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三歩進んで、
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涼しい風が吹き払った灰色の梅雨雲の向こう、透き通って青い空が広がっている。
海の匂いの風を身体に巻き付かせ、
椿 美咲紀
は自転車で坂道を下る。ブレーキを効かせて、のんびりと。
耳の後ろで風が踊る。結い上げた黒髪も風と一緒になって舞う。袖口から入り込んでくる風の冷たさが心地よくて、風になびく服の裾が楽しくて、小さな笑みが零れて落ちる。
くすりと笑って、ふと気が付いた。
(はて、)
ここはどこだっけ?
頭上には雨が芥を洗い落とした初夏の青空、自転車の車輪の下には幾何学模様を描いてお行儀よく並ぶ石畳。車通りの少ない、瀟洒な住宅地の緩やかな坂道の半ば、ブレーキをかける。両の爪先を地面につける。もう一度ぐるり、自分の周りを見回す。自転車の前輪が向いている坂道の下を見遣る。
知らず首が傾いだ。結い上げた髪がうなじをくすぐるのを感じつつ、眉間に皺を寄せる。どこに向かおうとしていたのかも、そもそもどこかに行こうとしていたのかすらも思い出せない。
(何か忘れちゃったな)
こくりと首を傾げたついで、真っ青に晴れた空を見上げる。
ふと我に返れば、自分についての何もかもを忘れていることに思い至った。
(ふーむ、)
自分はどこに行こうとしていたのか。
そもそも自分は誰なのか。
忘れてしまったあれこれを真剣な顔で考えて、けれど考えこんだのはほんのしばし。
小柄な肩をちらりと竦め、空に向けて瞳を細める。今はこんなにいい天気。ウッカリ忘れたことならば、
(はずみで思い出せるものなのです)
何もかもを忘れてしまっても、きっと何とかなる。そう思うのは生来の気性の故か、それとも記憶がないために得た楽観の故か。それを考えることもぽいと投げやり、初夏の朝の陽ざしに微笑む。
(少しぐらいアレコレ思い出せなくても、へーきへーき)
そんなことより、いい香りがする。
風に乗って届く花の頼りに、自分が誰かも分からないことに起因する僅かな不安も消し飛んだ。弾む心のまま、瞳を巡らせる。
右手の煉瓦塀を這ってクリーム色した花をいっぱいに咲かせる木香薔薇がまず目を惹いた。お隣の邸の白い柵からは鮮やかで艶やかな紅色した大輪の薔薇、乙女の頬のような薄紅を淑やかな純白で彩った蔓薔薇。瞳を捉えて離さない、幾種類もの、何輪もの薔薇があちこちの邸に咲き誇っている。
(薔薇率が高いです!)
道沿いに建つどの邸もどの邸も、屋根が高く、敷地が広く、庭が広い。どの庭も入念に手入れが施され、初夏の花が咲き乱れている。
色鮮やかな花々の中でも特に目を惹き特に種類多く植えられているのが、薔薇の花。
遠目に見ているだけでは足りなくなって、自転車を下りる。自転車を押して歩道をのんびりと辿る。目で追うのは、庭先に花開く薔薇。
(ガブリエル、ブルームーン、アプリコットキャンディ、)
心に湧きだす薔薇の名前に瞬きを繰り返す。
(私、は)
薔薇が好き。それからたぶん、他のどんな植物も。
赤煉瓦の塀に蔦を這わせ、央に薄紅を乗せた純白の花びらを綻ばせるオールドローズに指を伸ばす。胸を満たす花の香に唇を和らげる。この辺りに育つ子たちは、皆みんな、どの子も元気に咲いている。
どんな植物もそうではあるけれど、特に薔薇は、掛けられた手間暇と愛情の分だけ健やかに綺麗に咲いてくれる。
白い柵の上から大輪の花を見せてくれる真紅の薔薇に背伸びして顔を寄せる。
(ローテローゼ? オスカー?)
自分の記憶を失くしても覚えている花の名を心に呟き、愛情たっぷりに手入れされた薔薇を見つめる。眩しい日差しを浴びてつやつやと輝く葉には虫食いの跡ひとつない。枯れた枝や葉は綺麗に剪定され取り除かれている。咲き終えて萎んだ花は見受けられず、これはきっと庭の主が日々こまめに除いている証拠。
(今は色々丈夫で育てやすい園芸品種も増えましたが)
病害虫に強く、年々大きく花数を増やしてくれる強健種も出回ってはいるものの、それでも、薔薇という種の多くは放置していてすくすく育つものではない。
緑鮮やかな芝生の庭を彩る薔薇の色に目を細める。地植えの薔薇の傍には、紫や赤紫にピンクや白のペチュニアに始まり、ラベンダーやタイムなどの手のかからない子たちも元気いっぱいに花を咲かせてくれている。
ミツバチのように寄っては離れる風に花々の香が溶けて流れ出す。優しい花の香の風を胸に満たせば、心はふわふわと軽く弾んだ。
初夏のお花畑に寄り添うように、庭をぐるりと囲んで愛らしい薄紅色した蔓薔薇が咲き乱れている。それは美しい、のひとことに尽きた。
(美しいのです)
花を美しいと思える己の心に安堵する。自分のことを覚えていなくとも、この心は美しいものを美しいと思うことができる。それはたぶん、とても幸せなこと。
(これは、撮影案件なのですとも!)
