【大乱闘！　お前はこの手でぶっ飛ばす！】

　戌井と添木の感動的な再会を果たしている一方、ともりんの視界が妙に見覚えある顔の黒衣の少女を捉えた。
「あいつは、まさか滝原 レオンかい？　ナリも可愛くなっちまってさ、すっかり体制側の犬が板についてやがるねぇ！」
　ともりんはノワール（滝原）と浅からぬ因縁があるのだ。
「江戸の敵を長崎で討つ、じゃないが、ここで会ったがアンタの運の尽きだよ！」
　ともりんは正面から向かうのは愚行だと考え、気配を消してノワールへの接近を試みる。

「さぁて、私たちももうひと仕事しましょうか♪」
「お手柔らかによろしゅうな？」
　血風の匂いに誘われてか、アビスとコトカも登場。
　押されているベノムちゃんの加勢に入った。
「邪魔しないでほしいのです！　りぃは女性に手を上げるつもりはないのですよ～！」
　そう言いながら、りぃはスカートの裾からステッキを複製して地面に突き刺した！
「りぃの獲物は目の前の変態男の娘だけなのです！」
　指差されたベノムちゃんは、ほぼ下着姿の状態にまで追い詰められていた。
「誰が変態だぁ！？　ファッションだ、ファッション！」
　逆ギレしたベノムちゃんは背中に紫色の羽を顕在化させ、りぃへと一斉に射出！
「花乱虎乱（からんころん）と参りましょ」
　そこへコトカの板扇が猛烈な旋風刃を生み出し、羽と合わさって猛毒の竜巻となってりぃを飲み込んだ！
「あら、まぁ。呆気ないもんですわ」
　コロコロと嗤うコトカ。
　しかし、竜巻の中から突如、無数のステッキがピンクのリボンと共に乱射された！
「油断大敵♪　アンカイオ！」
　アビスは飛び交う杖を大鎌で切り払いながら防御！
　コトカも板扇を解体して金属板での防御でやり過ごす。
　しかし、ベノムちゃんは予備動作がいちいち必要な術式しかないため、咄嗟の動きについていけなかった！
「いってててて！　あいつ、どうやって攻撃しているんだ！」
「残像なのです！」
　りぃはいつの間にか空中を舞っていた！
「召喚系のいいところはやっぱり使い捨てっぽく武器を使いまくれるところですよね！　術式をセットしてオートで発動！　魔力で残像を作って死角からの一撃なのです！」
　りぃがドヤ顔で解説していると、空中いっぱいにステッキが増殖していき、大小様々な魔法陣が浮かび上がる！
「これがりぃの全力なのです！」
　りぃを中心として黄昏色の空間が発生！
　ベノムちゃんを飲み込んだ！
　アビスをコトカは緊急回避！
「俺も助太刀するにゃん！」
　そこへ、ぷりてぃーかたな率いるマギカ・ハーレム・クインテットも到着。
　かたなが先陣切って黄昏色の空間へ突っ込んだ！
「行っきますよー！　リボンシャワー☆シューティング！　ぷらす！　固有結界：黄昏時の悪夢！！」
　リボンとステッキの雨が黄昏色の空間へ降り注ぐ！
「ファッ！？　マジかよ！！　てか勝手に着替えさせるなぁ！！　こんな衣装を魔王様に見られたらァァァ！？」
「お、おい、葛城！　俺は味方だにゃん！？　って、うわああああああ、やめるにゃーん！　こんな格好、お婿に行けないにゃあああああん！！」
　２人の悲鳴が異空間から響き渡る！
「説明するのです！　固有結界：黄昏時の悪夢とは！！　あの空間内でりぃのファッションショーが開かれているのです！　可愛い男の子をより可愛く着飾る最高のステージが開催中なのですよ～、アハハ♪」
　つまり、あの空間内ではコスプレ魔王こと葛城 璃人第七天魔王が男の娘ファッションショーを強制的に実行する幻影を見せ、戦意喪失や明日への希望をごっそり奪い去っていく恐ろしい究極魔法なのだ！
「そして杖の投擲のよる物理的ダメージも追加！　なんてハートフルボッコな展開なのでしょう！」
「えっと、……璃人くんは本当に光の魔法少女なのかな？」
　ピュア★マウンテン、目の前の地獄絵図にドン引きである。
　数秒後、異空間が消失した中には、ベノムちゃんではなく、赤褌姿の後木 真央の姿があった。
「真央ちゃん復活なのだ！　お猫様のいないこの世界に留まる理由はないのだ！　悪者ぶっ飛ばして仲良く帰るのだ！」
　その傍らには巻き添えを食らったぷりてぃーかたなの変わり果てた姿が。
　フリルがふんだんにあしらわれた極彩色の越中褌が、かたなの股間で魔法少女感をアピールしていた。
「もうほぼ全裸だにゃん！　何も怖くないにゃん！」
　プッツン、と御剣から何かが途切れる音が聞こえると、突如ろっこん『加速』でコトカの前まで接近！
　そのままコトカに腹パンをブチ込むと、屈んだ彼女の膝を踏み台に痛烈な蹴りを叩き込む！
「オラァ！　死ねだにゃん！　閃光魔法という名のプロレス技だにゃん！」
　流れるような動作でかたなはマウントポジションを取ると、血涙を流しながら拳を何度も振り下ろした。
「お前が！　謝っても！　俺は！　殴るのを止めないにゃん！　むしろそのまま記憶がなくなればいいにゃん！」
「ちょ、そない、殴ったら、記憶どころか、命亡くなる……！！」
　コトカは白目を剥いて気絶してしまい、その身体が途端に光り輝きはじめた。
「――エライ目におうたわ……、でも、おかげで色々思い出せたさかい、おおきに、褌はん」
　その声は、安らぎに満ちていた。
「……思い出せへん訳や。胸の奥で咲（わら）う大切な笑顔（はな）、思い出す程忘れた事あらへんもの。もう分かる。どんな時でも当たり前に『遊琳センパイ』と呼ぶ、あの声の愛しさに頷けるなら、僕の名前は……」

