【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ

【作戦１－６：迎撃】

　ミハイル・ドラグノフ率いる迫撃弓兵隊は、間近に迫る竜牙兵たちを目視できる場所に隠れていた。
　兵士たちの矢に宿すは赤い炎の星の光。竜牙兵たちの弱点属性だ。
　だが、彼らはすぐに矢を射かけようとはしない。
（まだだ、まだ待て）
　鷹の目めいた視力で確認するミハイルは、ハンドサインで兵士たちへ指示。
　兵士たちもまた目と耳の良い者達、すぐにハンドサインは部隊内へ広がってゆく。
　竜牙兵たちがすぐそこまで迫ってきているが、まだミハイルは撃たない。
　そうこうしているうちに、丸太柵や木樽、土嚢が積まれた区域へ竜牙兵たちが侵入してきた。
　明らかに人間の手が入った区域に、竜牙兵たちは獲物を探すような素振りを始める。
　充分な数が区域に侵入したのを目視したミハイル、ここでようやく動く。
「今だ！　魔火の矢を放て！」
　ミハイルは愛用の銃の玉に炎の星の力を宿して発砲！
　狙うは、竜牙兵たちではなく、その脇の木樽の山！
　撃ち抜かれた木樽のひとつは内部から炎を噴き上げ大爆発！
　更に他の木樽を巻き込んで連続誘爆！
　赤熱の龍が如き火炎と爆圧によって大量の竜牙兵たちが爆発四散！
　更に兵士たちの矢も土嚢や丸太の柵の根元に赤い光を宿す矢が突き刺されば、火山の噴火めいてあちこちから火柱が上がる！
　兵士たちの矢じり自体が炸裂弾になっているのだ！
　巻き込まれた竜牙兵の尖兵が木っ端微塵に砕け吹き飛ぶ！
「そのあたりはありったけの火薬を木樽や土嚢、柵の周辺に隠してある。魔火の光で引火させれば、一気にドカンだ」
　その後も弓兵が立て続けに矢で隠匿した火薬に引火させてゆき、次々に戦場に紅蓮の炎が花咲いてゆく！
　誘爆が誘爆を引き起こし、竜牙兵が四方八方に吹き飛ぶ！
「作戦はシンプルでいい。迫撃砲は強いぞ？」
　竜牙兵も強行突破を目論んで、竜牙騎馬兵隊が突貫！
　だが弓兵が火薬を起爆させるたびに、死霊馬がいななき暴れ、騎手を振り落として踏み潰す！
　感情がない傀儡とはいえ、後ろから続々と進軍する物量に後押され、後退が出来ない竜牙兵軍。
　そのうち、敵の弓兵隊がミハイル隊へ一斉掃射を開始！
「遮蔽物を活かせ！　そのまま曲射と狙撃で可能な限り敵を足止めをしてくれ！」
　ミハイルは銃弾を再装填すると、すかさず３連射！
　遠くで構える弓兵３体の胸部を一度に粉砕させ、燃え上がらせる！
　そしてミハイルは後ろを振り返る。
　数部隊がこちらへ向かって急接近！
　あれは遺跡突入班と、その血路を開く護衛班、そして！
「楽しいピクニックの始まりだ野郎共！　ゲース・アイルンアルム、参るぞ！」
　200騎のゲース隊が、血気盛んに足並み乱れた竜牙兵の部隊へ突撃を開始！
「兵士諸君、我が家の方角に害虫のお出ましだ！　爆発と煙に夢中で害虫どもはこちらが見えまい！　今よ槍出せ！　剣抜け！　彼奴らの横っ面に風穴を穿つ！」
「「オオオオオオオオォォォォーッ！」」
　ゲース隊は機動力を活かして竜牙兵の側面に出ると、そのまま槍を突き出して竜牙兵たちを蹂躙！
「諸君！　存分に害虫駆除を愉しまれよ！　おい！　ボーっとしてんじゃねぇ！　ここは俺達に任せて先へ進めェ！」
　遺跡突入班と護衛班は、蹂躙後の敵がまばらになったルートを全力でひた走る。
「思ったより早い出番だったな！？」
　ミハイルが叫べば、ゲースが笑顔で槍を掲げてみせる。
「アンタレッサの名将はもったいぶらずに真っ先に駆け付けるのさ！」
　すかさずゲースは馬を翻し、兵士たちに号令を掛ける！
「聞け、諸君！　前から激突は相打ちが関の山だ、数じゃ勝てねぇ、各個撃破だ！　一騎10体倒すまで、絶対ぇ手綱は放すなよ？　俺に続けェッ！！」
　ゲースは疾走する馬上で槍を振るいながら、蛇行して歩兵と斧兵を粉砕してゆく。
　兵士たちが代わる代わるサジタリオ讃美歌を謳い、部隊の先頭へ防護壁を展開。
　シールドを張ったまま突っ切るという、まさに力業だが、これがプログラムされた行動しか出来ない竜牙兵にはとてつもなく有効だった。
　恐らく、竜牙兵たちのプログラムに『歌いながら突撃してくる敵』なんて想定していなかったのだろう。
　その姿、地球側の伝説上の英雄、征服王イスカンダルの如し！
　この勇猛果敢なゲース騎兵隊の出現に、ミハイルはフェーズ２を発動する。
「手筈通り、これより部隊を２手に分ける。半分はゲース隊の援護をしつつ後退。残りはすぐに俺と一緒に砦へ撤退するぞ」
　ミハイルの指揮下で、次なる作戦が発動しようとしていた。

＜ミハイル隊のトラップゾーンは効果絶大です。特に突撃してきた騎兵隊の多くをこの場で脱落させました＞
＜ゲース隊の果敢な敵中突撃によって、多くの歩兵系竜牙兵たちが破壊されました＞
＜遺跡突入班と護衛隊の消耗はほぼ皆無です＞