【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド

【戦闘開始・１　西】

　義勇兵たちが一堂に登城し、城の兵士長の言葉に耳を傾ける。
　伝達に走り回った小犬丸と鴻上の活躍により、志波の発信した情報は有志たちへ伝達済。
　ほしびとたちも、虹の力でろっこんコピーも完璧だ。
「……であるからして！　我々は市民の盾となり、この街を守らねばならない！」
　兵士長の激励が終わると、各自、持ち場に付く。
　ただ、一般兵と竜牙兵の戦闘力は段違い。
　身を挺して盾にはなるだろうが、まとも渡り合えるのは星の力を有する戦士たちだけだ。
　兵士たちが弱いのではなく、星の力をもつ戦士たちが強すぎるだけの話で、彼等はいずれも屈強だ。
　各方面に配備された一般兵たちの数はおよそ100人。
　戦力が集中している南は、追加で50名配備されている。
　ただし半数は救助活動に回るため、戦士たちの働きで勝敗が左右されるといって過言ではないだろう。
　敵の物量に押し負けない作戦の立て方が重要だ。

　さて、戦端は西から勃発。
　グレッグ・グロッグは愛用の煙管から支援を吹かせながら、件の噂を耳にして呆れていた。

「は？　この騒ぎの首謀者がステラだと……？　あの能天気なビール大好きちんちくりんが、んな事するかー？　いまいちピンとこねぇ……」
　西の部隊に配属されたグレッグは、共に配属されたペルラ・サナーレに問い掛ける。
「あんたはこの騒ぎ、どう思う？」
　問い掛けられたぺルラは、顔を俯かせて首を振る。
「分かりません。でも、目の前で起きていることくらいは、分かります」
　彼女が前を向けば、遠く、土煙がもうもうと立ち上っているのが視認できる。
　遂に、竜牙兵の部隊が侵攻を開始したのだ。
「これから、戦争がはじまるのですね。私は癒すしかできません。味方も、敵も、私自身も」
　癒しの光が宿るウッドシールドを握る手に、ぎゅっと力が入る。

「……戦いは嫌いですが、癒すだけなら、戦えます。義勇兵として城下町を竜牙兵から守ってみせます」
　既に、小犬丸からろっこんをコピーしている。
　彼が許可を得た人物も伝達され、そのメモも手元にある。
　彼女もまた、瞬間移動で戦場を駆け巡る事が出来るのだ。
「ふむ、つまり、あんたは前線でヒーラーとして救援活動を行うのか。なら、その邪魔になりそうな敵を潰した方が良さそうだな」
　グレッグは早速、物見櫓の方角へ歩を進める。
　そして、振り返った。
「そういや、あんた、名前は？　俺はグレッグ・グロッグ。543歳だ」
「……ペルラ・サナーレです。137歳です、けど……」
「随分と若ぇなオイ？　ガキが戦場で無茶して早死にすんなよ？」
　グレッグは愛用の弓と大量の矢を携え、足早に物見櫓へと駆けっていった。
　そして、何故か落とし穴に落ちていった。
　一般兵が万が一を考えて作っておいたのだろうが、グレッグは『歩く罠発見器』と呼ばれるほど罠にはまりやすい体質だった。
　その光景をペルラは呆然と見送るが、暫くしてハッと我に返った。
　急いで落とし穴に駆け寄るペルラ。
「わー！！　グレッグさん！？　こんなところで死んでは駄目です！！」
「死んでねーわ！　誰だよ、落とし穴なんて掘りやがったのはよォ！？　狙撃すっぞコラッ！！」
　ひょっこりグレッグさんのツッコミはキレキレだった。