【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ

【作戦２－２：巣穴】

　響の偵察では、月影塔の入り口は以前、ミャトゥ遺跡での事件で使用した道で問題ないとの事。
　しかし、途中、大きな狼の群れが行く手を阻んていることが判明した。
　他に道はなく、どうやら突っ切るしかなさそうだ。
「狼か……。念のため、腕に服か何かの布を厚めにまいておこう」
　志波が身に着けている帯の端を切り裂き、自分の腕にぐるぐると入念に巻き始めた。
「なるほど、そうすれば万一噛まれても、傷が浅く済むのか」
　久隆は身を挺して仲間を守ろうと考えていたため、志波を見習い、槍を持つ腕に布を巻き付けた。
「どうする？　僕の風のソナーで索敵をしながら進むかい？」
「いや、サキリ。ここは俺の班を２手に分けで奇襲を仕掛ける。勿論、ソナーで狼の大体の場所と数を教えてくれるとありがたい」
　鮫ノ口の申し出にサキリがふむ、としばし考え込む。
　この辺りは微妙な作戦のズレがあるようだ、とサキリは認識する。
　そこに御剣が提案を申し出た。
「正直言って、ここで留まっていればいるほど、城にいるやつらの負担がでかくなる。かといって俺達、遺跡突入班が戦闘に加わるのは避けたい。だから申し訳ないが、鎌八のハダルと白の飛竜で狼の群れを突っ切りたい」
「うん、私もそれがいいと思う」
　白も御剣案に賛同した。
「今、私、ラピスさんの遺骸の部位を２個持ってるんだけど、なんだか力が抜けていくような気がして……。もしかしたら、２つ持ってる私はもちろん、１つだけの円ちゃんや刀くん、それにまもる君も、長い間遺骸を肌身離さず持っていると星の力とかそれ以上のものを吸い取られちゃうのかも……？」
「ボクも今は時間が惜しい。そのための効率を考えて２人乗りだし」
「ハダルなら、この森なんてきっと楽勝だ。騎士の光で翼も生やせるから森の中を飛んでいく。早く魔女ラピス様に身体を返してやらないとな？」
　白も鎌八も、狼の巣を突っ切る事を表明した。
「それにしても、これ、ちょっとカッコよくないか？　胴体部を背負って真白嬢のろっこんで布地を固定化してもらったんだが、昔の特撮怪獣みたいだろ？」
　鎌八が得意げに背中に背負った女性の遺骸（胴体部）を見せびらかしていた。
「うん、真白ちゃんのろっこんはこういう時に便利だね。これなら乱暴に走破しても落とすことはないから」
　桜庭も遺骸の左脚を包んで背負った後、白のろっこん『鋼の如く』で風呂敷を硬化させて固定しているのだ。
「と、言うわけで俺達は狼の巣を突っ切る。だから血路を開いてくれ、デイジーカッター」
「……分かった。魔女の事は頼んだ、御剣」
　サキリと御剣はお互いに片手グータッチをして健闘を祈り合った。
　リリエルも気合十分だ。
「今回のお仕事は護衛の他に敵の足止めや退路の確保とやることがいっぱいです！　みなさんが長く戦えるように癒しの光で味方の治療をがんばリリエルですよ！」
「護衛、足止め、退路の確保……。うー、やることいっぱいだねぇ……！　でも頑張るよ！」
　メリィは既に目が回りそうだが、自分のやるべきことをやらんと意気込みは充分だ。
「議論は尽くしたか。私は穴埋め要員なので……あまり期待しないでくれ」
　では、行こうか、と久隆に促されて、２班は行動を開始する。

　鎌八が騎士の光を発動させると、ハダルに翼が生えてペガサス化する。
　先攻する白と御剣の飛竜の後をハダルが乗せる鎌八と桜庭が追う。
　当然、侵入者を追い返そうと狼たちの群れが２騎を追い掛けてゆく。
　今にも飛び掛からんとする狼たち！　そこへ桜庭の魔火の光が輝く！
「周りが燃えやすいから気を付けないとだけど、動物は炎に弱いよね？」
「ナイスだ、円嬢。振り落とされるなよ？」
　ハダルの腹を蹴る鎌八はスピードを上げて森の枝木を器用に回避！