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くうねるところに ねこいるところ
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朽ちかけた木の床は踏み出すと小さく軋んだ。
うっかりと踏み抜いてしまわぬよう、そっと靴先を進めながら、
宮祀 智瑜
は黒い瞳を瞬かせる。
空っぽの窓口に、空っぽの改札。
備え付けの木製の椅子が囲んでいるのは、たぶんもう二度と火の灯らなさそうな古びた達磨ストーブ。
生まれ育った旧市街のレトロな町並みに少しだけ雰囲気は似ているけれど、智瑜が知る限り、今立っているような古い駅舎は見たことがない。
木枠の窓硝子に額を押し当てるようにして、駅舎の外を覗いてみる。出入口の向こう、普通であればどこかしらの町が広がるはずの外は、鬱蒼として獣道すら見当たらぬ深く古い森が塞いでいる。葛の蔦が絡まり壁のようにもなっている森の奥、古い日本家屋が見えたような気もするけれど、そちらに向かうにはひどく骨が折れそうだ。
陽の光を集めて穏やかに温かな窓硝子から額を離す。ぽかぽかと暖かなおでこがなんとなく嬉しくて、智瑜はくすりと笑みを零した。
(……うん)
天啓のように、思う。
こんなに穏やかで温かい場所は、どこであろうと怖いことが起こるはずもない。
誰もいなくなって久しいらしい空っぽの改札をくぐった途端、ふわり、舞い上がった綿毛が頬をくすぐった。
「わ……」
細めた瞳に映るのは、停車したまま動かなくなった古い列車が一両と、その脇にごろりと横に伸びる、列車と同じほどの大きさの白猫。
「猫又さん……」
思わず口にして、きっとそうだと思う。この景色は、いつかテレビの宣伝で見たスマホゲームアプリ『ぬっこ育て』の一場面にとてもよく似ている。
「はじめまして、猫又さん」
寝子島に生まれ育ち、様々な神魂絡みの事件にも巻き込まれてきた少女は、巨大な猫の姿にも驚いたり怖じたりしない。
「隣いいですか?」
それに、猫又さんのお腹には同じ寝子島から迷い込んだらしい少年と女性が気持ちよさそうに平和そうに眠っている。だからきっと、猫又さんは怖い猫ではない。
返事の代わりに大あくびをする猫又さんに懐っこく笑いかけ、智瑜は猫又さんが投げ出した前肢の傍に腰を下ろした。
古びて錆びたレールの上も、おひさまの熱を抱いて温かい。
「あの電車は動かないんですか?」
にゃふ、と猫又さんは頷く代わりに欠伸する。
「残念です」
木製の床に硬そうなベンチ、錆びついた車輪の一部には植物の蔦が幾重にも絡みついている。
見たことのない古い駅舎と朽ちるばかりの列車、それから真っ白な猫又さん。現実には見たことのない景色の真ん中に居るからだろうか、
――不可思議の力が働いて、黄泉の世界まで連れて行ってはくれないだろうか。
ふと、そんなことを思った。
(もちろん戻れないと困りますけど)
零れた笑みは、自分ごとながらどこか寂しい気配を帯びて感じられて、智瑜はスカートの膝を両手で抱える。
(お父さん、お母さん)
もうこの世にはいないふたりに、会いたかった。
少し前までは時々夢に出て来てくれたのに、最近はずっと会えていない。
(遠いところにいるから)
だから会えないのが普通なのだと頭では理解していても、
(さびしい)
その思いは消せない。
「猫又さん」
錆びたレールと蒲公英の花群に瞳が落ちてしまっていることに気付いて、ぐいと頭をもたげる。俯いていては、気持ちは悲しくなるばかり。
「猫又さんは、誰か会いたいと思う猫や人は居ますか?」
くあ、と欠伸した猫又さんは、白い前肢をそっと持ち上げ智瑜の膝に大きな肉球を乗せた。その巨躯から鑑みて相当重たいはずの前肢は、けれどふうわり、羽根のような優しさで智瑜の膝に触れている。
猫又さんは、ずっとここでこうして、迷い込んでくる誰かを待ち続けているのかもしれない。偶然邂逅する迷子に、ひとときの安息を与え続けているのかもしれない。
ふと、そう思った。
何気なく下ろした指先が、レールや枕木の隙間に根を張り咲き乱れる蒲公英の花弁に触れる。
「タンポポは強いですね」
