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セピア色に古びた頁を捲ろうとした指がふと止まった。
下手に力を籠めれば破れてしまいそうな古い紙に目を落とす。
(……台本?)
台詞とト書きが入り混じった文章を数行辿り、目を離す。紙を摘まむ指に違和感を覚える。
意のままに動くこの指が、自分のものであるには違いない。それでも感じる違和感の元は何なのだろう。
(細い)
繊細ささえ感じられる、肉が薄く骨の細い指を眺める。矯めつ眇めつする間にも骨が浮き血管が透けて見える色素の薄い手の甲を、几帳面なほどに整えられた爪を見つめる。
台本を閉ざす。本を開いていた机に手を置き、掛けていた椅子から立ち上がる。
(俺は、……)
心に浮かび上がった一人称にさえ違和感を覚えて、少し焦る。
(俺は何をしてたんだっけ)
そもそも、
(俺って誰だっけ)
何も、思い出せない。思い出せなくなってしまっている。
己を思い出せぬまま、己を囲むものへ頭を巡らせる。視界の端、己のものらしい雪色の髪が見えた。
目についたのは、スチール製の本棚。
高校のものらしい教科書を見つけ、己は高校生なのだろうと見当をつける。ベッド際の壁にハンガーで掛けられた高校の制服、机の脇の学生鞄。部屋を眺めた限り、その判断に間違いはない。
自分の年齢さえ記憶にないことに狼狽する。眉間に皺を刻み、奥歯を噛みしめ、震える息を吐き出す。
無機質な本棚には、そう分厚くはない本が百冊単位で並んでいた。古びた背表紙の一冊に手を掛けて引き出す。
それは表紙に何名か分のサインが書き込まれた古い台本だった。
文字の態も成していないサインを読み解く気にはなれず、棚に戻す。
(演劇部、……とかではない、かな)
違う、と思う。部活動の一環としてしまうには、数があまりにも多すぎる。高校生という年齢に合わぬ古いものさえある。
(多分、……)
たぶん、『俺』は幼い頃から俳優か何かを目指しているのだろう。
(そして、)
あまり趣味がない。
本棚には台本の他に演劇論等の難しそうな本に教科書や参考書ばかり。学習机にも参考書と筆記用具ばかりが並んでいる。趣味のものなどなにひとつ見当たらない、シンプルと言うよりも殺風景な部屋。
机の隅に見つけたスマートフォンを起ち上げてみる。部屋と同じに無機質な画面には、ほとんど初期状態のアプリが整然と並ぶばかり。高校生男子が手を出していそうなゲームアプリのひとつとしてないスマホ画面に息をひとつ吐く。
友人や興味を覚えたものがないかと画像フォルダを開いてみても、映っているものはほとんどなかった。間違えて起動した際に偶然撮れたものの、撮れたことすら気づかず放置しているような画像データばかり。
必要なものしか置いていないらしい部屋をもう一眺めする。記憶の手掛かりになるものはなさそうだと判断し、一先ず部屋を出る。
清潔と言えば言葉はいいものの生活感の感じられない廊下を渡る。明かり取りの窓の外は暗い。車道を走る車の音も歩く人の気配を感じられない。そういえば、先ほどスマホに記されていた時間は深夜に近かった。
なのに、この家には自分以外の人の気配がしない。誰の体温も感じられない。――自分自身のものさえも。
月明りの欠片ばかりが転がる廊下の向こう、光が見えた。さわさわ、ざわざわ、賑やかでありながらも抑えた音がする。つけっぱなしのテレビから流れだしている音であるのはすぐに見当がついた。
開け放ったままのドアをくぐる。電気の眩しさに少し目をしかめる。ソファにテレビ、モノトーンのラグが敷かれたそこはリビングなのだろう。
知識にあるリビングは家族の集まる場所という認識であるのに、
(……空っぽだね)
自室と同じに、ひどく殺風景な空間に思えた。家族の居た気配が感じられない、家族が集まるだろう場所。
テレビに瞬くカメラのフラッシュが目障りだった。檀上に立つ人物に向けられる取材陣の甲高い声が耳障りだった。不快に眉を寄せ、テーブルに置かれたリモコンを手にする。電源ボタンに指を掛けたところで、
『如月さん!』
『今回の映画の演技について一言お願いします』
『如月さん――』
忙しなく瞬くフラッシュと共、同じように忙しない声が耳に入った。
檀上に立つ『如月』と呼ばれた俳優が穏やかに微笑んでいる。
雪色の髪に彩られた端正な顔に、ひどく目を惹かれた。それと同時、ひどく、
(……なに?)
