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五月のあの日に絡めた指の感覚がまだ残っている。
(せんぱい……)
梅雨の晴れ間の眩しく熱い日差しの下、
来島 アカリ
は藍色の睫毛を伏せる。金色の木漏れ日に目もくれず、薄紅の瞳に映しているのは己の指先。
あの日、
ロベルト・エメリヤノフ
が白い指先を絡めてきたその手。そうされることを望んでいると思っていたのに、振り払ったその手。
あの日は結局、一人暮らしのアパートにロベルトを残し星ヶ丘の実家に帰った。一晩をまんじりともせずに過ごした挙句、次の日にアパートに戻って、
――あ、おかえりー
何事もなかったかのようにケロリとした顔のロベルトに迎えられた。だから、
(どうしてあんなことをしたんですか、先輩)
あの日以来、その一言をなんとなく切り出せないまま、何も聞けないまま、時間ばかりが過ぎている。
(……知ってる)
美少年を愛するロベルトにとって、自分はきっと、たくさん居る愛でるべきものたちのうちの一人にすぎない。その中でも、その他大勢の部類。
(知ってるってば)
好きになったからこそ、思い知っている。自分は彼の『理想の美少年』像には及ばない。
告白もしている。返事を待ち続けてもいる。だからこそ知っている。自分からの好意を、先輩は嬉しいと感じてくれはしているけれど、どうしたものかと持て余してもいる。
(この顔が先輩の理想の形をしてたら良かった、のかな……)
もしもそうであれば、先輩はもっと積極的に自分に手を出して来てくれるのだろうか。一度跳ね除けたくらいでは諦めず、二度三度と手を伸ばして来てくれたりするのだろうか。あの日の続きを、してくれるのだろうか。
(……いったい、何がいけないんだろ)
わからなかった。
自分がどうしたいのか、先輩にどうして欲しいのか。
空を仰ぐ。梅雨の晴れ間で今日はこんなに眩しい天気なのに、気持ちはずっと梅雨空のまま。
小さな息を零し、通学路に視線を戻す。今日はもう大人しくアパートに帰ろう。愛猫と戯れていれば、少なくとも時間だけは案外早く過ぎる。
歩みを進めようとして、立ち止まる。道の先、出来れば今は会いたくなかったひとが立っている。
(いや、今日も先輩うちから学校へ行ったけど)
野良猫のように色々なひとの家で寝泊まりする生活をしている彼が、なんだか呆然とした背中を見せて立ち尽くしている。
(……あれ?)
掌をぼんやり見下ろす。初夏の日差しにあっさりと負けてしまいそうな白い指は、何も持っていない。
(僕は……)
『僕』は誰だろう。
何をしていたのだろう。
立ち尽くして考える。記憶を辿ろうとして、辿るべき記憶を何一つ持ち得ていないことに、たった今、思い至った。
(思い出せない)
ぼんやりと傾く視線の端、自分のものらしい赤毛が見えた。
(これってあれだよね、記憶喪失)
どうしてだか然程の危機感は抱いていない。しばらくしたら思い出せるかな、と他人事じみて思う自分もいる。
とはいえ、自分の名前も分からないのは落ち着きが悪い。
見下ろした自分の身体は中肉中背、男性としては少し小柄な部類に入るのかもしれない。
(高校の制服と通学鞄、かな)
手持ちのものを確認する。自分が何歳なのかも覚えていないけれど、成長途中、といったところか。
鞄を開いて漁り、生徒手帳を発見する。空の弁当箱もあるということは、今はたぶん、学校の帰り道なのだろう。黄昏に傾く日差しから鑑みても、それは間違いない。
(誰が作ってくれたんだろう)
自分が作ったとはどうしても思えない上に、弁当箱の包みも若干自分の好みからは外れている、ような気がする。
不思議に思いながら生徒手帳をぱらぱらと捲る。挟まれていた学生証を見つけ、
(ロベルト……?)
