スベるんです！｜リアクション

スベるんです！

　　【犯人は○○だ！】

　そう、例えばその行為について例えるならば、それは『本人の資質』以外に何があるだろう。
　今、それを体現している一人の少女がいた。
　「ありえない事などない」「世は不可思議に満ちている」を信条とし、物事に一切動じない少女。
　その少女の名前は旅鴉月詠。

　彼女は、男女二人が生み出すこの不思議な空気の中に、違和感無く溶け込みつつ。
　散歩の途中で今回の件を知った彼女は、冷静な古き良きゲームの世代を思わせる調査方法にて、突如現れた氷の様子を表情一つ変えずに調べていた。

コマンド：
　【氷を叩いて見る】
　散歩中の帰りに寄ったキャットロードで、何となく段々と溶けてきているが足元を滑らすのには十分な氷漬け度合いである。

　【見渡す】
　水族館の方角が分かる。
　あそこには、瞬間移動するペンギンがいるから、改めての驚きは無い。

　【氷に乗ってみる】
　地面と密着しているのか、氷は余程の事がない限り、道から離れないし割れる事もない。　

　【滑る】
　水族館と逆方向に、バランスに注意してスケートのように滑り出す。
　　……これが、思いの他楽しい。
つるつるで、時々思い出したようにざらついているが、緩やかな下り坂になっている為か『一度滑り出すと、楽しい』という意味も含めて止まらなくなる。

　最初は遠くで、今は間近で抵抗の気力が失せたかのようにがっくりと肩を落とす天満七星に、笑いながらフィギュアスケートの如く舞う少女、榊原巡。
　更には、氷の上で両膝スライディング両足畳んで、正座的なスベリでドヤ顔してから「もっと革新的な…」「俺の、俺だけの滑り……」と自問自答をする握利平など、

　──正直、月詠は今、通常ではなかなかに近寄りがたいかも知れない集団の極めて近くにいたが、滑りの楽しさが分かると、あのはっちゃけぶりも１００分の１位は分っても良いかも知れないと思える。

　転ぶ事数回。そろそろ氷の上を自由に動けるようになったかと思った矢先、先程挙げたフリーダムな面子とあわせて、不思議なことに月詠に声を掛けてきた酔狂にも似た存在が現れた。