漂流　～宇宙にて～｜リアクション

漂流　～宇宙にて～

【相談なう】

「さて、他の人が探索している最中に、こちらでも最初の声の答えを考えてみようと思う」
　そう言いつつ、修が残った皆を見回す。
　残ったメンバーは博美、修、月詠であり、他は探索に向かっている。
「手に負えないとテオの判断かもしれないし、何者かが観察の為に隔離したのかもしれない。が、それを考えても仕方が無いな。もう一度、言葉を反芻してみよう」
　そう言って、立ち上がりつつ月詠が口を開く。
　ゆっくりと歩きながら暗唱した。

「中央の台座に我が名を刻め
　我を表すものを告げる

　一つ、我は初めなり
　初めとは、創造と破壊を意味するものなり

　一つ、我は知るものなり
　知るとは、永遠のことなれど無知と同義なり

　一つ、我は盗みし身なり
　そは、卑しき例えなれど、大いなる裁きこれにあり

　一つ、我は転機なり
　転機とは大地となること、また、全ての贈り物である

　我が名はなんぞや？
　知るものこと、道を開くものなり」

「第一印象的には、命を想像した」
　その言葉を聞いて博美が言う。
「命？」
　修が聞き返す。
　博美は頷いてから続ける。
「我は初めなりの所で、破壊と創造の源は命だろうなと思う。命があるからこそ知ることが出来るし、知ったことは永遠となるだろうと思う」
　そうして、食堂から持ってきた水に博美は口をつける。
　喉を潤してから、ゆっくりとしゃべる。
「勿論忘却もあるし、それを知らなかったことが知ったことで、知らない状態に対して無知になる」
　月詠は、歩きつつその言葉を聞いて思考する。
　博美は、言葉を続ける。
　その真剣な顔を横目に見つつ、修もまた話を聞きつつ思考する。
「命はかりそめの存在と言う意味で盗みと言うのだろう。いろんな宗教の死生観で、最後の審判や弥勒大菩薩の降臨といった、大いなる裁きを見受けられる。その意味では、命があるからこその話となる、と考えられる」
「ふむ」
　そう聞いて、また違う事が思い当たったのか、月詠が軽くメモをする。
　博美は最終的な答えを導く。
「命は、やがて大地になる。そして、命はすべての存在に対して、大事な贈り物だ。命が吹き込まれなければ、どんなものでも本物にはなれない。つまり、答えは……命だ！」
　そう言って、パネルに触れて『命』と刻む。

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「……外れ、か」
「恐らく、もっと違うものなのだろう。広義的では無く狭義的かもしれないな」
　がっくりする博美に修が言う。
「狭義的？」
「命、というよりももっと具体的に入力してみたらどうだろう？」
「といわれてもなー」
　うーんと考える博美。
「では、私がやろう」
　そう言って、パネルに月詠が向かうのであった。