奇店綺譚｜リアクション

奇店綺譚

真央、葵、伸幸の３人は未だ目的地に辿り着けず、今はキャットロードをあても無くぶらぶらと歩いていた。
「んー、それっぽいお店も全然見つからないんだよー」
葵は立ち並ぶ店をファインダー越しに覗きながら退屈そうに言った。
「まあ仕方ないのだ。そんなに簡単に見つかっちゃむしろ御利益無さそうで嫌なのだ」
ぼやく葵をたしなめるよう口調で言う真央だが、やはり彼女も多少退屈なのだろう。
歩きながら携帯でねこったーを覗いている。
「後木さん、なにか情報見つかった？」
「んーん、特に新しいハナシは無いのだ……あ、天野ちゃんがつぶやいてるのだ」
「あっ、忘れてた」
勉強会の買い出しの途中で『喫茶店』を探し始めた事を思い出し、伸幸は焦る。
「ぬー、あまくんきっと怒ってるよぅ」
その様子を想像したのか、伸幸は青ざめて頭を抱えた。
「それで逆巻くんはなんてつぶやいてるんだい、後木くん」
葵は困り顔の伸幸を横目に、真央にそう尋ねた。
「えっと、これはまずいのだ。桐島先生と吉田先生がこの辺りを見回りしてるらしいのだ！」
伸幸に続いて真央も慌てておろおろし始める。
「葵ちゃん、どうしよう、先生に捕まったらきっとおしおきなのだ！」
「そうだね、あー、うん。私はそろそろ帰ろうかなー？」
「どうしたのだ葵ちゃん。いつものもはや粘着取材と言った方が良いくらいの密着取材を忘れたのだ？　そんなんじゃ新聞部魂が泣いちゃうのだ！」
普段に比べあまりにも潔い葵の引き際に、真央は不思議そうな顔をしている。
「いやぁ、月の入るを惜しみ花の散るをめでたきとするってやつなんだよー。２人も早目に帰った方が良いと思うんだよー」
あはは、とひきつった笑いを零し、葵はじりじりと後ずさる。
「うーん、そっかー用事なら仕方ないのだ。ここまで付き合ってくれてありがとうなのだ。真央ちゃんはもう少し探してみることにするのだ。伸幸ちゃんはどうするのだ？」
「あまくんもこの辺りにいるみたいだし、僕はあまくんと合流してから帰るよ」
もはや怒られることについては覚悟を決め、伸幸は天野を探すことにしたようだ。
「分かったのだ。ところで」
真央は伸幸に向って頷くと、葵へと目を向けた。

「葵ちゃんはさっきから何を見ているのだ？」

真央がそう訊いた時、彼女と伸幸の肩に大きな手がぽん、と置かれた。