零れた言葉は小さく震えていた。
触れるか触れないかの手で黄色の花びらを撫でながら、智瑜は独り言じみて囁く。
「花は綺麗で儚げなのに、しっかり地面に根を張って逞しくて」
ずっとずっと、思っていた。
小さい頃、――まだ両親が生きていてくれた頃のことを思い出して泣いてしまう度に、考えた。自分は弱いのだろうかと。どうしたら強くなれるのだろうと。
「どうしたら、……」
傍らにうたたねしている巨大な白猫に尋ねようとして、やめる。傍にいてくれる猫又さんを困らせたいわけでも、心配を掛けたいわけでもない。
両親の代わりに自分を育ててくれている祖父母にするのと同じように、智瑜は両親の話を切り上げた。
「猫又さんは強いですか?」
答えのない問いかけをするその代わり、智瑜はふかふかの胸に身体ぜんぶで抱き着く。どのくらいの時間をここで過ごし続けてきたのかも分からない大きな大きな猫の周りには、寂しさを寄せ付けぬ穏やかさがあった。猫の静かな息と心臓の音にただ耳を傾けるうち、胸に渦を巻いた寂しさと哀しさはゆっくりと凪いだ。
ふわりと猫があくびする。
大きく膨らんでしぼむお腹につられたのか、お腹で寝こけていた紅茶色の髪の女性が寝ぼけ眼であくびした。むくりと起き上がり、瞼を擦って周囲を見回し、また猫又さんのお腹に抱き着いて二度寝に入る。
眠っているひとたちの邪魔にならないよう、智瑜はそっと立ち上がった。しーっ、と自分に言い聞かせるように唇に人差し指をあて、ホームの側の列車に歩み寄る。あの電車は、何処を走っていたのだろう。
「乗った事がありますか?」
問うても応えぬ大猫にそっと笑み、ホームから車内に足を踏み入れる。軽く軋む木の床に少しどきどきしながら、太陽の熱を吸って温かな座席に腰を下ろしてみる。
(私も乗ってみたかったです)
ガタンゴトン、単線を走る長閑な列車の音を聞いたように思えて、智瑜はそっと微笑む。
眼を閉じれば、蒲公英の咲き乱れる野原の中を走る小さな電車の在りし日の姿が浮かぶ気がした。窓から流れ込む綿毛まじりの風を感じられる気がした。
(きっと、素敵ですよね)
「はあ、中々に素敵な所ですわね」
きしり、床が危く軋む。
投げ捨てられるような声音に、智瑜は閉ざしていた瞼を開いた。
小さな閉鎖空間の入り口に、日傘を手にした金髪の小柄な背中が見える。
「退廃的で美しい世界ですわね」
柔らかな少女の声で小鳥のように囁き、少女は白い日傘をぱちりと閉じた。街の灯に侵された夜陰のような、どこかしらひとを不安にさせるような色した瞳を艶やかに微笑ませ、智瑜に向けて優雅な会釈をする。
それきり同乗者には見向きもせず、少女は――
毒島 虹子
は錆びついた列車の一角に膝を揃えて座した。白い日傘を淑やかに傍らに、華奢なうなじを伸ばして穏やかな陽の降り注ぐ外を眺めやる。
(時のとまってしまった世界)
ここは、そのようなものに見えた。
絶望と苦悶の果て、血反吐を吐くような後悔の果てのその世界。かつて暮らし駅を列車を使った人々が、ナニカによって蹂躙され等しく滅びを迎えて後、人ならざるものが住み着いた世界。
例えばそのような、残酷に美しい世界であれば、
(いつまでも眺めていたいと思えましたのに)
ここは、けれどそんな風に感じる己を満足させてくれる世界ではないらしい。
宵闇色のカラーコンタクトをつけた瞳をゆっくりと瞬かせ、陽の照る座席を離れる。この世界で他人の絶望を眺める愉悦は味わえなさそうではあるけれど、そうであるのならば、
(折角いい天気なことですし、お散歩でもしてみましょう)
己を絶望に貶めてみるのもまた、楽しいかもしれない。
開いたままの出入り口で日傘を開く。真っ白な日傘の内側には、購入して後に手ずから縫い付けた蜘蛛の巣と蝶、蝶を捕食する蜘蛛の装飾に加え髑髏の刺繍。
不安を掻き立てる日傘の内側の装飾に淡く微笑み、その陰に身を宿す。ホームに降り立ち、惑わぬ足取りで当て所なく歩き始める。
引き抜かれることも踏みしだかれることもなく咲き乱れ、後悔など微塵もなく次世代へと交代するために綿毛を飛ばす蒲公英の野原を辿る。風は穏やかに雲を流し、青空に不穏の色は一欠けらも見当たらない。
