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葉桜の木漏れ陽の下、瞬きを繰り返す。腰掛けたベンチを見下ろし、揃えた膝と膝を包む黒いスカートを見下ろす。臙脂色した襟のベストに、同色のリボン、これはもしかすると学校の制服だろうか。
そこまでぼんやりと思ったところで、気づいた。
(私は誰でしょうか……?)
頭上を覆う葉桜の梢を仰ぐ。革靴の足元に敷かれた煉瓦の地面を見下ろす。ぐるりを囲む背の高い建物は、これはもしかすると校舎なのだろうか。
(ここは……?)
視線を巡らせれば巡らせるほど、不安が募る。ここが何処なのか分からなかった。どうしてここにいるのか分からなかった。自分の名前も、どういう人間のかも、何一つとして思い出せなかった。
胸が詰まる。息すら忘れていたことを辛うじて思い出し、溜息を吐く。
耳の中、心臓の音ばかりがうるさく鳴り響いている。
(誰か、)
よろめくようにベンチから立ち上がる。視線を惑わせる。少し離れた渡り廊下を駆けて行く同じ制服を纏った女子に声を掛けようとして、
「私は、……」
自分が誰なのか分からない、という異常事態に押し潰された。掛けようとした声が喉の奥に貼りついて出て来なくなる。膝に力が入らず、尻餅をつくようにベンチにへたりこむ。
(私は、……誰……?)
自分の名前が思い出せない。どこに住んでいるのかも、どうやって暮らしているのかも、身近なひとの名前さえも。何もかも、思い出せない。
熱いくらいの木漏れ陽を受けているはずの背中が冷たい。緊張に強張る指先が冷たい。
知らず震える指先で同じほどに冷たい頬に触れる。肩口から垂れる長い三つ編みの黒髪に触れる。自分のかたちを確かめて、けれど自分のことが分からない。
何も思い出せない不安と恐怖に圧し掛かられ一歩も動けなくなってしまったその足元、ぽとり、葉桜の梢に残っていたらしい小さなさくらんぼの紅い実が落ちてきた。弾かれたように見上げる先、白い胸元に黒いネクタイのような縦線の入った小鳥の姿が見えた。
小さな実をついばもうとして失敗したのか、青みがかった灰褐色の小さな身体を不満げに震わせ、その小鳥は涼やかな鳴き声をあげる。
(四十雀……)
自分の名は思いだせないのに、小鳥の名はすらすらと心に浮かんだ。ひとの姿に物怖じせず、気まぐれに鳴き声を聞かせてくれる小鳥の姿を見ているときだけ、心に巣くった不安が和らいだ。
(可愛いですね)
氷を呑んだように冷たかった胸に、ふうわりと温かな熱が戻る。不思議な安心感が胸を満たしてくれる。
鮮やかな笑みにも似た声を残し、小鳥が翼を広げた。羽ばたき、隣の枝に移る。明るい鳴き声を放っては別の枝に、隣の樹の枝に飛び移る小鳥に誘われるように励まされるように、立ち上がる。
(そうですね)
歩いていれば、もしかしたら何かを思い出すかもしれない。
自分を知る誰かと出会うことが出来るかもしれない。
それに、心のどこかで知っている。
(私は、ここに何度も来たことがあるような……)
ここに来ることを心から楽しみにしていた感覚がある。
飛ぶ鳥を追って歩き始める。空を行く鳥を仰ぐままに煉瓦の道を辿っていて、
「……っと」
「きゃっ」
ぽふん、白衣の胸に顔をぶつけた。大きな掌に肩を支えられ、誰かとぶつかってしまったことに思い当たって少し焦る。
「ごめんなさい、よそ見を……」
丁寧に頭を下げて、
「ああ、いえ。大丈夫ですよ」
耳にふわりと馴染む優しい声に顔を上げる。聞き覚えがあるような、ないような。それでもその声には、とても胸が和んだ。それと同時、ひどく高鳴った。
見上げた視線の先には、白衣を纏った黒髪の男性が立っていた。長い前髪に隠れて目は見えないけれど、それでも優しい表情をしているのは感じられた。
「はじめまして」
再度、丁寧にお辞儀する。
「申し訳ありませんが、ここが何処か教えて頂けますか……?」
そっと問うて顔を上げて、驚いたように口を開いた男性の顔を目にした。途端、途轍もない申し訳なさが胸に生まれる。それから、彼にそんな顔をさせられたことに対する、心配してくれてることに対する、喜び。
自分の胸に去来する、思いもつかなかった感情に戸惑う。
(もしかして)
このひとと自分は、会ったことがあるのかもしれない。
言葉に困るように口をぱくぱくとさせる男性の顔を真直ぐに見つめたまま、思った言葉をそのまま口にする。
「私の事、知ってますか……?」
問うた途端、何故だか胸が高鳴った。
このひとに任せておけばもう大丈夫、そんな安心感と不思議な高揚感が胸を満たす。
「御巫さん」
ぽつり、溜息のように男性が呟いた。
葉桜のざわめきにも紛れてしまいそうな聞こえ辛い声をそれでもきちんと聴き分け、そのひとが教えてくれた名前を小鳥のように繰り返す。
「みか、なぎ」
「
御巫 時子
さん」
先程より少し大きな声で名を呼ぶなり、そのひとは手を伸ばしてきた。肩を掴まれ、真剣な表情で覗き込まれ、息が止まりそうになる。
「……あの……」
驚きとはまた違った音で心臓が鳴っている。
「……あ」
肩を掴んできた掌の強さとは反対に、そのひとは気まずそうに顔を伏せた。もごもごと口ごもり思案して後、とにかく、とそっと肩を放す。背中を丸め、暗い歩調で数歩進んで振り返る。
