＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング｜リアクション

＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング

夕・グルグル寝子島支部

『今すぐここのデータを消去せよ。さもないと……』
　カメラの画像いっぱいに、旅鴉月詠の書いた字が映し出される。
「はいはい、了解」逆巻天野が慣れた手つきで、岩場に下りて以降のデータを消していく。「さもないと何なんだよ」
「これで、エノコロ組も終わりかなー」
　真辺伸幸があくび混じりに言う。
「ですね！　これで残るは２台ほどですね！」
　北玄が言い、３人は桜井ラッセルの席を囲む。そこに残る２台の内の１台の景色が映し出されている。
「なんか、大変なことになってるぜ」
　ラッセルが指差した一枚は海浜公園だ。画像の端に、振り向き様に映り込んでしまった、松谷洋志の切羽詰まった横顔が見て取れた。
「なんだ、何かに追われてるの？」
「どうやらハチの群れに」
「歩合が欲しいがために、危険を冒して痛い目を見てるってことか」

　画像はしばらく臨場感あふれる逃走劇を映し出していた。が、
「あ、こけた」
　画像が９０度傾く。
「歩合の代償は大きいかもしれないねー……」

「いやーこれはすごい」
　数分後、データを回収しに来たグルグル社員は、想像以上の収穫に驚いている。
「このハチから逃げる画像なんかも特集に使える」
　舌なめずりしそうなくらいに歓喜。ろっこん使用が映ってしまっているものなど、ところどころ天野たちの手で消去したものがあったが、社員が別段気にする様子はない。

「あの」天野は思い切って尋ねる。「何で寝子島だけこんなに詳細なデータを？」
　理由が無いわけないだろ。天野は冷徹な視線で刺す。
「何でって、最初にも言った通り、寝子島の振興のためだよ」
　抑揚を変えず答える社員。
「……」
　しばらく視線を交わしあう、社員と事務員勢。
　質問攻めしても、このまま平行線に終わってしまいそうだ。
「まぁ、まずいところは俺たちの手で消したわけだしーとりあえずお金だけもらって帰ろうよー」
　天野をたしなめる、面倒見役の伸幸だった。

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