三不管ノスタルジア｜リアクション

三不管ノスタルジア

１４.ダンス・ウィズ・エクスプロージョン

　ガス爆発の影響を一番受けたのは中層で食べ歩きをしていた美食の面々であった。
　爆発の直撃は免れたものの、屋台や飲食店付近にいた住民や従業員たちがパニックを起こしたのだ。
　「ああー！　もう少し食べたかったんですけどぉ！」
　群集がぶつかり、ソワカのテーブルにあった『焗豬扒飯』がぶちまけられる。
　火災の煙や爆発による崩落などはこの辺りまでは来ていないものの、デマに踊らされた人々が悲鳴や怒号を上げている。
　「岩国、諦めろ」
　と、庚が油をたっぷり吸った『法蘭西多士』を無理やり胃の中に放り込みつつ答える。彼は素早く立ち上がり状況を把握しようとしている。
　「食べ歩きはこんなところかな」
　叶も目の前にあった黒目豆のスープをすばやく片付ける。
　「あとはちくわで我慢してね、ソワカっち」
　ちくわを身に着けていつでもろっこんを発動できるように構えるのはすばる。
　「時間的にもそろそろ丁度よい頃合かもしれません」
　香港式ミルクティーこと『奶茶』のカップをエレノアはテーブルに置き、時刻を確認する。

　彼女の腕時計は午前３時１０分を指していた。

　ガシャン。

　パニックを起こしている群衆を避けながら移動を始めようとした彼らの目の前に何かが入った瓶が落下。

　ボウッ。

　そして周辺の可燃物を巻き込みつつ燃え上がる。それは龍八の手作りの火炎瓶だった。

　「火事！？　それともテロアルカー！？」
　彼らの近くにいた誰かが叫び声を上げる。その声をきっかけに彼らの周囲に群集の川が出来る。
　右往左往する人々にもみくちゃにされそうになる中、ソワカがろっこん『ブリンク仏法僧』で面々を通路の隙間やトタン屋根の隙間などに挟んで回避していく。
　「エインズワースさん！？」
　最後尾にいたはずのエレノアが彼らと逆方向に移動し、群集の足元に水鉄砲を発射。ろっこん『ネヴァー・パーツ・ラヴァーズ』を発動させて、群集の足を止めていく。
　「後で合流しますので先に向かっていてください」
　火災の影響で崩落した瓦礫に分断された彼女はそう言ってお辞儀をし、ソワカたちを見送った。