this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
三歩進んで、
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
8
つぎへ >>
頭上を鳥が鳴いている。
踏み出した足元から立ち昇る雨と土の匂いに笑みを含んで瞬いた途端、耳元で軽い羽ばたきがした。
咄嗟に頭の脇に手をやってから、気づく。これは、自分の耳の音。白い鳥の翼のかたちした、この耳が揺れてたてた音。
もうひとつ、気がついた。
記憶がない。なにひとつ。
(私は誰で、)
身に纏った、白を基調としたフードつきの外套を見下ろす。羽のかたちの耳に触れていた手を下ろし、薄い胸元を鮮やかに彩る紅色したリボンに触れる。こどものように細い指先に、こどもじみて細く華奢な身体が触れる。細いというよりも、薄い。風に流されてしまいそうなこの身体の主が己なのだと認識するまで、少し時間がかかった。
ぱらぱらと雨粒が降ってくる。
瞼にかかる冷たい滴に瞬きつつ、首をもたげる。青空を覆って重なる梢から、金色の木漏れ日ととも、雨雲の名残が落ちてきている。
雨上がりの森の中、ひとり佇む。
(そもそも、なんでこんな所にいたんでしょう……?)
不思議に思いながらも、身は軽かった。自分のことも、自分を取り巻く環境のことも、なにひとつとして覚えていないその癖、
(叩いたらカーンって音がしそう)
空っぽの心は雨上がりの空に似て澄み渡っている。
思いがけない解放感を胸に、雨に降られてふわふわと弾む腐葉土を踏んで歩き始める。ここがどこかもさっぱり覚えていないけれど、歩いて行けばきっと道に出る。道を辿れば町に出る。町をそぞろ歩けば、何かしら思い出せるかもしれない。
何にも思い出さなくても構わない気もした。
このまま、空っぽの心と体のまま、風に流されるまま生きて行くのも悪くない。そう思う心の端っこ、
(……さびしい)
何も思い出せないのは寂しいと繰り返し呟く自分もいる。
雨の匂いの風が眩しい木漏れ日を纏って踊る。初夏の森は、色鮮やかに賑やかだ。山吹色や撫子色した名も知らぬ花が、数え切れぬ金剛の水珠を宿らせ揺れる。
自分ひとり以外には誰もいないその癖、とても賑やかな獣道を下って、しばらく。
木立の向こう、明るく開けた道が見えた。そこを歩く数人のひとの姿も見えた。
声を掛けようとして思いとどまる。道を行く誰も、翼のかたちした耳を持っていない。
(他はよく似ていますが……)
誰もが、貝殻を伏せたような耳のかたちをしている。
(……となると)
薄紅色した髪の間でふわふわと揺れる左右の羽耳に両手で触れる。
(私はフツウじゃない存在、ということでしょうか?)
道を行く人々を無闇に驚かせてしまうのも申し訳ない。フードで耳を隠してから、記憶を失う前の己もこうして耳を隠していたのだろうかと思い至った。
耳を隠し、整備された道に出る。ふわり、道ならぬ場所から飛び出てきた少女に少し驚いた風を見せながらも、通りがかりの人々は朗らかな挨拶ひとつを残して山道を登って行った。
「こんにちは」
同じように挨拶を返し、同じように道を登るか、それとも下るか迷う。
(うーん……)
道を下った方が町に出そうだと判断し、軽い足取りで山道を下る。幾人もの登山客とすれ違い、そうしながら、首を傾げる。
(隠れてたのかなぁ)
出会う誰もが、貝殻の耳をしている。衣服の印象も、己が纏っているものとは違う気がする。何が、とは言えないけれど、例えば縫製、例えば布地。時代が違うというよりは、世界さえ違う、そんな感じがする。
記憶が戻らぬ限り、その辺りのことは分からぬままの可能性がある。
(耳は、やっぱり隠したままがよさそうですね)
判断を下す。その判断は正しい気がした。己はたぶん、かつてひとと違うことで
何かしらの損害を受け、そのために生存にかけての勘は鋭いのではないか。そう思った。
「……ふふ」
小さな笑みが零れて落ちる。
(大丈夫ですよ)
記憶がなくたって、どこに迷い込んだって、生きて行ける。そう思う。自分は、そう思うことができる。
山道が樹を組み合わせた素朴な階段となり、砂利道となり、土を固めた道となる。左右に広がっていた木立が二階建ての民家や立派な屋根の商家となる。
行きついた街は、どうやら山腹に何かしらの神様を祀った大きな社を戴く参詣の町であるらしかった。参道であるがゆえに、道の左右には商家が多い。
金色の管楽器を並べて飾る楽器屋、見慣れぬ民芸品の土産屋、小ぢんまりとした居酒屋兼食堂。そのくせ、ところどころにぽっかりと、突然猫の額のような小さな畑が在ったりもする。
(……うーん……)
楽器屋の前を通り過ぎかけた足が緩まる。玉蜀黍が青々と茂る畑の脇で歩みが止まる。さびしい、と心の端で呟いていた自分が、楽器を見ては畑を見ては小さな声をあげている。けれど、その声を今の自分は上手く拾い上げることができない。
失せた記憶の何かしらが、おそらくは記憶に至る手掛かりが目にしたもののうちらにあるのかもしれない。そう思うのに、どれもこれもが濃い霧の向こうに隠れている。
(何か、……何か)
霧の中に彷徨うように参道商店街を見回す。ともかくも、何かしらの手段で以て考えをまとめたい。雲のように掴み所を得ない記憶の取っ掛かりを得たい。
見つけたのは、ペンや紙の束を店頭に並べる文房具屋。
(えっと、ペンと……)
色とりどりにズラリと並ぶ極彩色のペンの数に惑わされつつ、手紙やノートの並ぶ棚の間を迷う。
(日記?)