なるほど、と自分の名前らしい文字を眺める。
ロベルト・エメリヤノフ
。それがおそらく、自分の名前。
(それで、……えっと……)
名前は分かったものの、どうすればいいのかはやっぱり分からない。帰る家もさっぱり忘れてしまっている。
学生証と生徒手帳を鞄に押し込み、ぐるり、周囲を見回す。右を見ても左を見ても知らない住宅街。ここはどこだろう、自分は誰だろう。
(うん、間違いなく記憶喪失だ)
どちらに進もうかと踵をくるりと回して、ハッとする。
(あれは……)
思わず瞠った視線の先、
(美少年!)
空より蒼い藍の髪した桜色の瞳の少年が立っている。
背丈は自分と同じほど、けれど首が細い肩が細い。華奢と言ってもいいほどに未発達な体つきした少年の姿に、知らず目が釘付けになる。
(なんだろう)
もしかしたら知り合いなのかもしれないとちらりと思うも、それよりも強く思う。
(なんだかすごく……)
自分も彼も、同じ高校の、男物の制服を身に纏っている。同性同士には違いないのに、
(ナンパしなきゃいけないような気がする!)
迷うことなく駆けだす。
「君可愛いね!」
記憶はないくせに、ナンパの台詞はすらすらと口をついて出た。だからたぶんこれは、彼が自分にとっての特別というわけではなく、元より自分がこういう性であるからなのだろう。美少年をナンパすることは、自分にとってきっと習性に近い。
「よかったらこの後どっか遊びに行かない?」
「……え、ロベルト先輩……?」
身構えるように瞬きを繰り返す可愛い顔よりも、桜色した唇から不思議そうに零れた自分の名に思わず目を丸くする。
「……僕の事知ってるのかい?」
「知ってるも何も……今朝うちから出掛けてったじゃないですか」
不審げに言われたところで、
「そうだっけ……?」
覚えていないものは仕方がない。
「ごめん、覚えてない」
悪びれもせずに言ってのけてみせてから、満面の笑みを向ける。
「遊んでくれる? くれない? 名前なんて言うの?」
淀みなくナンパを続行する。自分の記憶なんかよりも、可愛い顔をしたこの少年と遊ぶことの方が今は大事。
(まあ、それに)
どうやら彼は自分のことを知っている様子。であれば、
(せっかくだからついて行こうっと!)
そうすれば、記憶がないまでも昨日のようにこの少年の家に泊まらせてもらえるかもしれない。
打算じみて思ったところで気が付いた。鞄の中に入っていたお弁当は、きっとこの少年が作ってくれたものだ。
「……別にいい、ですけど」
「ほんと? やった! ええと、」
「あ、えと……来島アカリ、です」
戸惑ったように応じる彼は、記憶喪失というこちらの事情をどう思っているのだろう。憐憫だろうか、友情からの心配だろうか、それとも、万が一億が一の恋情からの悲嘆だろうか。
部屋に泊めてくれて弁当を作って持たせてくれる仲、というのはどういう間柄なのだろうと一瞬思案したものの、
(まあいいや)
すぐに思考を投げ出す。そんな些末時よりも、今は目の前の美少年と仲良くなることが一番大事。どうしてそう思うのかなんてよく分からないけれど、記憶を失う前かららしい習性に従っていた方が落ち着きがいい。
(それが僕、なのかなあ)
過去も未来も関係ない。今が良ければとりあえずは良し。
「アカリ! 可愛い名前だね!」
記憶喪失であるはずのロベルトから、記憶喪失であることを感じさせぬ明るい笑顔を向けられアカリは戸惑う。
(からかわれてる……わけじゃない、よね)
嘘ではないと思う。
そもそも、そんな嘘を吐いて自分をからかうようなひとではない。それに、
「アカリ!」
何の屈託もなく名を呼ばれ、何のためらいもなく手を掴まれ、アカリは小さく息を呑む。呼ぶ声は一緒、名を呼び捨てる呼び方も一緒、それなのに、どこか違う気がする。いつもはもっと、親しい風に呼んでくれる。いつもはもっと、