息をするように自然に思い、息をするように自然に、自転車の籠に手を伸ばす。鞄の中から取り出したデジタルカメラを、それを極く自然に構える自分の手に、ちょっと首を傾げる。
自分がどうしてカメラを持っているのか、それも今は覚えていないけれど、それだって今はどうでもいい。今現在大切なのは、目の前で美しく咲いている花たちを写真におさめること。そうすれば、たとえ自分が忘れてしまっても画像として残すことが出来る。
柵の間から顔を覗かせる薄紅の蔓薔薇にレンズを寄せる。花も樹も、太陽光の下で写すものが一番鮮やかに撮ることができる。
瑞々しく鮮やかに咲く薔薇をファインダーいっぱいに捉える。機械越しに見ても、花は美しさを損なわない。
(薔薇は色々な時期に咲く、長く楽しめる花ですけど)
四季を問わず咲いてくれる子がいる。次々に新しい蕾をつけてくれる子がいる。二度咲きさえしてくれる子もいる。華やかな姿と香を長く楽しませてくれる。どんな花も綺麗で可愛いけれど、薔薇はやはり、花の女王ともいうべき存在だ。
その中でも、初夏の明るく眩しい光に満ちたこの時期に咲き始める薔薇は、
(自分の美しさをより主張しているように感じますですよ)
――わたしを、見て
精一杯に背を伸ばし、色付いた花びらを懸命に広げた薔薇の声を聞いた気がして、ほんの少し微笑む。
(……だいじょうぶ)
「私は、見ていますから」
小さく囁き、花にピントを合わせる。陽を浴びて輝くように咲く誇る薔薇の花を記録に残す。自分のことすら今は覚えていない心に、薔薇の美しさを刻み込む。
薄紫を帯びた白く上品な花びらのガブリエル、ラベンダー色が美しいブルームーン、その名の通り杏色が可愛いアプリコットキャンディ、これぞ薔薇ともいうべき形と真紅の色したローテローゼ。春から夏にかけての眩しい太陽の時期は、冬の眠りから覚めた草花たちが翠を濃くする時期。花たちが競うように元気いっぱいに咲き乱れる時期。
(素晴らしいです)
唇に浮かぶ笑みと共に次々にシャッターを切っていて、はたと気づいた。道を挟んだ別邸の庭には、空の色を写し取ったかのような青色した紫陽花が今を盛りと咲いている。日本原産の紫陽花を主役とする庭の奥には、西洋風の屋敷が立ち並ぶ通りには珍しい昔ながらの平屋日本家屋。
一重咲きに八重咲、土壌の酸性値によって色を変える花は、数千種類もの品種があるという。
花の時期が過ぎればほとんど根元近くまで切り詰めなくてはならない紫陽花は、だから葉が茂り花の咲く限られたこの時期だけのお楽しみ。
しとしとと雨の降る曇天の下、傘を手に眺める紫陽花も季節が感じられていいものではあるけれど、
(晴れている時でも!)
紫陽花の色は目に綾だ。
(イイものです)
自転車はもう道端にしばらく停めさせてもらおう。
カメラを手に道を渡る。薔薇の庭とはまた違った静謐な美しさの宿る風景を写真におさめさせてもらう。
山茶花の垣根越し、薄青色の八重咲ガクアジサイに焦点を絞る。薔薇と違ってどこか控えめな印象のある紫陽花も、この子はこの子でとても綺麗だ。
(君も、撮らせてくださいね)
そっと話しかけ、撮影する。デジカメのデータを確かめ、ちらり、首を捻る。
眩しく晴れた空を仰ぐ。今度は雨の日に撮影に来よう。眩しい光の中の紫陽花もいいけれど、紫陽花はやっぱり雨粒をまとってこそだろうか。
花の香の風を浴び、息をひとつ。
(今日もいいお花が見れました)
たくさんの写真を撮ったデジカメを胸に抱き、踵でぐるりと一回転して、思い出した。
(そうだ、ウチの庭の子達のお手入れもしなくちゃなのです)
梅雨の始まりのこの時期は、とにかく雑草が勢いを増す。春の頃に畑に種を撒いた野菜たちが埋もれてしまうのも、雑草に呼ばれたバッタや蝶々に庭を荒らされてしまうのも、庭の主としてはいただけない。
(この子達に負けていられないですよ!)
旺盛に咲き誇る薔薇を振り返る。淑やかに綻ぶ紫陽花を見遣る。そうして、忘れたときと同じように唐突に思い出す。忘れていた自分のことを、ぜんぶ。
「うん、ほら、……やっぱり」
花の庭に囲まれた道の途、花を愛する少女は笑う。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年04月26日
参加申し込みの期限
2018年05月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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