＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング｜リアクション

＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング

夕・九夜山山頂

（最後くらいは、ちょっとキメるかな）
　頂上寸前の探検部。龍目豪はカメラを後手に抱くと、
「ファイトー！」
　ろっこん「軽いぜ！」を発動させ、勢いよく駆け上がった。
「よーし、ゴール！」
　すぐ後に、疲れ顔の北原みゆきと安堵の邪衣士が続く。
「豪先輩、元気有り余ってる……まだあと２回くらい登れそう」
「最初でいきなり迷子になったけど、なんとか無事ここまでこれた……」

　展望台では鈴野海斗が景色を楽しみながらおにぎりを食べている。
「うーん、一仕事終えた後の米は絶品だべ」
「いい画像がいっぱい撮れてるといいな」
　持参のお茶を飲みながら、奈良橋博美。頂点でとる食事は格別だ。
「お、どんどん他の組も到着してるな」
　新たに踏破したバイト仲間を見つけた。

　正規ではない、落神神社ルートを登った八神修は、頂上に足を踏み入れた途端、その場に崩れ落ちた。
「お疲れさまだったのだ」
　９割方カメラ役を担った、元気娘の後木真央が肩に手を置く。顔を上げる労力すら惜しむ修は、言葉なくうなずき返す。鼻先から汗が雫となって落ちた。途中、「俺を置いていけ」と降参するくらいだったが、ピークを過ぎると、あとは気力で黙々と頂上を目指し続けた。達成感はひとしおだが、喜ぶ余裕はない。

　それぞれが体に感じる充実感に浸り、山頂でしばしの休息をとる。しかし、さほど長居はしていられない。じきに陽は山間に沈み、山頂は足元が悪くなる。景色を堪能し、隅々まで撮影を終えると、ロープウェイのある展望台前駅へと向かう。示し合わせたかのように、全員同じ出発時間の便に乗った。

　ロープウェイ内では、小山内海と御剣刀が隣り合って座っている。
「楽しかったな」
　カメラを前に抱える刀に、海はうなずいて答える。
「帰りにラーメン食べにいくか。今日は一番猫かな〜」

　刀と海の会話を、少し離れたところから聞いていた士が、探検部部員に提案する。
「せっかくですから、この後探検部のメンバーで打ち上げにでもいきませんか？」
「お、いいねー。感想や今後の希望も聞きたいしな。よし、事務作業の逆巻にもメール送っとこう」
　豪がさっそくメールを打ち出し、みゆきもスマホで店探し。
「どこかいいお店ないかな。やっぱり肉料理かな？」
　とにかく行動力にかけては定評のある探検部だった。

　修はイスに座るなり、大爆睡。
「あとで有留ちゃんに写メを送るのだ」
　と、修の寝顔を撮る真央。自分もあくびが出て、さすがに疲れを感じた。

　戻って刀と海。
「！」
　静かだと思ったら、刀がうつらうつらと、海の肩へ頬を寄せてきた。緊張で海、体を硬直させる。
　しばらくすると寝息をたてながら、完全に海に頭を垂れてくる。
　今すぐスケッチブックを取り出して、接近する刀の無邪気な寝顔をスケッチしたかったが、起こしてしまったらガッカリなので、心のカメラでしっかりと撮影しておく海。

　刀の膝上にあるカメラが、そんなロープウェイの一部始終を、静かに見届けている。