【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド

【開戦前・４　談話室】

「……骨削、笑うなよ？」
「なんだってんだぃ、風雲児はん？　笑えと言われて、今から笑おうとしている時に？」
「いや、だから本当に笑っちゃダメだろ……？」
　もうしょうがねーな、と苦笑いする風雲児。
　先回りされて釘を刺されたが、興味深い話を聞けて真っ黒く口角を釣り上げる骨削。
　そして、黙りこくる他の面々。
「皆様、今回ばかりは、この塔で起こった今までの事件とは異質なもの。あまり深入りせず、今は城下町の防衛に専念していただき……」
「そうはいかない」
　サキリがフランチェスカの言葉を遮った。
「そうだよ、ボクたちはステラちゃんを助けたい。この街を守りたいんだよ」
「水臭いなぁ？　もう私たちだって『関係者』なんだからね？」
　桜庭と白もこれに乗じて言葉を紡ぐ。
「今のではっきりしたぜ！　ステラは何も悪くねぇ！　だったら助けなきゃ、ヒーロー失格だぜ！！」
　風雲児も熱く訴え掛ける。
「俺も、皆と同じ意見だ。フランチェスカ、お前ひとりで戦っているんじゃない。俺達が一緒に戦う！」
　御剣は力強く告げた。
　だが、骨削はニヤニヤするだけで無言だった。
（町の危機になぞ興味は無いよ。悪だくみは何かと物入りだからねぇ？）
　どうやら、骨削は懸賞金が目的のようだ。
　ここに来たのも、やみくもに探すよりも情報を得てから探した方が効率が良いと踏んだまでの事。
　正義の『せ』の字も持ち合わせていない様子。
（それに、うまくいけば、金貨以上の価値の代物が手に入るだろうねぇ？？）
　くつくつとくぐもった笑い声と共に、何やらよからぬ企みもしているようだ。
　フランチェスカの目から、一筋の涙がこぼれ堕ちる。
「……ありがとうございます、皆さん。あなたたちには、何度、世界を救ってもらったか分かりません。厚かましいですが、今一度、このサジタリオ城下町を共に守ってください……！」
　フランチェスカが懇願すれば、その場にいる誰しもが（骨削も形式上、怪しまれないように）首肯してみせた。

　と、その時、談話室の外がやけに騒がしくなる。
「通してくだされ！　俺は、ふらん殿に面会に参っただけでござる！　すぐに用件は済むと申しておるではござらぬか！？」
「駄目ですよ！　今は他の方と談話室で会談中です！　もう少し待ってください！」
「火急の知らせでござる！　この非常時の状況下で何を悠長なことを！　ええい、放してくだされ！　ふらん殿ー！！　急ぎ、俺の話を聞いてくだされー！！」
　ドタバタと談話室の扉が揺れたかと思えば、ドカンッと勢いよく開け放たれた。
　そこから、弾丸のように飛び出した小犬丸と、御付きのメイド数名が追い掛けて談話室に乱入してきたのだった。
「探しましたぞ！　ふ・ら・ん・ど・のぉぉぉぉ！！」
「きゃあああああああああああ！？」
　必死の形相で迫る小犬丸に驚いたフランチェスカは、悲鳴をあげながら談話室のテーブルの周りを逃走。
　それを追う小犬丸と、小犬丸を追うメイドたち。
　数秒前までシリアスだったとは思えない目の前の光景に、骨削は笑い転げ、他の面々は遠い目でソーダ水を飲み干すのだった。