棚の一角を埋める数え切れない種類の日記を目にして、不意に、記憶を隠す霧の一部が晴れた。霧の向こう、古びた日記が見えた。
(私は)
いつからか、毎日日記をつけていたような気がする。
重なったヴェールを一枚一枚剥がしてゆくように、少しずつ思い出す。日記には、悲しいことも綴った。つらいことも、苦しいことも、痛いことも。
それがどんなことだったかはまだ思い出すに至れないけれど、それでも、これだけははっきりと感じる。歩んできた道の上でどれだけの苦難を受けようとも、
(私の人生は、決してマイナスなんかじゃなかった)
そう信じて、胸に手を当てる。
未だ記憶を遮って心に濃く立ち込める霧の奥から、
――ペルはお人好しすぎる
やさしい、誰かの声がした。
懐かしい声が教えてくれた。
(ペル)
忘れていたひとつを思い出す。
(そう、私の名前はペルラ)
ペルラ・サナーレ
。自身の名前を魔法の呪文のように心に呟いた、その瞬間。
――ペル
親し気に名を呼んでくれる誰かの声が胸に響いた。それは、己の出自を示す声。生まれ育った隠れ里で己を育て、あの世界では最早滅びの道を辿っていた長命種の一族の仕来りに従い、己を里から放逐したひとの声。
――いつか、助けた人に裏切られてしまうよ
悲しい声を思い出す。己と同じかたちした耳を項垂れさせたかなしい笑顔を思い出す。
あのひとの言葉に、一族の仕来りに従い、旅に出た。世界の大半を占める短命種の人々に時に追われ、時に守られ、長い時を流れ流れて生きてきた。それが、
ペルラ・サナーレ
。
(けれど)
まだぼんやりと靄の掛かっている記憶の中にあるあの場所は、森の中だった。木造の素朴な建物が木々に隠れるように建てられていた。人々の姿は今この場所に生きる人々とそう変わらぬように思えるけれど、それでも衣服の印象が全く違う。
こつこつと地面に爪先を叩きつける。記憶の中では、靴先は樹の床を踏んでいた。こんな石のような冷たく硬い床ではなかった。
――この楽器は、俺たちの歴史なんだ
間歇泉のように吹き上がる記憶の中の景色は、今度は見渡す限りの草原。地平まで青く広がり軽やかな風に揺れる草野原に、彼の奏でる弦楽器の音はどこまでだって響いていった。
(そう、歴史)
日記は、いわば彼らの言う楽器だった。己の歴史そのものだった。
彼らがあの楽器を大切にしていたように、自分は日記をとても大事にしていた。長くどこまでも続くような日々を、大切に大切に綴り続けていた。
別の記憶が赤い火の色と共に瞼の裏を過る。こちらの記憶では、焚き火を見つめる己に誰かが軽やかに笑いかけてくれていた。夜空に響いているのは、草原で聞いたものとはまた違う音楽。流浪の一族であった彼が奏でた音とはまた違う音を耳に、
(私は)
あの時、もう一度楽器を弾いてみようと思った。
(そう、……そうでした)
はっきりとは思い出せないけれど、気づいたときに山中に立っていた理由はそれだったような気がする。あの夜に音を聞いた楽器は、星幽塔には見つけられなかった。だからこちらに――寝子島に、あの日の音と同じ音色を奏でる楽器を探しに来ていた、のかもしれない。
楽器を探そうかと、そうすればまた何かしらの記憶の手掛かりになるかもしれないと思いかけて、ふと思いとどまる。全ての記憶を取り戻すためには、楽器よりも日記の方がきっと早い。だってあの日記は、
ペルラ・サナーレ
の歴史そのもの。見つけ出すことが出来れば、きっとすべてを思い出せる。
でも、あの日記はどこに置いてきたのだろう。
何も持たぬ手を見下ろし、唇を軽く噛む。晴れようとする記憶を辿る。
(……拠点)
ふと浮かんだ言葉に知らず唇が綻んだ。
日記は、拠点に大事に隠している。はず。
そこまでを思い出して、頭を抱える。肝心の拠点の記憶が、頭の中でどうしても探し出せない。
(……うーん)
首を傾げ傾げ、文房具店を出て青空の光を小柄な身体ぜんぶに浴びて、
「……あ」
記憶を失った、と気づいた山中の森が思い浮かんだ。
一度思い出してみれば、確かに山中のあの場所が一番拠点に近い気がした。寝子島と星幽塔を繋ぐナニカがあるように思えた。
――ペルは相変わらず鈍くさいね
記憶の中の誰かが困ったように笑う。記憶を取り戻せば、その誰かが誰であったかも思い出せる。
ふふ、と笑みが零れる。胸の端、さびしいさびしいと繰り返していた自分はもう居ない。
(相変わらず、ですね)
記憶の中の誰かに笑い返す。
(でも、)
雨上がりの青空を仰ぐ。
(一人でも解決、できそうですよ?)
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
8
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
三歩進んで、
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年04月26日
参加申し込みの期限
2018年05月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!