(いつもと、違う)
呼び方も、手の繋ぎ方も違う。こちらを振り返って見る眼差しも違う。
「可愛いね」
挨拶のようにかけてくる誉め言葉でさえも、なんだかいつもと込められた感情が違う、ように思う。
(もしかすると、たぶん)
今自分は、先輩から『理想の美少年』として見られているのではないか。接されているのではないか。
「……ありがとうございます」
誉め言葉にいつもと同じように素っ気なく返しながら、手を引かれて歩き始めながら、アカリはうつむく。
(落ち着かない)
ひどく大切に扱われている気がする。それは嬉しいことのはずなのに、微塵も嬉しいとは感じられなかった。
(何でだろ)
「どうかした?」
「あ、……いえ」
覗き込んでくる栗色の瞳に首を横に振る。人懐っこい猫のように微笑み、気まぐれにあちこちを見回すロベルトは、けれどアカリのことも、自分自身のことさえも覚えていない。
ちっとも嬉しくないのは、そのせいだろうか。
「ロベルト先輩」
小さく呼びかける。
知らない周囲を見回すことに夢中になっているのか、自分の名が呼ばれたとは気付いていないのか、ロベルトは振り返らない。
名前を呼ばれているのに、自分が呼ばれている気がしない。
「アカリ!」
顔を見て笑ってくれているのに、自分を見てくれている気がしない。
「アカリ!」
手を取られた。黄昏の光を背と紅い髪に受けて、ロベルトが笑っている。
「これからどうしようか、アカリ」
悪戯っぽく覗き込まれて、たぶんいつものロベルトの仕草であれば何かしら心が動いたはずなのに、今は感情が動かない。それどころか、
(すごく寂しい)
大好きなひとが隣にいるのに。親し気に手を繋いでくれているのに、笑いかけてくれているのに。いつもなら、そのひとつひとつが照れくさかったり嬉しかったりするのに、
(寂しい)
そう思ってしまうのは、隣にいるこのひとが自分を見ているようで見ていないからだ。記憶を持たないロベルトが見ているのは、『来島アカリ』というひとりの人間ではない。
「アカリはね、僕の理想にぴったりなんだよ」
「……そう、ですか」
『理想の美少年』という概念だけを、ロベルトは見ている。
(ずっと、先輩の『理想の美少年』に拘ってたけど)
そうなりたいとも思っていたけれど、違うのかもしれない。
ロベルトに見て欲しいのは、きっとそういうことではない。
(俺が好きになったのは、俺を『理想の美少年』としてしか見ない先輩じゃない)
だから寂しかった。とても。
今の先輩は、自分を絶対に見てくれない。『来島アカリ』というひとりの人間としては、絶対に。
「帰りましょう、ロベルト先輩」
「泊めてくれるかい?」
「先輩の荷物も、俺の家にありますから」
それに、このまま当て所なく歩いていてもロベルトの記憶はきっと戻らない。そんな気がする。
今の状態のロベルトを放っておけば、別の『理想の美少年』を見つけてついて行ってしまう。下手をすれば五月のあの日のようなことをその『理想の美少年』に仕掛けかねない。
(それは嫌だ……すごくすごく、嫌だよ)
考えただけで泣き出したくなる目元をぎゅっとしかめ、アカリはロベルトの先に立つ。シーサイドタウンの西方にある一人暮らしのアパートに連れて行く。
「見覚え、ありませんか」
「んー、……ないなあ」
いつもよりゆっくりと歩き、いつもロベルトと歩きながら何気なく見てきた風景を今のロベルトに見せる。近所に咲く紫陽花、たまに缶ジュースを買う自販機、いつも同じ場所で寝ている猫。何を見せたところで、ロベルトの瞳にはさしたる変化も起きなかった。初めて見るように物珍し気に周囲を見回すばかり。
「……何か思い出しました?」
「いや」
自宅のドアの前に立ち、鍵を差し込みながらそっと問う。あまり困っているようには見えない表情で、ロベルトは首を横に振った。
