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くうねるところに ねこいるところ
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踏み出した靴先で、真っ白な綿毛が揺れた。ふわり、穏やかな風に抱かれて舞い上がる。
ふわふわと頬を撫でては鮮やかな青空へと飛んで行く蒲公英の綿毛を何気なく視線で追いかけて、
「あれ……」
津島 直治
は見知らぬ場所に立つ己に気が付いた。
「ここは……?」
ぽつりと疑問を吐き出して、ぐるり、眼鏡の視線を巡らせる。
(家に帰ろうとしてたはずなんですが)
足元を埋めるのは黄色い蒲公英と真っ白な綿毛。蒲公英にもう半ば埋もれて、錆びたレールと朽ちかけた枕木が見えた。赤錆に塗れた砂利石を踏み、線路に沿って歩き始める。
ついさっきまでは、いつもの旧市街の路地を歩いていたように思う。どこからか漂う梔子の甘い香や曲がり角の庭先で色付き始める紫陽花に梅雨の時期が迫っていることを感じていたはずなのに、
(……夢、でしょうか)
気づけば見慣れないところを歩いていた。
(きっと夢ですよね)
現実との境目が判然としないものの、きっと夢に違いない。そう言い聞かせ、錆びた線路を辿る。歩を進める度、ふわふわと綿毛が宙に舞った。
初夏の熱にゆらゆらと陽炎の揺らぐ線路の果てには、小さな駅舎があった。風化したコンクリートのホームに人気はなく、踏切とも言えぬ小さな踏切を渡った先の木造駅舎にも人影はない。
ホームの駅名標は苔と錆に汚れて読めなかった。場所を知るものはなにひとつ見つけられなかった。
(廃線……でしょうか)
どこであるのかも分からず、迷い路から抜け出す方法も分からない。それでも、危険はないと心のどこかで感じていることに戸惑いつつ、短いホームの端に寄り添うようにして停まっている一両きりの列車に近づく。
錆びついた車輪は、列車が止まってからの長い時間を思わせた。そっと触れれば、赤錆がざりざりと指先を擦る。
見仰いだ列車の窓はひどく古びてはいるものの、割れてはいなかった。開け放たれたドアから覗き込んだ車内の木製の床も色褪せた朱色布張りの椅子も、時間を経てはいるが荒れてはいない。
奇妙な場所であるのに恐怖を感じず、むしろどこか穏やかな空気さえ感じるのは、この場所が静かに風化してゆくだけの場所であるためなのかもしれなかった。
錆びの浮いた車体を労うようなまなざしで眺めて歩いていて、
「……わっぷ!?」
身体ぜんぶがもふもふした何かにぶつかった。ぶつかるというより、もっふりと埋まった身体をもっふりと引き剥がし、ずれた眼鏡の位置を直す。
「ちょ、なにこれ……」
視界を埋めるのは、真っ白なもふもふ。ふわっふわのもっふもふ。よくよく見れば、ゆっくりゆっくり、呼吸するように動いてさえいる。
もう一度、今度はそうっと触ってみる。燦燦と降り注ぐ陽を受けたそれは、心地よい温もりを宿していた。
見上げるほどに巨大なもふもふに沿って歩いてみる。これは一体なんだろう。
つやつやとした手触りの良い毛並みからうっかり手を離せなくなりつつ、巨体の周りをぐるっと回り込んだその先、
「……!」
桃色の鼻先を見つけた。極限まで細くなった金色のふたつの眼を見つけた。
「ね、ねこ……!?」
透明な髭をのんきにゆらゆらさせ、すうすうと静かな寝息じみて呼吸しているのは、
「……ねこ……ですよね?」
動かなくなった列車と同じほどの巨体を丸める、猫のかたちをしたもの。今までに見たことがないくらい大きな猫の姿に、思わず口と目が丸くなる。これはやっぱり夢なのだろうと思う。
直治の視線に気づいているのかいないのか、大白猫はふわりと大きな欠伸をした。真っ赤な口に桃色の舌、真っ白な牙はひどく凶悪に太陽の光を帯びるけれど、猫は満ち足りた顔でうっそりと瞳を細めるばかり。ほとんど動きもせず、麗らかな陽の下でうつらうつらするばかり。
迷い込んだ人間をぱくりとしてしまうような、怖い存在ではないらしい。
欠伸の口に思わず抱いた警戒をひとまず解いた瞬間、猫がまた欠伸した。つられて欠伸を漏らして、
「んん、」
いけない、と眼鏡をずらして瞼を擦るも、猫の気持ちよさそうな寝顔にまた欠伸が誘われてしまう。
「んんん、」
ふわぁ、とのんびりした欠伸を繰り返し、直治は猫を見上げる。
眠る猫の身体からは、もしかすると周囲の生き物を眠たくさせる成分か何かが出ているのかもしれない。
(夢の中で眠くなることってあるんでしょうか?)
抗うように首を捻ってみても、瞼に覆いかぶさる眠気は振り払えない。
猫がもそもそと動く。巨体に反し柔らかな羽毛のような動きで、無防備に腹をさらして横になる。背中や脇より更に柔らかそうな毛並みを目の前に、眠たい直治はもうたまらなくなる。お腹に埋もれて寝たらきっととても気持ちいいに決まっている。
「……あの、少し寄りかかってもいいかな……?」
思い切って声を掛けてみるも、猫は素知らぬ顔でうたたねしている。
(大丈夫かな?)
