ちょっぴり遠くてちょっぴり近い、とある未来のお話。
からころ、からん。白くてなめらかな石畳に、下駄の鳴らすかろやかな音色。
並んで歩く
御巫 時子と
五十嵐 尚輝は、音の主である浴衣姿の若いカップルとすれ違うなり、おもわず顔を見あわせました。
「だ、大胆……ですね……」
「ら……ラブラブ、というやつですか」
見知らぬ男女は、顔を赤くした時子と尚輝の視線などまったく気にする様子もなく、ぴったり寄りそいイチャイチャちゅっちゅ、仲むつまじいところを見せつけながら、からからころん。下駄を鳴らして、宿のひとつへ消えていきました。
淡く、冷たく澄んだブルーの空。もくもく白い雲から、わたあめみたいな雪がはらはら、はらり。
その下にゆったり、寝そべるように広がる、ここは寝子温泉です。
時子と尚輝が素敵な結婚式を経て夫婦となってから、一年ほどが過ぎました。
尚輝が変わらず寝子島高校で理科教師を務めるかたわら、木天蓼大学へ進学した時子は、学業と家事の両立にてんてこまい。けれど家へ帰れば時子を気づかい、甲斐甲斐しくお手伝いをしてくれる尚輝の助けもあって、ふたり手を取り合って過ごす慌ただしくも楽しい日々。
今日はそんな新生活が始まってから一年目、初めての結婚記念日です。
「綺麗……来てよかったですね、尚輝さん……」
「ええ、本当に」
やわらかく微笑むと、尚輝も自然な笑みを返します。一年ですっかり当たり前となったやりとりです。
九夜山のふもとにたたずむ、ひなびた温泉街。情緒あふれる老舗旅館の並びの向こうには、もくもくと白い湯けむりがたなびきます。道の両側には数日前に降った雪が薄く残り、きらきらと陽光を返しています。
平日のためかゆきかう観光客はまばらで、静かで穏やかな空間はまるで、世間や時の流れから取り残されてしまったかのよう。
「静かで、とても落ち着きますね。ここなら、さぞ研究もはかどりそうな……」
「ふふ……尚輝さんたら」
いつまでたっても朴念仁な尚輝へ、時子はすすすと寄りそって、
「今日は……私にかまって、くれなくちゃ……イヤです、よ……?」
ちょっぴりすねたフリなどしてみれば、尚輝もくすりと笑みを浮かべて、時子の肩をぐいと抱き寄せてくれるのでした。
一泊二日の小旅行。昼は観光地をゆったりめぐって、美味しいものをいっぱい食べて。ぽかぽか温泉に浸かってあったまったら、夜は……。
ふたりだけの時間を見守るよう、軒先で羽を休める真っ白綿毛みたいな小鳥がぴいぴい、ぴいと鳴きました。
墨谷幽です。
ご指名ありがとうございます!
今回は、御巫 時子さんと五十嵐 尚輝先生のための、プライベートシナリオとなっております。
ガイドやマスコメであれこれと描いておりますが、必ずしもそのイメージによらず、
ぜひ自由にアクションをおかけいただけましたら幸いです~。
このシナリオの概要
墨谷が何度か執筆させていただいた、『御巫さんと五十嵐先生が結婚して夫婦となった未来』を描くお話、
その流れをくむエピソードのひとつとなります。
だいたいこちらとこちらの、間くらいの時間軸かな……? といったイメージですけれど、
そのあたりも含めて、アクションでご指定いただいてかまいません。
結婚一周年の記念日に、寝子温泉へやってきたおふたり。
空はおおむね晴れているものの、かかる雲からはちらほらと雪が降っています。
冬の真っただ中だったり、春を前にした名残雪だったり、お好みでどうぞ。
また舞台についても、寝子温泉ではなく本土の実在する温泉郷にしたり、架空の温泉地だったり、
あるいはあやかしの経営する不思議温泉だったり、なんてのもアリです。
リアクションは基本的に、昼間~夕方~夜といった時間の流れにそって描写し、
最後にこちらのイラストのシーンを描く流れとなる予定です。
いくつかのシーンを想定してご指定ください。もちろんおまかせもOKです。
おふたりはどのように過ごすのでしょうか?
大切な記念日が心に残る素敵なものとなるよう、せいいっぱい執筆させていただきます!
NPCについて
もし必要でしたら、五十嵐先生以外のNPCも登場可能です。
登録済みのキャラクターなら誰でも、または墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、
登録・未登録問わず登場OKです。
旅館の従業員や女将さんなどに個性的な人を登場させたり、「だいたいこんな感じの人で~」などおまかせも可。
以上になります。
それでは、ラブラブなアクションをお待ちしております~!