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BABY STRANGE
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あー……暑い。
日差しが強いわけじゃないけど、ジメジメしてるのがどうにも……。
想花は額の汗をハンカチで押さえた。
綿入りの丹前を羽織ったうえに、懐にカイロを二個三個忍ばせているような気持ちの悪い暑さだ。同じ暑いといったところで、カルフォルニアやギリシャのカラッとした暑さとはきっとちがうと思う。もちろん加州にも希臘にも渡航経験はないから、まったくの空想ではあるのだが。
「どこ行こうかなあ……」
つい独り言してしまう。当然応じてくれる声はない。『あそこに行きなさい』『あの場所がいい』と行き先を指示してくれる者もない。想花は権威主義者ではないし、むしろ他人にああしろこうしろと押しつけてくる権威だの権力だのは積極的に忌むところだが、熱気でぼうっとしているせいか頭をつかうのすら億劫だ。
誰か命令してくれればいいのに――。
そんな気にもなる。
ジメジメした気分にモヤモヤが厚塗りされて苛(いら)ついた。つい、両親のことを思い出してしまったからだ。
親の愛は無限だと言う人もいるが、想花はけっして信じない。愛情は有限な資源であり、しかもその配分は平等ではない。
両親の愛情は、想花ではなく想花の双子の弟に集中した。
そりゃあそうだよね。
この学校に入りなさい、と命じた通り入試をパスした弟。
人気者になりなさい、と命じた通り明るく華々しい性格になり、たくさんの友達に囲まれている弟。
素直な性格の弟は、本当に素直に両親の望むとおりの子に育った。すくなくとも想花の目にはそう映っている。
実家にいたころ、正月が苦手だった。弟宛の年賀状はそれこそ山のように来るのに、自分宛のはパラパラ数枚雀の涙、それも通販会社の広告年賀状まで含めてかさ増ししての話だった。
ぼくも、親の命じる通りにすればよかったのかな。
そうすればコーラのCMに出てくるようなさわやかな(フレアスカートの似合いそうな)少女に育って、今ごろはたくさんの仲間とビーチでバーベキューパーティでもやっているのかもしれない。
……無理だね。
皮肉な笑みが浮かんだ。想像すらできない。
将来どうなるか、までは難しくとも、いまどうしたいかくらいは自分で決めたい。
ああそうか。
個人として生きるってことは、頭をつかって面倒なことでもあるんだ。
孤立を、選び取ることでもあるんだ。
想花は、『自己責任』などという薄汚い言葉は好まないが、みんな責任を取りたくないから、誰かにかわりに考えてもらいたいとか、誰かに命令され従っていたいとかいう気持ちだけはわかる。
でも、ぼくはぼくでありたい。
「……うん、それでいい」
またも声に出してしまった。
潮騒が想花の耳をなでた。
あれ?
いつの間に、とつぶやく。
うっすらとした潮の匂い。ざらついた潮風。足元はきめ細かな砂――想花は寝子ヶ浜海岸に来ていた。
午前の太陽を照り返す海原がまぶしい。かもめが一羽、水平線を追うように翼を広げている。
まるで描きかけの絵、ただただ砂浜があるだけで人はまばらだ。ついこの前、『寝子ヶ浜ビーチスターズ』でにぎわっていたのが嘘のようではないか。想花がバイトしていた海の家はとっくに撤去されて跡形もなかった。
さきほどビーチでバーベキューパーティがどうの、というフレーズが頭に浮かんだのもこの場所に来たせいかもしれない。
なんでここに来たんだろう。
海の音でも聞けば涼しくなるとでも思った?