「全然思い出せない」
「そう、ですか……」
帰宅するまでのロベルトの様子で、記憶に関しては然程期待はしていなかったものの、実際にそれがロベルトの言葉で確定されてしまうとやはり少し落胆はする。
「早く戻るといいんですけど」
「うん、」
ふわり、ロベルトは微笑む。
「僕も出来るだけ思い出そうと、……」
「僕も、……ですか」
ロベルトの言葉に知らず唇が引き攣る。自分だけが必死になっているような気がした。思わず呟いてしまった声に棘を感じたのか、『理想の美少年』の機嫌を損ねたと感じたのか、背後のロベルトの気配がほんの少し焦る。
「……頑張ってみる」
「……そうしてください」
鍵を開ける。ドアの向こうには飼い猫が待ち受けていた。
「猫がいる」
「ウィルです」
ロベルトの異常を一目見て感じ取り、いつもよりもロベルトから距離を置く様子の愛猫を抱き上げる。
「……うどん、って呼ばないと返事しませんけど」
主の暗澹とした気持ちを読み取ったのかいつもより抵抗しない愛猫を一撫でして、靴を脱ぐロベルトの脇にそっと下ろす。先に部屋に入り、床に鞄を投げ出す。本当はこのままベッドに入って眠ってしまいたかった。
(朝起きたら先輩も元通りになってたり、……しないかな)
「お邪魔しまーす」
ウィルを抱き上げ、初めての仕草で部屋に入ってくるロベルトを見遣る。いつも適当に床に置く鞄は玄関の端に控えめに置いたまま、いつも勝手知ったる顔で座るソファにも座らないまま、どうしたらいいのか分からない顔でぼんやりと立ち尽くしている。
頑張る、という言葉の通りに記憶を探っているのか、注意深い眼差しで部屋中を見回してはいる。けれど、もしかしたら本人は然程危機感も不便も感じてはいないのかもしれなかった。
(それはそうかも、か)
『理想の美少年』の家に上がり込んでいる。宿泊の許可も得ている。
(……だめだ)
気づけば尖った気持ちばかりをロベルトに感じてしまっていることに思い至って、アカリは自分自身が嫌になる。寂しさばかりが先立って、ロベルトに嫌な態度ばかりを取ってしまっている。
「ロベルト先輩」
「ん?」
「弁当箱、出してください。片付けます。……それが終わったら、夕飯にしましょう。簡単に済ませて、今日はもう早めに寝ちゃいましょう」
寂しさが抑えきれないときは、眠ってしまうのがいい。寝て起きて、朝になれば、ロベルトの記憶も元通りになっているかもしれない。せめて今はそれを願おう。
ロベルトが鞄の中から出してきた弁当箱を受け取る。自分の分と合わせてシンクで洗いながら、
(そうか、俺は)
ふと気づいた。
自分の力でロベルトの記憶が取り戻せるとは思っていない。アカリをアカリとしてではなく、『理想の美少年』としてしか見てくれない記憶喪失状態のロベルトを、この手で元に戻せるなんて思ってもいない。
だって、自分はロベルトにとって特別な存在ではない。
記憶を取り戻す手掛かりとなれるような存在ではない。
(……ああ)
洗い物をしながら泣き出したくなる。
好きなひとにとっての自分は、彼の理想の姿かたちでもなく特別な存在でもない。その他大勢のうちの、ひとり。
(だめだ……)
それでも、と思う。それでもいつかは、と思ってしまう。そう思ってしまう自分自身さえ、今は辛かった。どうしてあのひとでなければならないんだろう、とまで思うに至り、アカリは流し台の水音に紛れさせて押し殺した溜息を吐く。
苦しい思いを抱えて夕飯を作る気にはもうなれなかった。
「すみません、ロベルト先輩」
床でウィルと遊ぶロベルトに食器棚の脇に備蓄しているカップ麺を示す。初夏の汗に濡れた衣服を脱衣所の洗濯機に放り込み、ロベルトに背を向ける格好でソファに転がる。
「え?」
意外そうな声を上げたロベルトは、
「一緒に寝よう?」
