良くやってさ。たま~になら、私も混じってはしゃいだっていい。そんなのもいいかもしれない。
私は、そう思う。
『ふふ、素敵なヘアスタイルだね。華奢で、汚れていない、無垢な……ああ、夢みたいだよ。こんなに可愛いコが、僕の娘になるなんてね。ふ、ふふふ……』
あっはっは。
ちょ~っと自信は、無いけどねえ。
想花だけではない。レオンもまた彼女の境遇を目の当たりにして、歯噛みした。
「ちょっと気持ち、分かるぜ」
些末な違いはあれど、歪な幼少期を送ったことに変わりはない。愛されるべき親からの仕打ちに泣き、終わらない苦痛に喚き、絶望しただろう。痛いほどに理解できた。
「ぼく……知らなかったよ。滴さん」
滴のルーツを、人となりを形作った何らかの要因を、想花は少しばかり理解しているつもりでいた。彼女は死を描いた絵画や、それを連想させるような、多くは陰鬱とした作品に惹かれてやまないと
語った
が、なぜ、とは尋ねなかった。彼女の描き出す枯れてゆくような死、時に壮絶な死を目の当たりにして、彼女を分かった気になっていた。
けれど、知らなかった。滴は深淵めいた最奥の淀みを抱え、それでいて周囲に波風立たぬよう、気づかいながらに生きてきたのだ。
死に惹かれながらも、彼女は誰よりも優しかった。誰よりも強かった。
そう思い至った時、想花の瞳からは、つ、と雫が伝った。
「耐えて耐えて……逃げてきたのか、それとも、転機をつかもうと思ったのか? 寝子島に来て、少しは幸せになれたんだろうか」
「うん。ぼくや、友だちと過ごした時間くらいは、過去を忘れて……幸せを感じてたって、そう思い……」
不意に想花の語尾が途切れ、レオンの耳に飛び込んできたのは、あぶくを喉から絞り出すような、沈溺の寸前のような、奇怪な声。
「!? どうした……」
闇。青く輝きを内包する、コールタールかヘドロのような闇。それが伸ばす軟体生物の触手を思わせる腕が想花を絡め取り、今まさに取り込まんとしているところだった。
「う、あ……!」
「おい、手伸ばせ! 手を……」
必死にレオンの手をつかもうとするも、想花の姿はずるりと青い闇の中へ吸い込まれ、闇もろともに消えてしまった。
「……まじかよ」
後には破れたスケッチブックの一片が、隙間風に揺れていた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
バトル
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年10月23日
参加申し込みの期限
2022年10月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年10月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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