体は熱を帯びて汗もとまらないのに、寒々しい気持ちで想花はおのれに問う。
ため息をつくと砂を踏み、波打ち際ギリギリまで歩んでいく。
丸い小石を蹴飛ばし、パリパリに乾いた二枚貝を踏み割る。ざくざくした音は聞こえるが、エンドレスで流れていたサマーソングはもう聞こえない。
乾いた砂が湿った黒い砂へと変化した。うんと手を伸ばしたような波の先が、スニーカーの爪先に触れた。足を止める。
寄せては返す波をぼんやり見つめる。波は白い泡を吐くアメーバのようでもあり、開演するかしないかまだ迷っている芝居小屋のカーテンのようでもあった。
さっとひとつ、大きな波がきたので想花は一歩後退した。
さきほどまで想花のいた場所を透明な海水が洗った。そろった左右の足跡が、みるみる削りならされていく。
滴さん――。
春の記憶がよみがえった。遠い昔ではないはずなのに、フルカラーより琥珀色のほうが似合いそうな思い出だ。
「なんで新入生が、パフォーマンスをしなきゃいけないんだろう……」
憂鬱な朝であり憂鬱な登校となった。その日は寝子島高校の年中行事、新歓祭がひらかれるのだった。メインイベントはパフォーマンス、ひらたく言えば隠し芸のたぐいだ。よくあるパターンでは在校生が一芸を披露していくものになろうが、寝子高は新入生も舞台に立つという点がストレンジだ。
この日にそなえ入学早々、演し物の練習に余念のないグループができあがっていた。昼休みや放課後にリハーサルをする新入生もいた。でも想花はそこまで乗る気持ちがなかった。無芸小食なにも披露できるものがなく、なにも披露したくない想花としては、本当は理由を付けて欠席したいくらいの行事であった。
でも逃げたくはなかった。
だからむしろ腹をくくって、パフォーマンスの内容を決めぬまま当日をむかえた。
「あの、少しいい?」
どうしてあのとき彼女――
黒白 滴
に声を掛けたのかは覚えていない。
影のように濃い黒、雪のように冷ややかな白、中央から綺麗にわかれた不思議な髪色をした少女だった。滴は目を細めて、私に言ってるのかな、と眠そうな語尾で小首をかしげた。
「もしかして新入生?」
「そうだけど~」
自他ともに認める引っ込み思案の想花が、思い切って滴に呼びかけたのは、どういう風の吹き回しだったのだろうか。
「……あの、突然でびっくりするとは思うけど、パフォーマンスを一緒にしてくれないかな」
これが滴との出逢いだった。
新歓祭のパフォーマンスをきっかけに、想花と滴は親しくなっていった。
東京への遠足で一緒に美術館をめぐったこともある。
あのとき滴は、たとえ有名な画家の作品であろうと華やいだ絵にはさして興味を示さなかった。ただ一枚、あまり有名ではない画家が描いたキリストの磔刑画の前では、長くその前を動かなかった。
絵に視線を移して想花はどきりとしたものだ。
鬼気迫るといって過言ではないほど、壮絶な死の光景だった。荊冠をかぶる神の子は、虚ろな目で足元を見ていた。まるでその先に死があるかのように。唇は干からび、目にかかる前髪は滴の髪のように黒と白が半分ずつ入り交じっている。
「こういう感じの絵が好きなの?」
「うん」
滴は、死をイメージさせる絵に惹かれるのだという。
彼女は多くを語らなかったが、滴がよく手すさびに描いている絵も、直接的にせよ間接的にせよ、どこか死のイメージをまとうものばかりだ。昏(くら)くて、深くて、だからこそ説得力があって――。
想花は気がついた。
滴さんも、自分で選ぶ人なんだ。
世間の評判など気にしない。一般的な人気がどうこうというのを自分の尺度にしない。自分が惹かれる絵を好み、表現する。
あの日――絵を鑑賞しながらも、ちらちらと想花は滴の横顔を眺めた。
透明な青い瞳、すっきりと通った鼻梁、ちいさくて桜色の唇、陶磁器のような肌――。
輝く太陽の美ではない。夜半に窓から忍び込んでくる妖精の美しさだった。
……そのうちに、ぼくは自覚しちゃったんだ。
ぼくは、滴さんに恋してるって。
波が想花の靴をつつんだ。
向いあって座っている。無人の教室、窓際の席で滴と想花は。
「……だよね」
ふっと滴がほほえむ。まどろむ猫のように。
滴の手元、開いたままのノートには、ボールペンでスケッチが描かれている。
性別不明の人間が血の涙を流し、闇夜に月明かりを求めているところ。
黒い翼をもつ天使。
冬の道ばたにおちた鳥の骸(むくろ)。
雨に打たれる枯れた花。
いずれも描きかけで、面倒になったのか上から×印をつけてしまったものもある。けれどいずれも、破棄したものですら、独特の突き刺さるようなメッセージを発しているように想花は思う。
「うん、そうだよ……」
想花は曖昧にほほえみ返す。
ぼくらは、何の話をしているのだろう。
世間話? 趣味の話? それとも――どうでもいいか。
だってぼくは、滴さんのことだけ考えているから。
滴さんも、ぼくのことだけ考えていてほしい。
ごく自然に、滴がペンをもたぬほうの手を伸ばす。白い指先で、想花の指先に触れる。
「想花ちゃん、私ね……」
いまはふたりきりなのに、誰にも聞こえないのに、それでも内緒話をするかのように、滴は身を乗り出して想花の耳に唇を寄せた。
どばっ、と波飛沫が想花の顔にかかった。
「わわっ!」
とっくに潮は満ちている。くるぶしあたりまで水が来ているではないか。大波をかぶる格好になってしまった。
うわあと声をあげて想花は砂浜に逃れた。追い打ちするようにもうひとつ波が来た。
靴はぐしょぐしょ、靴下も同様だ。ジーンズも水を吸って重い。これから、陸に上がった河童みたいに水音たてて寮に戻ることになるのか。
ああもう――!
妄想に浸って水浸しなんて、シャレにもならないよ。
海水ではない。みじめな思いが塩水となって、想花の目尻にかすかに浮かんだ。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
NPC交流
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年08月23日
参加申し込みの期限
2022年08月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年08月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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