＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング｜リアクション

＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング

夕・エノコロ岬

「確か、この辺りだったんだけど」
　灯台上から見つけた、謎めいた洞窟の入り口を探す佐藤英二と御巫時子と梅戸有留。エカテリーナ・クロキも合流し、最後の一稼ぎと、岬の足場の悪い岩肌を海側へ下りていく。踏み外せば、運が良ければ捻挫で済み、運が悪ければ海へと転げ落ちていくだろう。
「ゆっくり、ゆっくり行こう」
　カメラを背負う英二が喚起。エカテリーナのカメラは、安全な場所に置いてきた。レアな画像は、一台のカメラから撮影できれば十分だろう。４人、手を取り合って、灯台から見えた穴場を目指す。

　岩肌の一部にへこんだ場所がある。そこへ下り、さらに岬の側面を撫でるようなでこぼこ道を行った先に、洞窟の入り口は見えた。
「あら……？」
　時子が目を凝らす。そこにはすでに先客がいた。

　旅鴉月詠が、張り出した岩に座って洞窟内をスケッチしている。
「何を描いているんだ？」
　エカテリーナが覗くと、そこにはたくさんの猫と戯れる恵御納夏朝の姿があった。

「うわあ、可愛い……」
　老いた猫に凛々しい大人猫、まだ生まれて間もない子猫。大所帯が洞窟の入り口を占領している。みな血がつながっているのか、毛色だけでなく顔つきも似通っていた。夏朝が持ってきたお弁当のおかずに群がっている。

「ここは確かに穴場ですね……」
　猫たちの幸せ空間に飛び込み、時子が言う。
　猫を追いかけ回した人か、灯台の上から景色を細かに観察した人しか、ここに来ることはできないだろう。
「うーん」うなったのは英二。「なんとなくここは、人の目に触れない方が良い気がするな」
「そうだね、この猫たちの生活を邪魔する人たちも出てくるかもしれないしね……」
　有留が言い、全員が同時に、猫たちを複雑な表情で見下ろした。
「よし、ここのデータは消去しよう」
　英二が背後のお荷物をさも邪魔臭そうに見た。反対の声は出ない。
「でも……どうやって消去するんだろう」
　英二が首を傾げると、月詠が立ち上がってカメラのそばに寄った。
「こうすればいい」
　スケッチブックの新しいページを開く。

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