「手遊びの音、瑶鳴の琳……！」

　光が一層強くなったかと思えば、純白の翼を羽ばたかせながら１人の花嫁が天空へ駆け出す！
「皆大好き♪　マジカル花嫁ゆーりん！　花も涙も有毒やから気ぃつけや☆」
　髪型はショートへ戻り、睡蓮の髪飾りに鈴蘭モチーフのミニウェディングドレスで着飾るゆーりん。
　ディディスカスを散らすシフォンストールで胸と肩隠すその姿は、まさに淑女である。
　でもゆーりんは男の子である。この場にいる全員は「可愛い女の子が空飛んでる！」と信じて疑わない。
「あらぁ？　これってピンチかしら♪」
　アビスが光勢に囲まれ、アンカイオの大鎌を地面に突き刺した。
「さぁ、観念しなさい？」
　ジャナがガントレットの砲口をアビスへ向けて投降を勧告。
「ふむ、貴様も我が因果に囚われてみるか？」
　ルシ様も合流し、レインボー★とりもちをねっちゃねちゃさせる。
「うふ♪　もう勝ったつもりかしら？」
　アビスはニタァと真っ黒い笑みを浮かべたかと思えば、アンカイオに魔力を注ぎ込んだ！
「こちらにはまだまだ仲間がいるのよ？　お願いね、みんな♪」
　アンカイオから闇色の魔法陣が出現し、そこからフジカ、バンビエッタ、スカーレットにキオネが飛び出す！
「能美子ちゃん！？　もしかして正気を失ってるのっ？」
　ストライクチェリーは虚ろな表情のバンビエッタに戸惑っている。
『……また会ったね、刀くんの偽物。それにしても、さっきよりも酷い格好……』
「小山内落ち着け！　俺もこの状況を認めたくないけれど本物！　俺は本物だからにゃん！」
『うるさい。偽物の変態は、真っ紅にして綺麗にしてあげる！』
　スカーレットは真っ先にかたなへ黒水晶を射出した！
「うおお！　俺は本物だぁぁぁああ！！」
　かたなはろっこんで加速しながら攻撃を回避、説得を続ける！
　フジカとバンビエッタは２人掛りでストライクチェリーに攻撃を開始。
「赤紫の髪の人もきっと操られてるんだ。下手に傷付けられないなー」
　ブースターと直感で２人の攻撃を躱すストライクチェリーは、なかなか２人への攻撃を踏み出せずにいた。
　そして対峙するピュア★マウンテンとキオネ。
　いよいよ戦いは佳境へと突入する！
　
　後木 真央→コスプレ魔王りぃによって浄化！
　弥逢 遊琳→ふんどし魔法少女かたなによって浄化！