発車のベルが鳴っている。伸ばした視線の先、扉を開いた電車が待っている。
いけない、と足を踏み出して、――次の一歩を忘れた。
立ち止まる。
立ち尽くす視界の中、電車の扉が閉ざされた。
「あっ、」
思わず呟く。手を伸ばして、けれど足が動かない。だってどうして自分が電車に乗ろうとしていたのかを思い出せない。電車に乗ってどこに行こうとしていたのか。誰かに会いに行こうとしていたのか。その誰かがいるのなら、それは一体誰なのか。
そもそもここは何処なのか。
自分は何故ここにいるのか。
「……あれ?」
案外素っ頓狂な声が唇から零れて落ちた。落ちた言葉を拾おうとでもするかのように掌が口を押える。口を押えた手を見下ろす。
「あれ?」
これは自分の手なのか、と思う。身に着けた衣服と持ち物を見下ろす。青空の光が差し込む駅舎を見回す。
電車が動き出した。のんびりした音をたてて行ってしまう。
空っぽになったホームにひとり、ただ立ち尽くす。電車の起こした風がひゅるひゅると耳元で笑っている。
ホームを満たす初夏の空気は熱いほどなのに胸が冷たい。背中が冷たい。
眩暈のように、思う。
(わたし、は)
私は、誰だ?
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今日は、三歩歩いて全部忘れたシナリオの第二弾をお届けにあがりました。
そういうわけで、あなたはあなたのことを忘れてしまいました。
自分のことや自分に関わるひとやものを綺麗さっぱりぜんぶ。
神魂の影響です。が、神魂のことを覚えていてもいなくても、どちらでも構いません。忘れてしまった記憶をどう思い出すのかもお任せいたします。
影響を受けるのは最長でも24時間程度です。時間が過ぎましたら、何事もなくても忘れていたことを全部思い出せます。忘れていたときのことはしっかり覚えています。
考えた末にナニカ大切なことをふと思い出して、それを手がかりにぜんぶ思い出したりとかでも、誰かに会えたお陰で突然思い出したりとかでも。
ともかくも、ある日突然前触れもなく記憶喪失になっちゃった?! な、あなたのお話をお聞かせください。そうしてわたしにあなたを書かせてください。
……ご、ゴールドシナリオだったりしますが、ゴールドな分たっぷりがっつり! あなたを描かせていただきたいと思っております……!
※『大切な誰か』がシナリオに参加している場合はGAをお組みください。シナリオにその方がご参加いただけていない場合は、『大切な誰か』の名前をお出しすることはできませんのでご注意ください。
NPCの登場は可能ですが、あまりに不自然な登場の仕方や行動の指定はできません。
特定のマスターが担当しているNPCや場所の描写はできません。ご了承ください。
※GAでない場合、今回は場所や日時が被っていても別の参加者さまとの出会いはないものとお考え下さい。
※GAを組めるのであれば、「記憶を失ったAさん(記憶ナシ)」と「Aさんのことを知るBさん(記憶アリ)」といった参加の仕方もできます。もちろん、両方が記憶喪失でどうしよう、というのもアリです。
ご参加、お待ちしております。