夕飯についての文句を言いたいのではないらしかった。肩に触れられ、アカリはロベルトを見遣る。部屋にひとつきりしかないベッドをちらちらと見、ロベルトはどこか物足りなさそうな顔をしている。
(いつもは一緒に寝てるけど、……)
いつもは一緒の布団に入っても、ただ一緒に眠るだけだった。けれど今の状態のロベルトとベッドに横になれば、きっと、あの日の続きに至ってしまう。
(嫌だ)
それだけは、嫌だった。ロベルトにとっての『理想の美少年』にはなりたくなかった。自分は自分のままで、ロベルトからのまなざしを受けたかった。
「だめです」
ロベルトからの頼みは拒否する。
「な、なんで!」
「ベッドは交代で使ってるんです!」
肩に触れる手を払いのける。
「今日は先輩の番なんで!」
言い訳じみていると思えば思うほど、威嚇するように声が大きくなった。
「……そ、そう、……なのかい?」
勢いに押されてか、ロベルトの声が小さくなる。
「でもソファって眠れなくないかな?」
不満そうに呟くロベルトに、もう一切何も答えない意思表示としてソファで丸くなりながら、アカリはぎゅっと瞼を閉ざす。
(……早く戻ってよ、先輩)
漏れそうになる嗚咽を噛み殺して、駄々っ子のように祈る。
薄明に瞼を開く。眠りながら泣いていたのか、少し腫れている気がする瞼を擦る。ソファから転げ落ちる格好で下り、床の上で伸びをして、
(……せんぱい)
ベッドに瞳を向ける。丸くなって眠るロベルトの背中をしばらく見つめるも、起こす勇気はなかった。そっと立ち上がり、身支度を済ませて朝食の準備に取り掛かる。
一晩眠って、気持ちは落ち着いた。
(俺は、……)
ロベルトの理想にはなれないかもしれない。
特別には、なれないかもしれない。
けれど、もしも自分が先輩の理想であり特別であったりしたら、そうであったのなら、
(俺は先輩のこと好きにならなかった)
そう、思う。
ロベルトのためにパンを焼き、ベーコンエッグを焼き、サラダを作る。合間にお弁当を作ることも忘れない。
(俺は、先輩が好き、だから)
寂しがりで、甘えん坊で、どうしようもないひと。けれどどうしようもなく、好きなひと。
ロベルトが自分のことをなんとも思ってなくても、
(……今は、)
「あ、アカリ!」
やっと導き出した自分の結論に微笑んだ瞬間、背後にロベルトの声を聞いた。
振り向かずとも分かる。呼び方は昨日と変わらないけれど、耳朶に響く声音が違う。いつもの先輩の声だ。
「記憶……戻ったんですか?」
それでもまだ僅かに怖くて、そっと問う。
「えっと、うん、記憶喪失だったみたいで……もう大丈夫だよ」
なんで忘れてたんだろう、と首を捻るロベルトに、アカリは振り返って何でもないように明るく笑いかけた。
「ならよかったです、このまま戻らなかったらどーしよーかと」
おどけた仕種さえ見せてから、
「……もう、俺のこと忘れないでくださいね」
そっと、そうっと、付け足す。
「ん? なに?」
「なんでもないです」
聞き返されても答えない。これくらいの、意地悪とも言えない意地悪くらいは許してもらおう。
「それより朝ごはん出来てますよ」
「やったぁ!」
無邪気に喜ぶロベルトのために紅茶を淹れながら、アカリは願う。
(……今は、少しだけ傍に居させて欲しいな)
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3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年04月26日
参加申し込みの期限
2018年05月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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