ここは、どこもかしこもが平和だった。穏やかに時間ばかりが過ぎて行く。
「……そして、大きな猫、さんですか」
蒲公英に埋もれた線路に横たわる巨大な白猫と、白猫の身体に半ば埋もれて優しい夢に沈む人々を見遣り、虹子はクスリと笑う。
あまりの平和さに、明るいものしかない世界に、呆れてしまう。
(ああ、でも)
幸福も穏和も、己にとっては最大の毒。
人を殺す毒に甘く満ちた心を、幸福は容易く麻痺させてしまう。己を己でなくならせてしまう。それはどれほど、『毒島虹子』にとっての毒なのだろう。
(けれども、……)
身体に害のあるものを少量取り込めば、それは薬となる。
あきれるほどの平和という毒は、この身にどのような作用をもたらしてくれるのか、それを知りたくなった。
己にとっての毒を取り込もうとすることに怯えてか、日傘の柄を持つ指先が震えた。それすらも楽しくて、虹子は唇の端を上げる。
日傘を畳み、巨大な猫の側に膝を折る。あくびを繰り返し、素知らぬ顔でうたた寝する白猫の腹に触れる。もふもふとした手触りはどこまでも幸せな手触りで、だからこそ己には痛烈な毒をもたらすように思えた。
(この猫がもし急に狂乱したら)
目を血走らせ、幸せそうに微睡む人々を噛み殺し始めたら。そうなればどんなにか楽しいだろう。
考えてはみるものの、目の前の猫は何をしようと虹子の思惑通り暴れてくれるようには見えない。
穏やかな時間という毒を取り込みながら、夢うつつの狭間に落ち込みながら、虹子は譫言じみて呟く。
「私にとっての楽しいこと……嬉しいこと……もっともっとしたいですわあ」
おひさまを浴びて蒲公英が長閑に揺れる。穏やかな風を綿毛に集めて無数の綿毛がいつまでも終わらない青空に舞い上がる。
ふわふわもふもふなお腹に少年少女をうたたねさせていた猫又さんの三角耳が、ふと、ぱたぱたっと動いた。のそり、億劫そうに顔をもたげたかと思うと、くあ、と大きな欠伸をひとつ。
欠伸の拍子に膨らんだお腹の動きに、
「……はっ」
ぐっすりと眠っていたように見えた由貴奈がそれこそ猫じみた寝起きの良さを見せた。もふもふのお腹に埋めていた顔を上げ、ごしごしと両手で頬を擦る。
「いけないいけない」
うっかり寝入ってしまったことに何となしはにかんだ笑みを零してから、寝癖のついた髪にも構わず、猫又さんの顔の前に軽い足取りで移動する。
「帰って夕飯作らなきゃ」
「あっ、私も今日は夕食当番でしたっ」
由貴奈の言葉に反応し、智瑜が慌てて列車内から飛び出して来る。
「ああ、……俺も、帰る……」
直治が埋もれていたお腹の毛の間からもそもそと這い出て、眼鏡の下の瞼を擦る。
「あら、皆さまもうお帰りですか?」
三人には見えない位置にいた虹子が油断のない仕草で立ち上がり、折りたたんでいた日傘を開いた。優雅に微笑む。
「では、いつかまた。ごきげんよう」
社交辞令じみた言葉をぽいと投げつけ、別れを惜しむでもなく元来た道を先に辿り始める。
「ありがとねぇ、猫又さん」
虹子が声音に孕ませた毒に気付いてか気付かずか、ほんの僅か首を傾げてから、由貴奈は猫又さんの鼻先を優しい手でそっと撫でた。
「また来るよぉ」
ついでに顔の大きさほどもある冷たい鼻先に額をつけて、由貴奈なりの親愛のご挨拶。それから、と取り出すのはもちろん、手作りのクッキー。
「はいこれ、お礼のクッキー。今度来るときは煮干し粉入りのも作ってくるからねぇ」
にゃーふ。やっぱり欠伸交じりに笑う猫又さんに見送られ、束の間の迷子たちはレールを辿る。歩いて行けば、夢から覚めるように元の場所に戻ることができる。
そのことはもう、不思議と分かっている。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
動物・自然
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年05月21日
参加申し込みの期限
2018年05月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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