【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド

【開戦前・１（談話室）】

　斥候兵が早馬を飛ばし、城内へ慌てて駆け込んできた。
　東西と南の三方向から竜牙兵の大軍が押し寄せてきている。
　このままでは城が包囲されて苦戦は必至、と。
「ただでさえ、城の内外は手配書の件で大混乱だというのに……！」
　フランチェスカ・Ｄ・Ｓは頭を抱えた。
　今回の騒乱の首謀者が精霊ステラ・ラ・トルレだという事だけでも信じがたいのに、事を早まった急進的過激派の大臣一派がステラを捕縛するように手配書の配布を強行してしまった。
　本人たちは「良かれと思って」と口を揃えて言うが、身勝手な忖度にフランチェスカは流石に激怒した。
　だが手配書を回収しようにも後の祭り。
　目の色を変えた市民たちがステラ捜索へ乗り出し、城下町は収拾が付かない状況に陥っている。
　それに追い打ちをかけるように、竜牙兵の大軍の襲来である。
　ゆえに彼女は決断した。
「衛兵たちの半数を城下町の防衛に当て、残りの半分は住民の避難誘導をお願いします。ですが、絶対的な人手が足りません。かくなる上は城下から義勇兵を募り、一時的に指揮官と同等の権限を与えましょう」
　きっと、ほしびとやもれいびたちの『星の力』が戦局を切り開いてくれると信じて。
　こうして、近衛兵にお触れを城下町に出すように下知を飛ばすフランチェスカ。
　ほどなくして、彼女に謁見を求める者たちが続々と集まってきた。
　フランチェスカは、彼等の目的が自分が想像している事柄と同じである予感を抱く。
「……残りの兵士たちは、私の指示があるまで待機させるように伝えてください」
　遣いの兵を送り、謁見を求めるほしびと、もれいびたちの元へ姿を現し、玉座に座った。
「さて、本日はどのような要件でしょうか、皆様？」
　彼女の顔は、きっと仮面のように張り付いた笑みを浮かべていただろう。

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