己の記憶と同じに空っぽだったはずの胸に、知らぬ感情が滲んだ。見る間に湧きだし、胸を満たしてふつふつと沸き始める。その感情につける名前に見当がつかず、動揺する。
(なんていうんだろう)
この感情は、なんなのだろう。
嫉妬か。
羨望か。
浮かんだ言葉は、どれも似ているようで違う気がした。
己の胸に湧きだす感情は、己の記憶の手掛かりで間違いなかろう。狂おしいほどのこの感情が無意味だとは思えない。テレビに映り、衆目を集める『如月』という人物は、己ときっと何かしら関係がある。
思案し、指で顎に触れる。
テレビの中、インタビューを受けた『如月』が同じ仕草をしていた。無意識のうちの己の動作にぎくりとする。リモコンをテーブルに投げ捨てる。リビングを出、足を向けたのは風呂場脇の洗面台。
思い立った場所へと自然に足が向いたことを不思議に思う余裕もなく、洗面台の鏡を覗き込む。
薄暗い鏡の中には、先ほどの俳優と同じ雪色の髪があった。よく似た整った顔立ちの少年が蒼白い顔で珊瑚色の瞳を瞠っていた。
(……ああ)
悲嘆なのか安堵なのか、それすら判別のつかぬ息がかたちの良い唇から零れて落ちる。
(似た顔だ)
如月。それが『俺』の苗字なのだろう。
テレビに見た俳優よりも年若い顔に触れる。冷たい指に触れられ、冷たい頬が歪む。
『如月さん!』
『今回の映画の演技について一言お願いします』
『如月さん――』
聞いたばかりの取材陣の声が頭の中で喚いている。
「喧しい」
歪んだ唇から吐き捨てた己の声の低さと忌々しさに、知らず瞳までが歪んだ。
(……わからない)
自室に見た百冊単位の台本を思い出す。記憶が失せる前の『俺』が、唯一興味を持ったものが演技なのだと思った。思っていた。
(親に影響されたのか)
やらされたのか。親と同じ道を歩めと命じられ、従ったのか。『俺』はそういう人間なのか。
己に向けた呟きが詰問となった。
『俺』がただひとつ大切に握りしめていたものは、親から与えられたものだったのか。それさえも自分で掴み取ったものではなかったのか。
『俺』は演技が好き。それが唯一とも言える趣味。
そうなのだと思っていた。記憶を失って、今の今まで。けれど、
(わからない)
『俺』が何もわからない。何一つ思い出せない。
頬を歪ませた指で顔を覆う。鏡に映る自分から顔を背けた途端、足がもつれた。体勢を立て直す気力もなく、その場に膝をつく。
(俺は)
『俺』は、誰だ?
それすら分からず、途方に暮れる。
リビングから微かに聞こえるテレビの騒音に唇を噛んだ。深夜の静寂の内にあって、その音はざりざりと皮膚を掻き毟るように癇に障る。
苛立ちを力にして立ち上がり、リビングのテレビを消す。煌々と灯る電気も消し、自分以外に誰も居ない家の自室に籠る。
(俺は、誰なんだろうね)
思い出せない。焦燥感と不安ばかりが覆い被さって肩が重くなる。立っていることさえ億劫になってベッドに倒れ込む。仰向けになり、虚空を見つめる。
(何もない)
でも、とふと思う。
記憶を保っていたとしても、『俺』は空っぽだったのかもしれない。これが『俺』だと断言できるものは何ひとつ持っていなかったのかもしれない――
雪色の髪に珊瑚の瞳した少年が立っている。びょうびょうと吹き荒ぶ風の只中に立ち、髪と同じ色した長い睫毛を瞬かせ、何もかもを見透かすような透明な眼差しを向けてくる。
「俺は、誰なんだろうね」
甘やかに微笑むままに問われた。
答える術を持たぬうち、彼は笑みを深める。
「親の七光りで演技を始めたのが俺?」
違う、と言おうとした唇が凍りつく。舌が膨らんでいるかのように喉を圧迫してうめき声すら発せられない。吹き寄せる風の冷たさに手足が感覚を失くす。痺れた体で身動ぎも出来ず、ただ少年の言葉を受け止める。
「プライドが高く負けず嫌いなのが俺?」
少年がどこか芝居じみた動作で首を傾げる。ねえ、と珊瑚の瞳が嘲笑の色を帯びて細くなる。
蔑視を受け、胸に怒りじみた感情が鎌首をもたげるも、彼の言葉に応える言葉を持たない。
今はそれすらも思い出せない。
『俺』は誰なのだろう。目前に立つ彼は誰なのだろう。
「ピエロのようにニコニコと笑って、本当の自分を隠しているのが俺?」
彼が手を伸ばしてくる。白く細い指先でこちらの頬を挟み、珊瑚色の笑み孕んだ瞳でこちらの顔を覗き込んでくる。
「ねえ、」
紅い瞳の中には、少年と同じ顔した『俺』が映っていた。
「俺は、誰なんだろうね?」
額が触れ合うほどの近くで、『俺』は『俺』を見据える。
「そんなの、……わかってる」
呟いた刹那、すべてを思い出した。胸に広がる、凍えるほど冷たくもあり火傷するほど熱くもある『俺』の記憶に、思わず一度瞼を閉ざす。
目を開いたとき、その場に居たのは『俺』ひとりきり。
突き刺すような風ばかりの吹く闇の中、行先も分からぬまま、せめて背筋を伸ばす。
「全部、
如月 蘇芳
だよ」
目を開く。見慣れた自室の天井があった。
眠り過ぎたのか、片隅が痛む頭を押さえて起き上がる。
(不思議な、夢を)
見ていた気がする。
窓の外、払暁の朱が染めている。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年04月26日
参加申し込みの期限
2018年05月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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