「座って、話をしましょう」
小さな声でぼそぼそと喋るせいで感情が分かりにくいけれど、
(心配をかけてしまって、いますよね……)
「申し訳ありません」
思わず口にする。そのひとは慌てたように首を横に振った。
たぶん倍近くは年上の男性のその仕種を、どこか可愛いと思ってしまう自分に戸惑う。このひとは、自分にとってどういう存在なのだろう。このひとにとって、自分はどういう存在なのだろう。
葉桜の木漏れ陽のベンチに肩を並べて座る。
何から話すべきかと迷っているのか、傍らの男性の口元が強張っている。
「私、」
「御巫さん」
何かお話しなくては、と口を開いた途端、言葉が空中でぶつかった。すみません、と詫びるそのひとに、首を横に振って見せる。お先にどうぞと促され、もう一度そっと唇を開く。
「私、どうしてだか何にも覚えていなくて」
「記憶喪失ですか」
言うなり、男性は掌をそろりと伸ばした。壊れ物に触れるように後頭部に触れられ、思わず小さな声が出る。すみません、と繰り返すそのひとに、また慌てて首を横に振る。
頭をぶつけたのかもと思って、と言い訳じみて言ってから、そのひとは続けた。
「怪我はしていないようで安心しました。……君は御巫時子さん、この高校の、……寝子島高校の二年生です。普通科の一組ですね。星ヶ丘寮の寮生さんです」
膝に肘をつき、背中を丸めてぼそぼそと喋るこのひとの声が好きだと思った。声を聞いていると、とても安心できる気がした。
それにしても、このひとは誰なのだろう。
「貴方は……?」
興味のままに問う。ちらりと寂しそうに笑んだそのひとは、
五十嵐 尚輝
、と名乗った。
「尚輝さん」
そのひとの名を口にして、どうしてだかとても照れた。ふわりと熱の昇る頬を抑えて盗み見れば、そのひとも同じように照れたような顔をしている。
どきどきと鳴る胸は、けれどとても心地よかった。
「私、尚輝さんのお話が聞きたいです。聞かせて頂けますか?」
「話、……とは言っても……」
口ごもりながらも、そのひとは話してくれた。
例えば寝子ヶ浜海岸を飛ぶうみねこのこと。例えば参道商店街で時折見かける白鷲のこと。
話のひとつひとつに頷く。何かひとつでも思い出せたらと心の内側を探りながら、
(尚輝さんが居てくれて良かった)
心底安心する。知らないところで独りでなくて、本当に良かった。
「海岸も、商店街も、見たことあるような気がしてきました」
「それは良かったです」
「まだ曖昧ではっきりしませんが、……でも」
靄がかかったような頭の中、このひとの声を頼りにいろんなことを思い出せそうな気がしている。
例えば、
「確か、この先に職員室があると思います……」
すらりと伸ばした指先に、思わずくすりと笑う。こっちです、と立ち上がり、尚輝の手を取って歩き始める。中庭から渡り廊下を経て校舎に入って、再確認する。私は、ここに来るのが大好きだった。毎日のように楽しみにしていた。だって学校に来れば――
「あっ、私、保健委員をしていました。そうですよね、尚輝さん?」
保健室の前を通るとそのことを思い出した。
「さっきの桜は、理科室からもよく見えるんです」
そのことも思い出した。甘酸っぱいような感情も胸に湧いたものの、その正体を思い出すには至らないまま、理科室の前に立つ。
「ここに、よく来ていたような……」
よく、というよりもほとんど毎日。誰かを訪ねて来ていた。手作りしたお弁当を持ってきたり、実験室にあるサイフォンを使ってコーヒーを淹れたりしていた。
指先に触れる尚輝の指の力が強くなる。
握った大きな手に勇気をもらい、理科室の扉を開く。
ふわり、コーヒーの甘い香りが身体を包んだ。
「尚輝、先生……」
ここに辿りつくまでずっと手を繋いでいてくれたひとを振り返った瞬間には、失っていた記憶は全て自分のうちに戻って来ていた。
目頭を熱くして頬を伝う涙が安堵であるのか、記憶が戻った嬉しさであるのか、それとも手を繋いでいてくれたひとの優しさと心遣いに対する感謝であるのか。
(きっと、たぶん……)
胸を満たす幸せな想いに、時子は微笑む。
「……良かった」
大切な生徒の一大事が解決したことを感じ取り、緊張していた肩から力を抜く先生の手を、時子は両手で包んで抱きしめる。
記憶が失せていたときの不安と寂しさを覚えている。
先生がくれた優しさと掌の温かさを覚えている。
それはとても稀有なことのように思えた。怖かったけれど優しくもある思い出をひとつ、得ることができた。きっとぜんぶ、先生のお陰だ。
「有り難うございます……」
だから、せめてもお礼を伝える。
もう少し一緒に居たいです、と付け加えると、先生は少し笑ったようだった。
「今日は僕がコーヒーを淹れましょう」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年04月26日
参加申し込みの期限
2018年05月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年05月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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