漂流　～宇宙にて～｜リアクション

漂流　～宇宙にて～

【目覚め】

　
　ざわざわと、それぞれが話す音がする。
　それは先ほどの声に関しての事であろうか？
　それとも、日替わりに起こる事件への期待だろうか？
　だがしかし、みんなで無事に帰りたい。
　少なくとも、秋ノ宮こまちはそう思っていた。
　たった一人の二年生は、相談したり、各々で動き始めた彼らを見て思う。
（寝子島での『不思議』への向き合い方、参考にさせてもらうわ）
　今までに無いほどの自由をこまちは感じながら、話の輪へと加わっていく。
　そのとき、ふと、こまちはあるものへと視線を向ける。
「にゃにゃにゃがおー！　……がおーも一緒なのだ！」
　両手を丸め、後木真央が自分の腕の中へと愛猫の『がおー』を呼び出していた。
「あ、いらっしゃいなのだ！」
「どうやら、ろっこんは発動するようだな。先輩もこちらに」
　そう言って、こまちに場所を空けたのは八神修だ。
「ありがとう」
　礼を言いつつ、こまちは辺りを見回した。
　それぞれは起きた部屋を出て、操縦室らしき部屋に移動している。
　操縦室からも、地球が見える。
　そして、その少し後にこまちに続いて、一人また部屋から出てきた男がいる。
「おはようさん。なあ、ここどこ？　見覚えねーけど、なんか宇宙みたいなんだ」
　桜井ラッセルは頭をぼりぼり掻きながら、訳が分からないという感じで出てきた。
「ラッセル、現実を見ろ。あれは宇宙だ、そしてここは宇宙船だ」
　そう言ったのは、旅鴉月詠。
その言葉を聞いて、ぎょっとラッセルは驚いたようだ。
「宇宙船ってUFO？　いやいやまさかアトラクションとか科学館に迷い込んだとか。なぁ……マジか？」
　マジだ、と頷く一同。
「……マジか」
「もう、こうなったら楽しむしかないぜ！」
　風雲児轟が元気よく言う。
「どうであれ、謎の声の事もあるし、探索をすることもできる。なら、まっすぐぶつかるしかないじゃん」
　奈良橋博美がにやりと笑いつつ、ぐっと気合いを入れる。
「夢なら痛いと覚めるのだ、でも、に゛ぁッ！」
　真央が立ち上がってなにやら言いかけた瞬間、ごちんっと頭になにやらぶつかった。
「あ、すまん」
　御剣刀が申し訳なさそうに言う。
　彼は、手に棒を五本ほど束にして持っていた。
「ビリヤードのキューだ。武器になるかどうか分からんが持ってきてみた」
　その束がたまたま立ち上がった真央の後頭部に直撃したのであった。
　どうらや、遊戯室から持ってきたらしい。
「大丈夫？」
　桜庭円が真央を見る。
「……痛いのだ、夢じゃないのだ。はうーん」
　ぎゅーとがおーを抱きしめてお肉みっちり感で自分を慰める真央。
　夜榊水月がその様子を見て一言言った。
「賑やかだねぇ」
「そろそろ話を進めないといけないわ」
　そう言って、こまちが空気を再度引き締める。
「この場所の全容を把握する必要があるものね。それぞれ手分けして事に当たりましょう。何かあったら操縦室に……ここに集合がいいかしら？」
　そう言ってこまちは全員を見回す。
「そうですねー。何かあったらここでいいかも」
　円が最初に同意をした。
「あとは、謎を解く人以外は、周囲の探索だな」
　修がそれに続いててきぱきと分担を聞き分けていく。
「は、はははははは！　大丈夫。寝子高の頭脳の八神もいるし！　体力勝負の後木や風雲児もいるし！　頼もしい仲間や先輩がいる……一緒に帰ろうぜ……！」
　そのラッセルの言葉に、全員が頷いたのであった。

このページにイラストを設定する