奇店綺譚｜リアクション

奇店綺譚

＜１日目＞

「ったくすばるの癖に私達を待たせるなんて……」
シーサイドタウンに建つとあるホテルのロビー。
ブリジット・アーチャーは苛立たしげに腕組みをし、爪先を上下させている。
すると、彼女の傍らに立っている橘舞がたしなめるように口を開いた。
「まだほんの五分程度じゃない。新井さんにだって用意があるもの、仕方ないわ」
「女の子じゃあるまいし、どうして着替えにそんな時間かかるのよ」
そう言ってブリジットは唇を尖らせる。
その様子を見た舞は、少しからかうように微笑みながら言った。
「ブリジットは随分新井さんの事が待ち遠しいのね。妬けちゃうわ」
「なっ！？」
余程想定外な台詞だったのか、ブリジットはあからさまな動揺を見せる。
「あらブリジットったら、赤くなっちゃって」
「舞が急に変なこと言うからでしょ！　大体なんで私がすばるなんかを――」
「僕が何だって？」
ブリジットが自慢の金髪を振り乱して反論している所へ、当の新井すばるが現れた。
まるで見計らったかのようなタイミングだ。
「ひぇっ」
彼の唐突な登場にブリジットはまたも意表を突かれ、びくりと肩をすくませた。
「どうかした、ブリジットさん。顔赤いけど、具合でも悪い？」
「なんでもないわよっ！　それより遅刻よ遅刻」
「あ、ああごめん、待たせちゃったみたいで……舞さんも」
すばるはすまなそうに頭を下げる。
舞はそれに優しく微笑んで答えた。
「いえ、私達も今来たばかりですから」
「でも遅刻は遅刻よ」
「うん、待たせてごめんねブリジットさん」
すばるの言葉に、ブリジットはふん、とそっぽを向いてしまった。
「いいから早く行くわよ」
「そうですね。３人揃ったことですし」
「じゃあ早速行こうか、『幸せになれる喫茶店』を見つけに」

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