【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

【叙勲式が始まる前に】

　ティオレ・ユリウェイスは公衆浴場で水風呂を浴びていた。
「ううぅ、頭が痛い……」
　冷水で頭が幾分か冴えたが、それでも気分が悪い。
　その正体は二日酔いだ。
　前日、彼女はどんちゃん騒ぎで、下戸のくせに調子に乗って酒をカッ食らったのだ。
　気が付けば朝を迎えていて、ティオレは路上で彼女はボトルを抱いて寝ていた。
「あー、気持ち悪い。そういや、今日は何日だっけ……。何か忘れている気がする……」
　泥のように重くねっとりとまとわりつく体のだるさを振り解くように身体を伸ばす。
　すると、血液が頭まで行き渡り、ティオレは短く感嘆の言葉を吐いた。
「今日、騎士だか何だかの叙勲式だったわ」
　しかも自分が呼ばれていたやつだ、と思い出し、再び後悔する。
　自分の息の匂いを嗅ぐ。
「……酒臭い？」
　冷水を頭からぶっかけて思考をシャープにする。
（よくよく考えれば、盗賊の自分が騎士だの勲章だの似合いもしないものをもらってもしょーもない気がしないでもない。第一戦いの功績と言っても、マッパになって住民を裸踊りさせただけだし）
　しかも500人も。
　あの後、一部の市民が裸踊りを神聖化しているようで、扇動したティオレはますます頭が痛くなった。
（まぁ、何かのネタになるだろう）
　出席を決意したティオレは、まだ若干だるそうに浴場をあとにした。