そっと近づき、柔らかな毛に包まれた柔らかなお腹を撫でてみる。ごろごろと笑う猫の声にお腹に埋もれる許可を貰った気がして、直治は小さく笑った。
それでもおそるおそる、ふわふわのもふもふに顔を埋める。
猫のお腹は、おひさまと草の匂いがした。
「ん……」
あくびとも溜息ともとれぬ息が零れて落ちる。ふんわりとした温かさと気持ち良さに一度埋もれてしまえば、迷い込んだ不安も心細さも溶けて消えた。
ともかくも、眠気が去るまでのんびり過ごすのがいいかもしれない。
(それに)
たぶん、うたたねから覚めたときには元の世界に戻っている。
どこまでも心を和ませるもふもふに顔と身体を半分埋め、睡魔に任せて閉ざしかける瞼の向こう、
「……んん、」
紅茶色の髪がぱたぱたと跳ねるくらいの大股で、けれど少し疲れたような足取りで枕木を辿って来る女の人が見えた。赤錆たレールばかりを不機嫌そうに見下ろしていた夜色の瞳が眠たげに瞬き、レールの果てにのびのびと寝転がる巨大な白猫を映す。
「やっほぉ」
途端、瞳に被さっていた憂鬱の影は失せた。
「おひさー猫又さん」
足早に駆け寄ってくるなり、女の人は躊躇うことなく白猫のお腹にダイブした。もっふーり、頭から爪先まで白猫のお腹に埋もれる。
「……おお……」
あまりの迷いのなさに、直治の眠気はちょっと飛んだ。
「きみも猫又さんに会いにー?」
猫又ぱちぱちと眼鏡の奥の目をしばたたかせる中学生か高校生ほどの少年に、
壬生 由貴奈
はなにごとにも構わぬようなのんきな、むしろもう半分眠っているかのような眼差しを向ける。
「え、あ、……ねこまたさん?」
にゃふ、と白猫があくびじみた返事をした。
「またおっきくなったんじゃないのぉ?」
もふもふお腹を両手でもふもふと揉みしだかれても、猫又さんは金色の瞳を細めて我関せずの顔。
「……ここ、どこ?」
ふと改めて気づいたように、どこか照れくさそうにぶっきらぼうに口にする少年に、由貴奈は笑った。
「さあー? たぶんあれだよぉ、『ぬっこ育て』。スマホアプリの。……知ってるー?」
「機械はよく分からなくて」
「そおー? うちねぇ、さっき久しぶりに『ぬっこ育て』しよーかなーってアプリ開いてー、気づいたらここに居たんだよねぇ」
言葉通りであるのなら『ぬっこ育て』なるスマートフォンゲームの中に不可思議にも迷い込んでしまったというのに、彼女の声音には焦りも怯えも見受けられない。
「えーと、……夢?」
「まぁ、夢みたいなもんだよねぇ」
少年の言葉に大雑把に頷き、由貴奈は猫又さんのもふもふに頬ずりする。
「あーやわらかふわふわー癒されるー……」
家に帰るなり脱ぎ捨てたというのに、ヒールを履いていた爪先がまだ痛い。皮膚から剥ぐように脱ぎ捨てて熱いシャワーも浴びて普段着に着替えたのに、ドレスの窮屈さがまだ残っている。鼻先には顔も見たくない親類の香水の匂いが纏わりついている。愛想笑いしながら呑みこんだ豪華な食事は、けれど砂を噛むような感覚しか残っていない。
(あーもう、本当うんざり……)
――大学はちゃんと入学しました。生活に不安もありません
それ以外に何を言う必要もこちらにはないというのに、親類たちは月に一度は寝子島にやってくる。大切な親戚の子どもの様子を見るため、という名目を掲げ、実際は由貴奈の両親が遺した財産を管理させる気はないかと、ゆくゆくは譲渡する気はないかと、執拗に訪ねて来る。
その度にドレスを纏い、呼びつけられた島内の高級レストランに足を運ぶ。隙を見せれば遺産を掠め取ろうと狡猾な色を目に過らせる後見人の顔色を窺い無邪気に微笑んで見せる。
――今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします
反吐が出るような言葉だって何食わぬ顔で吐いてみせる。
(あーもう、本当うんざり……)
親類と会う度に幾度となく呟いてきた言葉を、今日もまた繰り返していることに思い至って、由貴奈は小さく息を吐いた。
(……ま、いいや)
お決まりのやり取りさえ済ませてしまえば、彼らは向こう一か月は寝子島には渡って来ない。
ふわふわあったか、真っ白なお腹の毛に埋もれる。さっきまで地面にくっついていたらしい猫又さんのお腹にしみついた夏草の匂いを存分に胸に満たす。
猫のお腹のもふもふと匂いは、憂鬱な気持ちを薄める効果があると由貴奈は思う。それはきっと現実でなくても同じで、だからスマホの仮想空間内でだけでも猫又さんに会って癒されようと思っていたところにこの邂逅。
どんなことがあっても、こうしてお腹に埋まることが出来ればちょっとは気分が楽になる、気がする。
(猫又さんくらいどっしり構えてれば、いちいち悩まずに済むのかなぁ……)
そう思いもするものの、悩むのもまた人間らしさ、
(かもね)
「あー帰るのめんどくさくなってきたー」
内心を微塵も外には出さず、ふわふわと眠たげに瞼を上下させる。
「このまま猫又さんの上でお布団敷いて寝ちゃいた……」
言いかけた言葉ももふもふに沈んで、由貴奈はあっという間に柔らかな眠りの中。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
動物・自然
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年05月21日
参加申し込みの期限
2018年05月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月28日 11時00分
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